第6話

................


「.......ちゃん.........郡......郡ちゃん!!」


「は!?夢か!」



アイちゃんに起こされて私は目を覚ました。にしてもずいぶん風変わりな夢を見た気がする。

内容はよく覚えていないけども、何故か胸騒ぎを感じるのであった。

ちなみに今は休暇中であり、今日は特に予定がないため家でダラダラしていたのだが、いつの間にか眠ってしまっていたようである。ちなみに、隣にはアイちゃんがほっぺたを膨らませてもいるがただ可愛いだけである。

とりあえず私は彼女に謝ると、彼女は機嫌を取り戻したようで笑顔になった。

やはりこの子は天使だと思う。

そんな感じで和んでいると、不意にある疑問が生まれる。

「どうしてここがわかったの?ここに住んでいるなんてほとんど言ってないのに....」

「俺が教えたんだよ」

「!フィーレア特等!!」


いきなり声をかけられたので驚く。見ると、そこには金髪碧眼の男性がおり、どうやら彼がアイちゃんに教えたらしいフ。余計なことをしやがって....

確か年齢は40代前半だったはずだけど、見た目はかなり若く見える。それにしても一体どこから来たんだろう。まさか転移でもしたのか?。

すると、彼は苦笑いしながら答えてくれた。どうやら転移魔法を使ったようだ。なんでも、用事があってここ群馬まで来たらしいが、せっかくなので久しぶりに私の故郷を見ていこうと思い立ち寄ってみたらしい。

まぁ確かにここは田舎だしね。でもこの辺、特にこれといった名所もないから、観光するなら草津の方が楽しめるかも。温泉街だし

そんなことを考えていると、ふと気になったことを聞いてみることにする。

「あの……なんでわざわざここに?任務なんでしょ?」

すると、彼は少し困った表情を浮かべる。そう言われたら断れないじゃん

「あーうん、そうなんだけどさ……ちょっと君に会いたくなってね。迷惑だったかな?」

私は慌てて首を振る。

「そっか。よかったよ。それで、早速本題に入るんだけれども、実は君に頼みたいことがあるんだ。聞いてもらえるかい?」

私は迷わず即答する。すると、彼は驚いたような顔になる。

「え、本当にいいのかい?もっと悩むかと思ったんだけど……

いやまぁ助かるから良いんだけどさ。

それじゃあ、詳しいことは後ほど連絡を入れるからよろしく頼む。

ああ、それと、もし良かったら家に泊まっていかないかい? 実は一人だと寂しくてねぇ。

どうかな、お願いできないか?」

私は別に断る理由もなかったので了承することにした。「わかりました。お世話になります、そういえば、アイちゃんは階級が決まったんですか?」

「ありがとう。そういえば階級のことを言ってなかったね。アイちゃんの階級は二等だよ。」

「もう二等になったんですか!?優秀ですね!」

私は素直に感心してしまった。

アイちゃんは照れくさかったらしく、顔を赤くしている。

可愛すぎか!! 私は内心悶絶しながらも、なんとか平静を保つことに成功した。

その後、彼と別れてからアイちゃんと一緒に東京にある家へと帰ることにした。ちなみに彼の家はここから歩いて5分ほどの場所にあり、私達よりも先に着いていたらしい。

そして、二人で仲良く手を繋ぎながら歩いていると、ふとあることを思い出す。

そうだ!すっかり忘れていたけれど、今日はお母さんの命日だ。毎年この日は必ず墓参りに行くことにしていたのだ。そのことを伝えると、アイちゃんはとても悲しそうな顔をして、一緒に行くと言ってくれた。

その優しさに感謝しつつ、私たちは墓地へと向かうことにした。

************** 墓地に着くと既に何人か来ており、花を手向けたり線香をあげたりしていた。私たちもその列に並ぶと、しばらくして順番が来たため、母の墓の前に行き、花とお供え物を置く。

それから、二人揃って目を閉じ、黙祷をする。

そして、目を開けると、ある異変に気付いた。

それは、奥の墓石のそばに誰かがいるということだった。最初は見間違いかとも思ったが、よく見ると人影のようなものが見える。

そして、次の瞬間、私は思わずげっと叫んでしまった。

何故ならば、そこにいたのは……

絶縁したはずのお父さんだったのだから……

私は目の前の光景に驚いてしまい、しばらくの間固まってしまった。

だが、すぐに正気を取り戻すと、私は大声で叫ぶ。

何でこんなところにいるの!というか、どうやって入ったのよ!!! しかし、いくら叫んだところで父はこちらの声が聞こえていないのか全く反応を示さない。

そんな父の姿を見たアイちゃんは、怖くなったようで私の腕にしがみついてきた。

一方、父の方は相変わらず無言のままである。

そんな状況に困惑しつつも、私はとりあえずこの場を離れようと思い、アイちゃんの手を引いて歩き出す。

すると、なぜか父は追いかけてくることはなく、そのままどこかへ行ってしまったようだ。

私はホッとすると、アイちゃんを連れて急いで自宅に戻るのであった。

自宅に帰ってきた私は、アイちゃんに事情を説明する。

すると、彼女は驚きつつも納得してくれたようで、それ以上は何も言わずにただ静かに話を聞いていた。

そして、話が終わると、今度はアイちゃんが何かを決意したような表情を浮かべると口を開く。

どうやらこれから父と話し合いたいらしい。

私は心配だったが、彼女の意思を尊重してあげることにした。

すると、アイちゃんは笑顔でお礼を言う。

私はそんな彼女に微笑み返すと、彼女を送り出すために玄関まで向かう。

そして、ドアノブに手をかけたアイちゃんに向かって声をかける。

頑張ってきてね!応援しているから……

すると、アイちゃんは嬉しそうに笑うと、元気良く返事をして出ていった。

そんな彼女を見送った後、私はリビングに戻るとソファに座り込む。

すると、急に眠気が襲ってきたため、私はそれに抗抗うことなく眠りにつく。

目が覚めると、外は既に暗くなっていた。

どうやらかなり寝てしまっていたようだ。

私は慌てて立ち上がると、夕食の準備を始める。

メニューはもちろんカレーライスだ。

私が料理をしていると、ちょうどいいタイミングでアイちゃんが帰ってくる。

私は出迎えるために扉の方へ向かうと、そこで固まる。なぜならそこには、なんと父が立っていたからだ。

一体いつの間に……

いやまぁいいけどさ……

というか、それよりも気になることがあった。

何故か知らないけれど、アイちゃんの顔色がとても悪いのだ。

まさか……

嫌な予感を覚えた私は、恐る恐る尋ねる。

ねぇ、大丈夫?なんか顔色が悪いみたいだけど? すると、アイちゃんは力なく答える。

「あの人怖いですぅ....」私はその言葉を聞いて呆然としてしまう。

アイちゃんがここまで怯えているなんて珍しいこともあるものだ。

私は不思議に思いながらも、アイちゃんを慰めることに集中するのであった。

翌日、私たちは早速任務に向かうことにした。

今回はアイちゃんも一緒なので、二人で仲良く手を繋いで目的地へと向かう。

ちなみに今回の場所は長野にある廃村であり、私達が住んでいる場所からは車で4時間ほどかかる場所にある。そのため、現地に到着するまでに時間がかかるだろう。

まぁ、それでも私にとっては慣れた道だし、アイちゃんもいるので特に問題はない。

道中は特に何も起こらず、無事に目的の廃村にたどり着くことができた。

そして、私達は車を降りると、村の中へと入っていく。

しばらく歩いていると、ふとアイちゃんが立ち止まる。

どうかした? 私は立ち止まったアイちゃんに声をかけるが、反応がない。

不審に思った私は彼女の視線を追うと、その理由を理解する。

その先には一人の男性が佇んでいたのだ。

おそらく彼が例の男性なのであろう。

私は警戒しつつ男性に近づくと、彼は私達に気づくと話しかけてきた。

「お前たちが俺を殺しに来た奴等だろ?」突然の質問に戸惑いつつも、私は素直に答えることにした。

えぇ、そうよ。あなたを殺すように依頼されたわ。

それを聞いた男性はニヤリと笑ったかと思うと、次の瞬間には襲いかかってきていた。

そして、そのまま殴りかかってくる。

私は咄嵯に反応して避けると、反撃のために拳を突き出す。

しかし、それは簡単に受け止められてしまう。そして、逆に投げ飛ばされてしまった。地面に倒れた私はすぐに起き上がると、再び攻撃を仕掛けようとする。だが、その時にはすでに目の前に迫ってきており、蹴りを食らってしまう。

私は吹き飛びそうになるのをなんとか堪えると、体勢を立て直すために一旦距離を取る。それから、今度はこちらから仕掛けようと駆け出した時だった。アイちゃんが男性の方に近づき始めた

「アイちゃん...危険です...」

しかし、私の忠告を無視してどんどん近づいていく。

すると、男はアイちゃんの存在に気づいたようで、彼女に手を伸ばす。

「郡ちゃん....魔道具、お借りします。」そういって私の魔道具を手に取り、起動する。

「これなら戦える!」【アラタ改Sレート】【シェケナーSSレート】

アイちゃんが二つの魔道具起動すると、男の体がみるみると巨大化していく。

そして、その姿は完全に巨人になっていた。

アイちゃんはそれを見上げると、不敵な笑いを浮かべる。

そして、そのまま男に向かって走り出す。

一方、男は向かってきたアイちゃんに対して腕を振り下ろす。

それを彼女はジャンプしてかわすと、空中で回転しながら勢いをつけて踵落としをする。見事に決まったその攻撃によって巨人の頭は粉々になる。

そして、着地と同時に今度は回し蹴りを放つと、それが直撃し、さらに足が胴体にめり込んでいき、ついにはバラバラに砕け散ってしまった。

アイちゃんは勝利のポーズを決めると、こちらに戻ってくる。

そして、笑顔でブイサインをすると、私に抱きついてくる。

「私、勝ちました!」

私はそんな彼女の頭を撫でながら、改めてアイちゃんの強さに感心していた。

……ん?あれっ!?ちょっと待って!今アイちゃん、自分のことアイじゃなくて私っていったよね!? どういう心境の変化なのかわからないけど、とにかく嬉しい変化だ。

私は嬉しくなって思わず抱きしめ返すと、アイちゃんは少し恥ずかしそうな表情を浮かべていた。

その後、私達は廃村での調査を終え、帰還した。

ちなみに、調査といっても特に何かを見つけたわけではない。

ただ単に村の中を見て回っただけだ。

何故こんなことをしているのかと言うと、実はこの村は少し前まで人が住んでおり、しかもかなり大きな街だったというのだ。

どうやら最近になって急に人がいなくなり、廃墟になったらしい。

つまり、ここに住んでいた人達は何らかの理由で引っ越したということになるのだが、一体何があったのだろうか? 私は気になりつつも、これ以上は調べても仕方ないと思い、考えるのをやめることにした。

それよりも今はアイちゃんのことだ。

私は先程の戦闘を振り返っていた。

アイちゃんの実力はかなりのものだった。アラタとシェケナーを使ったとはいえ、なかなかの強さのあの男を数発で仕留めたのはすごかったな。一等に推薦しとくか

まぁでも、とりあえず今日はよく頑張ったね。偉いぞ〜よしよーし。

私が褒めると、アイちゃんはとても喜んでくれた。

こうして、アイちゃんの初任務は終了したのであった。

ちなみに、今回の報酬は結構なもので、かなりの大金を手に入れることができた。

なので、これからも定期的に依頼をこなしていけば、お金には困らないだろう。私は今後のことを考えつつ、上機嫌のまま帰路につくのだった。

ある日、私達はいつものように依頼を受けて、とある山に来ていた。

今回受けたのは、行方不明者の捜索である。

なんでも、一昨日から行方不明になっている人がいるらしく、警察の方では事件に巻き込まれた可能性があるとして捜査をしているようだ。

しかし、未だに手がかりは掴めておらず、そこで私達に白羽の矢が立ったというわけだ。

まぁ、その気持ちはわかる。

正直言って、私はこういうのはあまり得意ではない。

だからといって、断ることもできない。擦りながらも部屋を出て行くと、リビングへと向かう。だが、そこにも姿はなかったのだ。……トイレにでも行ってるのかと思ったんだがな。仕方ない、待つとするか。

ソファーに腰掛けると、テーブルに置いてあった新聞を手に取る。そして、適当にページを開いて読んでいたのだが、ある記事が目に止まったのである。……昨夜未明

なぜなら、私は準特魔法少女だし、準だけどいちよう国を代表するような存在なのだから。

私はため息をつきながらも、依頼主のもとへと向かうことにした。

依頼主に事情を説明すると、彼は快く受け入れてくれた。

それから私達はすぐに行動を開始する。

まずは聞き込みからだ。

私はアイちゃんと一緒に町中を歩いていた人に話を聞いてみることにしてみた。

すると、一人の女性が声をかけてきた。

彼女は私達がこの町に来た時からずっと話しかけてきていたが、無視をしていたらついに痺れを切らしたのであろう。

私は仕方なく質問をしてみることにする。

「ねぇ、あなたはこの辺に住んでる方ですか?」 すると、女性は笑顔で答えてくれる。

「はい、そうですよ。」

「よかった……それなら話が早いです。」

早速ですが、最近ここで何か変わったことはありませんでしたか?例えば……そうですね……人が突然消えたとか……

私の問いに一瞬キョトンとした女性だったが、すぐに思い出してくれたようで教えてくれようとする。

「えぇ、ありますよ。」

確か、つい最近のことですけど、若い夫婦がいなくなったんですよ。

その人達は二日前に子供を連れて買い物に行ってから帰ってこなかったんです。

それで、町のみんなで探してたら、ある民家で血だらけで倒れている二人を発見したってことがあったそうで。

その話を聞いた時は驚きました。だって、その家の住人はもう何年も前から誰も住んでいなかったはずなんです。なのに、どうしてそんなところに行ったのか不思議でなりません。

確かにそうだ。

仮にその二人が何らかの事故に巻き込まれてしまったとしても、なぜわざわざその場所に向かったのだろうか? 私は疑問に思いつつも、さらに話を聞こうとする。

ところで、お子さんはどちらに行かれたかご存知ありませんか? すると、女性は少し考えた後、口を開く。

えっと、確か……あっ!そういえば、その一家が引っ越す前に住んでいた家の方に遊びに行くって言っていた気がします。

引っ越してから一度も行ってないって聞いたので、多分そこに行ったんだと思います。

なるほど。

ありがとうございました。

私は礼を言うと、その場を後にする。

そして、アイちゃんと共に彼女の元に戻ると、私はそのことを報告することにした。

アイちゃんは少し不安そうな表情を浮かべていた。

大丈夫だよ。きっと見つかるさ。……うん。

こうして、私達は目的地へと向かって歩き出した。

しばらく歩くと、目的の場所が見えてくる。

そこは古びた一軒家で、長い間放置されていたのか、壁や屋根にはツタが絡まっていたり、窓は割れていたりとかなりボロい見た目になっていた。

本当にこんなところに人がいるのだろうか? 私はそんなことを考えながら、インターホンを押した。

ピンポーン 音が鳴り響くと、しばらくして扉が開かれた。

そこには初老の男性が立っており、こちらを見つめると驚いたように目を大きく見開いていた。

「なっ!お前達は何者だ!?」

男性は警戒している様子で私達に問いかけた。

どうしようか……

私が悩んでいると、アイちゃんが一歩進み出て男性に声をかけた。

あの……実は私達は魔法少女なのです。

あなたはここに住んでいる方でしょうか? アイちゃんの言葉を聞いた瞬間、男性の目が輝いたように見えた。「おおぉ!!やはり君達だったか。」

「噂は聞いているよ。まさか、この村に来てくれるとは思わなかった。」

「歓迎するぞ。」

彼は嬉しそうにしている。

なんだかよくわからないが、とりあえず入れてもらえることになったようだ。

私達は言われるままに彼の家に上がることにした。中に入ると、外観からは想像できないくらい綺麗な内装だった。

掃除も行き届いているようで埃一つ落ちていない。

私達がキョロキョロしながら辺りを見ていると、彼が声をかけてきた。

まぁ立ち話もあれだから座ってくれ。

私は彼に促されて椅子に腰掛ける。

すると、彼もまた向かいの席に座ってきた。

まずは自己紹介から始めようか。俺はこの村の村長をしているものだ。

よろしく頼む。

私とアイちゃんは彼の言葉に対して会釈をする。

では早速だが本題に入ろう。

行方不明になった家族についてだね。

あぁ、そうだ。

私達はここに来る前に警察にも話を聞いてみたのだが、結局何もわからなかった。

そこで、あなたなら何か知っているのではないかと思い、ここまで来たのだ。すると、彼は残念そうに首を横に振った。

悪いが力になれそうにはない。

俺の知る限り、ここには人は住んでいないはずだからな。

私達が驚いていると、それに気づいたのか説明をしてくれた。

ここはもう何十年も前から空き家になっているんだよ。

だから、もし何かあったとしてもわかるはずがないんだ。

しかし、それならばどうして……

私の問いに彼は答えてくれた。それは……今から一年ほど前のことだ。

ある日、突然若い夫婦が訪ねてきた。なんでも、子供が病気になってしまったらしく、薬が欲しいということだった。

夫婦は子供のために必死にお金を貯めて、ようやく買えるだけの金額に達したので、買いに来たのだということだった。

その話を聞いた時はとても感動したよ。

でも、その時はちょうど在庫がなく、次の入荷まで待ってもらわなければならなかった。

もちろん、そのことは伝えていたし、彼らは納得してくれていたので、それから数日してまた来てもらうことになったんだけど……

そこまで話すと、彼は少しだけ悲しげな表情を浮かべた。その数日後に事件が起こったんだ。

その日は朝早くから雨が降っていて、いつもより早く店を閉めようと準備をしていた時のことだよ。

突然、店の前に大きなトラックが止まって、そこから三人の男が出てきた。

そして、いきなり銃のようなものを取り出したかと思うと、店の中に向かって発砲し始めた。

私は慌てて奥の部屋に隠れたが、男達の狙いはそこの店主の夫婦のようだったので、しばらく様子を見ることにしたんだ。…………どれくらい時間が経っただろうか。

気がつくと、外は静かになっていた。私は恐る恐る外に出てみると、そこには誰もいなかった。

ただ、地面に血の跡が残っているのを見て、私はすぐに理解してしまった。

あの人達は強盗なんかじゃない。

きっと、どこかの組織がこの町を潰そうとしていて、たまたま通りかかった彼らに目をつけたんだと。

そして、その組織にとって都合の悪いことを知ってしまったために消されてしまったに違いない。

私は急いで警察に通報すると、彼らの身を案じた。

しばらくして、パトカーが何台も到着し、犯人達は逮捕されたが、すでに手遅れだった。

その後、私は彼らが住んでいたという場所に行ってみたが、そこには何もなかった。おそらく、証拠隠滅のためだろう。

そして、それ以来、この場所には人が寄り付かなくなってしまった。

私は彼の話を黙って聞いていた。

なるほど。それで、あなたはその組織のことを詳しく知っていたのですね。……え?いや、知らないけど……。

私の言葉を聞いた瞬間、彼は驚いたような顔をしていた。

私達は彼に礼を言うと、その場を離れようとした。

「おっと、ちょっと待ちなさい。」

彼が呼び止めてきたため、私達は足を止める。

「実は君達に頼みたいことがあるんだ。……私達に? あぁ、実は最近、この辺りで妙な連中が出没しているらしい。」

そいつらは、自分達は正義の味方だとか名乗っているみたいだけど、どう考えても怪しいから、なんとか捕まえて欲しいと思っているんだ。……わかった。引き受けましょう。

私達は彼の依頼を引き受けることにした。

ありがとう!助かるよ。

彼は嬉しそうにしている。

では早速、明日から調査を始めてくれ。

私達は彼の家を後にすると、そのまま家へと戻った。

翌日、私達は昨日の話にあった謎の集団を探すことにしたのだが、なかなか見つからなかった。

しかし、町中を歩き回っていると、ある場所で聞き込みをしている人物を発見した。

その人物は私達を見つけると、こちらに近づいてきた。

こんにちは。あなた達が噂の魔法少女さんですかな? 私達は首を傾げる。すると、その男性は説明してくれた。

私はこの村の村長をしております。

お見知りおきを。……あぁ、申し訳ありません。

自己紹介がまだでしたね。

私の名前は「マオ」といいまして、実は皆さんにお願いがあって来たのです。……私にできることなら協力しますが、いったい何でしょうか。

私の言葉に彼は笑顔になる。

それは良かった。では早速ですが、あなた方に頼んでいた件についてなのですが、何か進展がありましたかな?……いえ、特に何もないですよ。

私がそう答えると、彼は残念そうな顔になった。

そうですか。やはりそう簡単には見つからないものですな。……ところで、今日は何をしにここへ来たんですかね。

私達が目的を話すと、彼は納得してくれたようだ。

そういうことでしたら、ぜひ私の家に来て下さい。歓迎いたしますぞ。

彼はそう言うと、自分の家に案内してくれる。

しかし、そこには何もなかった。……あれ、おかしいな。確かにここにあったはずなのに。

彼は不思議に思いながら家の周りを調べていると、何かを見つけたようで、それを拾い上げる。

これは……鍵だ。どこの鍵なんだろうか。

私達は彼を手伝い、一緒に調べてみる。

すると、家の裏から地下室のようなものが見つかった。

彼は懐中電灯で照らしてみると、そこには人影があった。

驚いていると、その人物が声をかけてきた。

おい、そこで何をしてるんだ?……よく見ると、それは少年だった。

私達は事情を説明すると、彼は納得してくれていた。

なんだよ、それじゃあ俺が勝手に勘違いをしてただけなのかよ。……まあいいや。それで、お前らは何しに来たんだ? 私達は彼に例の事件について話を聞くと、彼は困った表情を浮かべていた。

そんなこと言われてもなぁ……。

俺はただここで暮らしてるだけだしさぁ。

私達は彼の言葉を聞いて、少し違和感を覚えた。

ここに暮らしているってことは、この町に住んでいるということだよな?それに、さっきまで私達の目の前にいたじゃないか。

私達はそのことを話すと、彼は驚いた様子を見せた。……えっ!?嘘だろ。全然気付かなかったんだけど。

私は彼に近づくと、質問する。

君はどうしてこの町にいるんだ? すると、彼は悲しげな顔をしていた。

実は、この町には昔から住んでいるんだが、ある日を境に突然、誰も来なくなってしまったんだ。

だから、仕方なくこの家で生活を続けているというわけなんだが……ん、どうしたんだ?…………どうもしないよ。

私は慌てて誤魔化すと、次の目的地へと向かうことにした。

私達は次に、先程の男性の家に向かう。

しかし、そこにはもう彼の姿はなかった。おそらく、どこかに出かけたのだろう。

私達は諦めると、別の場所へと向かった。……なるほど、話はわかりました。

私達は彼にこれまでの経緯を話した。

すると、彼は真剣に考え込んでいるようだったが、しばらくして口を開いた。つまりあなた方は、あの男を捕まえて欲しいということですよね?……えぇ、そうですけど……。

私達が肯定すると、彼はしばらく黙り込んでしまった。そして、何かを決心したのか、こちらを見つめてきた。……いいでしょう。その依頼、引き受けましょう。

私達は驚くと、理由を聞いた。実は私には、どうしてもあいつを止めなければならないという使命があるのです。……どういうことか教えてもらえませんか。

私達は彼に説明を求めると、彼は語り始めた。

私は元々、この村の生まれではなく、別の町に住んでいましたが、ある時から謎の組織に追われるようになりました。

最初は組織が何者なのかわからなかったのですが、どうも彼らは私に用事があるらしく、執拗に追いかけてきます。

そのため、逃げるのにも限界を感じていましたので、いっその事、奴らのアジトに乗り込もうと考えていたのです。

しかし、なかなかチャンスが訪れず、途方に暮れていたのですが……まさかこんな形で機会が訪れるとは思っていませんでした。

彼はそう言うと、笑みを浮かべる。……では早速、作戦を立てましょう。

私達はすぐに準備に取り掛かると、決行日を決めた。

数日後の夜、私達は行動を開始した。まずは私が囮となり、敵を引きつける。

その間に他のメンバーは村の外れにある小屋へと向かい、待機しているマオさんと合流する前に殲滅する手筈になっている。

私は敵の注意を引くため、わざと目立つように移動する。

すると、予想通り、私を追いかけてくる集団が現れた。

その数は五人程だが、全員が武器を所持しており、油断はできない状況だ。……よし、今だ! 私が合図を出すと、皆は一斉に動き出す。

私も彼らに続いて走り出した。こうして、私達による救出劇が始まったのだ。……はぁはぁ、ここまでくれば大丈夫かな。

私達は無事に目的の場所に到着すると、息を整えていた。

そこにはすでにマオさんの姿が確認できたのだが、様子がおかしいことに気づく。

あれ、何で彼がここにいるのだろうか。

私が疑問に思っていると、隣にいた女性が話しかけてきた。お久しぶりです。……あなた方が来ることは知っていましたので、事前に連絡しておきました。

彼はそう言うと、微笑んでいた。……そうだったんですね。

私達は納得すると、早速、本題に入ることにした。……それで、例の男というのはどこにいるんだ? すると、彼は辺りを見渡して、ある一点を指差した。あそこにいるのがそうですよ。

その方向を見ると、確かに男が立っていた。

私達は顔を合わせると、静かにうなずく。

それじゃあ行こう。

私達が近づこうとすると、彼は慌てた様子で止めてきた。……待って下さい。どうしてあなた方が、あいつと戦う必要があるのですか? 私達は彼の言葉を聞いて、戸惑ってしまう。……それは、私達が依頼を受けているからだよ。

彼は私の答えを聞くと、納得してくれたようだ。……そういうことでしたら、仕方ありませんね。でも、危なくなったら逃げてくださいよ。

彼は心配そうな表情を浮かべながら忠告してくれると、私達は感謝の言葉を伝えた。

ありがとうございます。

それじゃあ行くぞ。

私達は改めて気合いを入れると、男に向かって歩き始める。……ん?誰か来たみたいだな。

男は私達に気づくと、ゆっくりと近づいてきた。

さっきからこそこそと嗅ぎ回ってるようだけど、あんたら誰だい? 私達の姿を見て、警戒心を強めているようだった。

私は答える代わりに質問する。……お前がこの村で起こっている事件の犯人なのか?すると、男の態度が変わった。……へぇ、どうして俺がやったってわかったんだ?どうやら図星のようで、驚いた様子を見せている。

私はそんな彼に構わず話を続ける。……ここ最近、行方不明になる人が後を絶たないからな。それに、私達は警察じゃない。だから、事件が起こった後にしか動けなかったんだよ。……なるほどねぇ。まあいいか。それより、わざわざ殺されに来たのか。

彼はそう言うと、不敵に笑っていた。……おい、どういう意味なんだ? 私達は彼の言葉の意味がわからずに聞き返すと、彼は笑い声を上げ始めた。

「そのままの意味ですけど?……だって、あなた方はここで死ぬんですよ。」

彼はそう言い放つと同時に、私達に飛びかかってくる。私達は慌てて避けると、戦闘態勢に入った。……どうしたんですか、早く攻撃してきたらいいんじゃないですか。

彼は余裕があるのか、挑発してくる。……言われなくてもやってやる。

私は剣を構え直すと、彼に斬りかかった。しかし、彼はそれを難なくかわすと、反撃を仕掛けてくる。

私は何とか防ぐと、後ろに下がった。……ほぉ、今のを防ぐとはやりますね。どうやら、少しは楽しめそうだ。

彼は嬉しそうにしていると、再び攻撃を仕掛けてきた。……くっ、速い! 私達は連携を取りつつ戦うも、なかなか決定打を与えられず苦戦していた。

彼はその隙をついて、次々と攻撃を繰り出していく。……これで終わりです。

そして、最後に強烈なそろそろいいか。もう飽きてきたんで、終わらせてもらいましょうかね。

彼はそう呟いた直後、こちらに向かって走り出した。……速すぎる! 私達は必死になって避けようとするが、間に合わない。

まずい、このままだと……。私は死を覚悟すると、目を閉じた。…………あれ? 私は不思議に思い目を開けると、信じられないものを目撃してしまう。なんと、彼が私の代わりに攻撃を受けてくれていたのだ。……どうして! 私が驚きの声を上げると、彼は口元の血を拭いながら答えてくれた。……どうしてって、仲間を助けるのは当たり前でしょうが。

彼はそれだけ言うと、倒れてしまった。……くっ、よくも彼を!! 私は怒りに任せて攻撃しようとするも、彼の言葉を思い出し踏み止まる。……くぅ、うおおお!!! その代わりに渾身の力を込めて、全力の突きを放った。……甘いわ。

彼は私の攻撃を避けると、カウンターを放ってきた。……しまった!私は咄嵯に防御するも、勢いを殺しきれずに再び吹き飛ばされる。今度は受け身を取ることができず、背中を強く打ちつけてしまい意識を失ってしまう。

……「大丈夫か!?しっかりしろ!」

彼はそう言うと、私の体を起こす。……すまない

「は!」私は突然の大声で目が覚めると、目の前には見覚えのある顔があった。

あれ、ここはどこだろう?確か、彼と戦っていてそれで……。……あっ、そうだ、思い出したぞ。

私が状況を理解すると、彼は安心させるように話しかけてきた。「……良かった、気がついたみたいだね。」

彼はそう言うと、私の体を起こす。「……すまない、助けに来るのが遅くなって。」

彼は申し訳なさそうな表情を浮かべると、謝ってきた。……いえ、気にしないで下さい。

むしろ、私の方がお礼を言いたいぐらいですよ。あなたがいなければ今頃、あの世でしたからね。

私の言葉を聞いて、彼は首を横に振る。「……それは違うよ。君が強かったから助かったんだ。」

「……ありがとうございます。でも、結局負けちゃいましたが。」「……確かにな。でも、あいつは強かったから仕方ないさ。それよりも……」

彼はそこで言葉を切ると、真剣な表情で私を見つめた。……どうしました? 私が尋ねると、彼は静かに問いかけてくる。……君は、これからどうするつもりなんだ? 私は質問の意図がわからずに「どうするって?」

と聞き返すと、彼はさらに続ける。……つまりだな、魔法少女を続けるのかってことだよ。

続けて聞かれたので、私は迷わず答える。「……もちろん続けます。まだまだ未熟ですからね。」「「準特なのにぃ?」」

すると、彼は微笑みながらこう言った。「……そうか、なら頑張れよ。応援してるからさ。」「はい、ありがとうございました。それでは失礼します。」

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