ガーランド公爵とロビン・グリセンコフ侯爵令息を見つけたアマージス男爵は言った。

「どういう事ですか！急に契約を破棄するなんて。今回の契約はそんなに簡単に捨てられるものではないですぞ！」

ガーランド公爵は妻に問い詰められ青ざめた表情で使い物になりそうにない。

ガーランド公爵をちらりと見たロビンは、アマージス男爵へ言った。

「国通しの契約に変更はありません。ただ、取引相手をアマージス男爵家からグロッサー子爵家に変更するだけです。今回の契約は膨大な金額になります。信頼できる相手でないと取引継続は難しい。」

アマージス男爵は肩を震わせながら言う。

「私の事が信頼できないと言うのですか？」

ロビンは言った。

「正確に言うと、そのクリスティーナを養子として迎え入れた貴方の事を私はどうしても信頼できない。」

ロビンはクリスティーナを濁った瞳で睨みつけていた。

アマージス男爵は、クリスティーナを見て言う。

「どういう事だ。話が違うじゃないか！ロビン・グリセンコフ侯爵令息は君に惚れ込んでいるから契約が有利になると言っていたはずだ！」

長い黒髪を結い上げ、妖艶な唇でクリスティーナは甘い声を出してロビンへ言った。

「ロビン。どうしてそんな事を言うの？貴方と私の大事な思い出を私はずっと捨てていないって伝えたでしょ。今も持っているのよ。」

クリスティーナは笑いながらロビンに近づいてきた。

アニータは、ロビンがまたクリスティーナの所へ行くかもしれないと不安になった。

さっきまでの幸せな気持ちが嘘のように、今はクリスティーナが憎くて仕方がない。

だけど、ロビンは私だけを愛していると言ってくれた。

そう、私だけを。

アニータは、立ち上がり、ロビンの腕に、自身の腕を絡めた。

アニータはクリスティーナに向かって言う。

「近づかないで。この人は私の夫よ。」

クリスティーナは、眉間に皺を寄せて、美貌を歪め鬼のような形相でアニータに向かって叫んできた。

「ロビンは、私の物よ。邪魔をしないで！」

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい