第2話
「……失礼します!」
現在、私は魔法少女委員会のトップが集まる会議に参加している。
そこには直接見たことはないが、錚々たる顔ぶれが集まっていた。
魔法少女第1号のエレナ長官、アインザッツグルッペン総隊長のオーレンドルフ•フィーレア、国際魔法省長官のボルマン。
「それで今回はどのような要件で呼ばれたのでしょうか?」
私が質問をすると、ボルマン魔法省長官が答える。
彼はこの国の魔法省長官である。
この国は魔法によって成り立っていると言っても過言ではない。そのため魔法に関する様々な機関が存在しており、その中でもトップに位置するのがこの魔法省である。
この組織には世界中から優秀な人材が集まり、日夜研究を続けているという。
ちなみに私はこの組織の所属であり、一応は魔法省の役員ということになる。
一番下っ端ですけどね。
そして今回の議題についてだが、それは最近巷を騒がせているSS級魔法犯罪者についてのことだ。
その名はシェケナー。SSランクの犯罪歴を持つ凶悪な魔法少女である。
彼女はある日突然現れ、多くの人を無差別に殺害し、その後も街を破壊し続けた。
それを見た人々は彼女を恐れ、いつしかこう呼ぶようになった。
ー魔王と。
そんな彼女が今、この国に来ているという情報がもたらされたのだ。
そして、彼女は何故かこの街に滞在しているらしい。
だが、そんな情報だけではまだ危険度は判断できない。
そこで我々は彼女を捕まえる為、動くことにした。
だが、相手はかなりの手練れだということがわかっており、下手に手出しができない状況なのだ。
なので我々も協力してほしいとのことだ。
正直嫌だが、断れる立場でもない。それに私には個人的にやらなければならないことがある。
その為にはどんな手段を使ってでも成し遂げなくてはならないのだ。
そう思いながら私は承諾した。
するとボルマンは私に向かって言った。
〈では、よろしく頼むぞ〉 私は
「はい」と返事をして部屋を出た。
私は会議室を出るなりため息をつく。
何故ならこれから忙しくなるからである。
まずは私が指揮する中隊の部下たちに指示を出して、街の見回りを強化させる必要がある。
そして、次にしなければならないことは情報収集だろう。
幸いなことに彼女の見た目に関する情報は既に判明している。
「はい、わかりました。すぐに向かいます」
私は電話を切ると、すぐさま行動に移った。
そして私は部下を連れて目的の場所に向かったのだった。
「ここか…………」
私は目的の建物を見上げながら呟く。そこは高級ホテルだった。
その建物の最上階に彼女は滞在しているらしい。
私は受付で確認を取る。
どうやら間違いないようだ。
私は受付の女性に案内され、彼女のいる部屋に通された。
部屋の内装は落ち着いた雰囲気になっており、上品さが漂っている。
最後の部屋の扉を開けると、そこにいたのは一人の少女だけだった。
「あなたが私に会いたいという方ですか?」
「魔法省、第二対策課所属、郡菜乃一級魔法少女です。少しお時間よろしいでしょうか?」
「えぇ、いいわよ。それで...その後ろの方々はどちら様でしょうか?」
「私の部下達ですよ。そして、SS級魔法少女シェケナー、あなたには第一級魔法殺人の罪がかかっています。大人しくご同行願いたいのですが。」
「それはちょっと無理かしらね、だって貴方たちは...此処で死ぬのですから!」
彼女は一瞬で変身すると、魔法を行使してきた。
その魔法は恐らく空間転移の類いだと思われる。
その証拠に私の目の前から姿を消したからだ。
(どこへ行った?)
私は警戒しながら辺りを探る。
だが、次の瞬間、私は背中に強い衝撃を受けてしまった。
あまりの威力に私は地面に叩きつけられる。
何とか受け身を取ったがかなりのダメージを負ってしまった。
私は痛みに耐えながらも立ち上がる。
だが、その時既にシェケナーは私の後ろに移動していた。
私は咄嵯に防御魔法を展開する。
すると、先程とは比べ物にならない程の衝撃波に襲われた。
「ぐぁっ!?」
私は思わず声を上げてしまう。
だが、それでもなんとか耐えることができた。
しかし、今度は正面から蹴り飛ばされてしまい、そのまま壁に激突する。
「うぅ……」
シェケナーが相手では魔法少女ではない部下は役に立たない、すぐに痛む体を抑えて、部下に指示を出し退避させる。こうしている間も身体中が痛む。骨が何本も折れたかもしれない。
だが、まだ私は倒れるわけにはいかない。
私が倒れれば、この国にいる多くの人たちが殺されることになるのだから。
それに何より私自身、まだ負けられない理由があるのだ。
私は立ち上がり、再び戦闘態勢に入る。
だが、シェケナーの方が早かった。
彼女は両手をこちらに向けて魔法陣を展開する
「終わりにしましょう。【破滅の光】!」
すると眩い光が放たれて、それが私を飲み込んだ。
私は避けることもできず直撃してしまった。
そして、気付いた時にはもう遅かった。
体が動かないのである。
辛うじて首だけは動かすことができたが、それも時間が経つにつれて動かなくなっていく。
そして、とうとう完全に動けなくなってしまった。
それを見たシェケナーは不敵に笑う。
まるで勝ち誇ったかのように。
彼女はゆっくりと近付いてくると、魔法で作り出したであろう槍を手に持ち、私に向かって振り下ろす。
(ここまでなのか……)
私は死を覚悟して目を瞑る。
だが、いつまで経っても痛みを感じなかった。
不思議に思い目を開くとそこには驚くべき光景が広がっていた。
なんと、私を殺そうとしたはずのシェケナーが血を流していたのだ。
そして、よく見ると彼女の背後には一人の少女が立っていた。
彼女は黒いマントに身を包み、狐の仮面をつけている。
その風貌は明らかに異質だった。
私は突然現れた謎の人物に助けられたことを理解する。
すると、彼女は私に向かって言った。
〈大丈夫?〉 私は慌てて起き上がると、彼女に礼を言うために頭を下げる。
すると、後ろにいたシェケナーが血を流していたのだ。
そして、よく見ると彼女の背後には一人の少女が立っていた。
彼女は黒いマントに身を包み、狐の仮面をつけている。
その風貌は明らかに異質だった。
私は突然現れた謎の人物に助けられたことを理解する。
すると、彼女は私に向かって言った。
〈大丈夫?〉 私は慌てて起き上がると、彼女に礼を言うために頭を下げる。
すると、後ろにいたシェケナーが怒りの声を上げた。
〈お前は何者だ!〉 〈私は通りすがりの魔法少女だよ〉 〈ふざけるな!何故邪魔をするんだ!!〉 シェケナーの問いかけに彼女はそう答える。
それに対してシェケナーはさらに激昂した。
〈答えろ!何故私に攻撃した!!!〉 〈君が人を殺し過ぎたからさ。私は正義の味方として、悪人を見逃すことはできないんだよ。でも、安心しなさい。殺しはしないよ。ただ、君は暫くの間眠ってもらうだけだからね。そして、目が覚めたら全てを忘れてもらう
「そんなことさせるか!!」
シェケナーは突如叫ぶと、私に放った魔法よりも遥かに強力な魔法を行使してきた。
その魔法は恐らく空間転移だろう。
その証拠に彼女は忽然と姿を消してしまった。
だが、それを見ても彼女は慌てる素ぶりを見せない。
どうや
「くそっ!逃げられた!」
彼女は悔しげに拳を握る。
すると、私の元に部下達が駆け寄ってきた。
どうやら、私の身を案じてくれたようだ。
だが、今はそれよりも優先すべきことがある。
私は彼女に話しかけた。
「助けてくれてありがとうございます。あなたのおかげで命拾いしました。」
「いえ、気にしないでください。それより、早くここから離れた方がいいです。今の魔法はかなりの威力がありましたから。」
彼女の言うとおりである。
私は部下達に命令を出すと、すぐにホテルから出た。
そして、ホテルから離れると、ようやく一息つくことができた。
「ふぅ……」
私は改めて彼女にお礼を告げる。
「本当に助かりました。お名前を聞いてもいいですか?」
「私は……まぁ、通りすがりの魔法少女ということでお願いします。とりあえず、あなたの怪我を治させて下さい。」
「それはありがたいのですが、その前に少しだけ話をさせてください。あなたは一体何者ですか?」
私は一番気になっていたことを尋ねる。
すると、彼女は少し困ったような顔をした後、こう答えた。
「私はただの通りすがりの魔法少女ですよ。それ以上でもそれ以下でもないです。」
こうして、私はSS級犯罪者、シェケナーとの戦いに勝利した。
だが、この事件はまだ終わっていなかった。
翌日、新聞を読むと、そこにはこんな記事が載っていた。
〈昨日、都内のホテルで火災が発生。原因は従業員による火の不始末とみられている。幸い宿泊客はおらず、負傷者はゼロだった。〉 私はこの記事を見て疑問を抱く。
なぜなら、あの時、確かにシェケナーは私の目の前から姿を消したからだ。
ということはつまり……。
私は嫌な予感を覚えながら、部下の一人に電話をかけた。
そして、ある指示を出した後、すぐにその場を離れた。
それから数分後、私は現場に到着した。
すると、そこでは予想外の光景が広がっていた。
「うわぁぁああ!!!」
「なんだこいつ!?」
「ぎゃぁぁあ!?」
「ひぃいい!?」
なんと、ホテルの周りを大勢の黒いマントを羽織った人間が取り囲んでいたのだ。
そして、彼らは皆一様に同じ仮面をつけている。
その仮面は髑髏のような仮面で、取り囲んでいる人間達のマントにはオリーブの葉の紋章が描かれていて、
平和を意味するオリーブの葉を紋章として描くことで、平和への反発を意味しているのか....
「これは……まさか!?」
私が驚いている間にも仮面をつけた人々はどんどん増えていき、遂にはその数は2000を超えていた。
私は急いで近くの物陰に隠れると、携帯電話を取り出して、上司に電話する。
そして、通話が繋がると、私は慌てて要請した。
「大変です!今すぐ応援を要請します!相手はテロリストです!」
だが、それに対して帰ってきた言葉は非情なものでもあった。
「何を言っているんだ?テロなんて起きていないぞ。」
「えっ?でも……」
「とにかく、何かの間違いじゃないのか?一応、調べておくが、お前も疲れているなら休めよ。」
そう言って、一方的に切られてしまった。
私は呆然としながらも、再び現場に戻る。
すると、仮面の人々は相変わらずホテルを包囲し続けていた。
(どうして誰も通報していないのだ?)
私は困惑しながら、彼らの様子を伺っていた。
すると、一人の男が
「おい!あいつだ!」
「あれが例の奴か!」
「捕まえろ!」
と叫ぶと、他の男達もそれに続いて叫び出す。
私はその声に反応して咄嵯に逃げ出そうとするが、周りは既に包囲されていて逃げることができない。
それでも何とか逃げようと必死
「きゃぁぁあ!!」
その時、突然悲鳴が上がった。
私は慌てて振り返る。
すると、そこには先ほどまで私に話しかけてくれていた少女が倒れ込んでいた。
そして、その少女に向かってナイフを持った男が近付いていく。
「死ね!!」
男はそう叫ぶと、少女に向かってナイフを振り下ろした。
私は反射的に飛び出していた。
少女を抱きかかえて庇おうとする。
だが、間に合わないことはわかっていた。
そして、次の瞬間、私は腹に熱い痛みを感じた。
私は刺されたのだ。
私は血を流しながらその場に倒れる。
薄れゆく意識の中、私は自分が最後に見た景色を思い出していた。
それは、こちらに近づいてくる無数の仮面をつけた者達の姿であった。
私はそのまま目を閉じ、眠りについた。
次に目が覚めた時、そこは見知らぬ部屋だった。
私は体を起こすと、辺りを見回す。
すると、そこには気を失う前に応答してくれた上司であるフィーレア特等魔法師だった
「起きたばっかりですまないが、一つ言わせてくれ、君が先程電話してきた後に謎の爆発が起きてだな、そこへ向かったら君が血を流して倒れていたんだ。」
どうやら、私は彼女に助けてもらったようだ。
だが、彼女はどこに行ったのだろうか?
すると、そんな私の思考を読んだかのように彼女が口を開く。
「彼女は私の知り合いだよ。彼女は君を助けてくれた後、何処かへ行ってしまったよ。」
どうやら、彼女は無事だったようだ。
私はホッと胸を撫で下ろす。
そして、彼女に頭を下げた。
「助けてくれてありがとうございます。あなたがいなかったら私は死んでいました。」
「気にしないでくれ。私は正義の味方だからね。」
「その割には私を殺そうとしていたようですが?」
「それは違う。私はあの組織の一員ではないからね。あの組織は我々の存在を否定するから嫌いなんだ。それに、あの時は緊急事態で仕方なく……」
「なるほど……」
私は彼女の説明を聞いて納得する。
確かに、あの組織のやり方では犠牲者が出るかもしれないから、彼女の行動も理解できた。
だが、ここで新たな疑問が生じる。
なぜ彼女達は仮面を被っていたのだろう? いくら考えてもわからない。
そこで私は考えることを諦めた。
そして、話題を変えることにする。
それは、これからのことについての話である。
私の体はもう限界を迎えていた。私は死ぬのが怖くないと言えば嘘になるが、それ以上にこのまま何もせずに生きる方が嫌だった。
私は意を決して、ある提案をする。
それは、 「私をあなたの助手にして下さい。」 というものだ。
彼女は少し困ったような顔をした後、答えを返す
「いいよ。」 こうして、私は彼女と行動を共にすることになった。
そして、ここからが本当の始まりでもある。
なぜなら、この物語は終わりではなく、まだ始まったばかりなのだから……。
あれから半年後……。
私はすっかり彼女との仕事に慣れていた。
そして、今日は珍しく二人で依頼をこなすことになっていた。
私は車に乗り込むと、助手席に座っている相棒に話しかける。
私はふと思い出したように質問をした。
何故なら、この半年間、ずっと聞きたかったことがあったからだ。
私はハンドルを握る彼女に質問する。
「どうして私を選んだんですか?他にも優秀な人はたくさんいたはず」
「うーん……そうだねぇ……」
彼女は考え込みながら答える。
「君は優秀だし、何より……私と同じ匂いがしたんだよ。」
私は首を傾げる。
どういう意味なのだろうか? 私が困惑していると、彼女は話を続ける。
「実はさ、私が魔法少女を始めたのも同じような理由だったんだよね。」
「そうなのですか?」
私は驚いて尋ねる。
てっきり、彼女の才能によるものだけだと思っていたのだが……。
「ああ、そうさ。」
彼女はそう言うと、自分の過去を語り始めた。
「私は昔から頭が良かったせいか、周りの人間からは天才扱いされていた。でも、本当はただの孤独に耐えかねていただけの弱虫だったのさ。でも、ある日を境に私は変わった。」
そこまで話すと、彼女は一度言葉を切る。
そして、再び話し出す。
今度はどこか懐かしむように語り出した。
「あれは確か中学生の頃のことだったかな?突然、私の元に一通の手紙が届いたんだ。」内容はこう書かれていた。
【貴女は選ばれた。
運命を変える力を授ける。】
最初はイタズラかと思ったんだけどね、なんとなく信じてみたくなって試してみたの。そしたら、本当に私に力が与えられた。」
彼女はそう言って笑う。だが、私は笑えなかった。
その気持ちがよくわかったからだ。
私も同じ経験をしていたのだから。
彼女はそんな私を見て、クスッと微笑むと話の続きを語る。
そして、彼女は私に問いかけてきた。
「それで、君はどうしたい?」 私は即答した。
迷うことなどなかった。
私は彼女の問いに答える。
「私はあなたのように強くなりたい。」
すると、彼女は優しく笑ってくれた。
まるで、私の決意を認めてくれるかのように。
それからというもの、私は必死になって努力を重ねた。
そして、遂に私は彼女に追いつくことができたのだ。
私は嬉しくて仕方がなかった。
これでやっと肩を並べて戦うことができるのだと。
すると、彼女が私に向かって告げてくる。
私は彼女に向かって力強く返事を返した。
私は今、最高潮の気分だ。
そして、私たちは目的地に向かって走り続ける。
やがて、目的の場所が見えて来た。
そこは寂れた廃工場だ。
どうやら、今回の相手はこの工場の経営者らしい。
私は車を降りると、彼女に話しかけた。
「どうします?正面突破でいきますか?」
彼女は私の方を見ると、ニヤリと笑い、答えを返してきた。
「いや、今回は裏口から行こう。」 彼女はそう言い残すと、一人で建物の中に入って行く。
私は慌ててその後を追う。
建物の中には仮面をつけた男達が待ち構えていた。
彼らはこちらの姿を確認すると、一斉に襲いかかってきた。
だが、私は慌てることはない。
なぜなら、私は一人ではないから。
私は襲ってくる敵を次々に倒していく。
すると、彼女が私に声をかけた。
「こっちだよ!早くおいで!!」
私は彼女の声に従い、急いで彼女の元へ向かう。
すると、そこには地下へと続く階段があった。
私は彼女と共に地下に進んでいく。そして、最深部に到達すると、そこに一人の男が立っていた。
男は私たちの姿を目にするなり、口を開く。
彼は言った。
「よくここまで来たな。褒めてやるぞ小娘ども。しかし、お前達はここで死ぬことになる。大人しくここで死ぬがいい。」
私は彼の言葉を鼻で笑う。
「ふんっ……あんたが黒幕ってわけね。」
「ほう……随分と強気じゃないか?」
「えぇ...だって私には最強の相棒がついているもの。」
「相棒……?一体誰のことを指しているのか知らんが、私には勝てんよ。」
「どうかしらね……」
「いいだろう。ならば見せてもらおうか。最強の魔法少女の実力とやらを。」
そう言うと、仮面の男は攻撃を開始した。
私は敵の攻撃を避けながら、反撃の機会を伺う。
だが、仮面の男の攻撃は速く、私は防戦一方であった。
だが、その時である。
〈ほら、隙だらけだぜ?〉 彼女は仮面の男の背後から攻撃を仕掛ける。
仮面の男は咄嵯に反応するが間に合わず、攻撃を喰らう。
その瞬間、彼女の拳から炎が現れ、仮面の男を燃やし始める。
「ぐわぁああっ!?なんだこれは!!」
「へへん……これが私と彼女の力さ!」
「ちょっと、勝手に決めないでよね!」
「まあまあ、細かいことは気にしないのさ。」
「くそぉ……このままでは終われん!」
そう叫ぶと、仮面の男は懐から何かを取り出し、それを自分の胸に突き刺す。
「しまった!自爆するつもりか!」 私はとてつもない爆発音を聞きながら意識を失った。
目が覚めると、私はベッドの上にいた。
どうやら、ここは病院のようだ。
「おっ、起きたかい?」
声が聞こえたのでそちらの方を見てみると、そこには彼女がいた。
私は彼女に尋ねる。
「あの後....どうなったんですか?」
「ん?ああ、あれなら心配はいらないさ。君のおかげで奴の計画は阻止することができたしね。」
「よかった……」
「それにしても驚いたよ。まさか、あんなに強くなるなんてさ」
「はい、それは私も驚いています。」
「ふーむ、どうやら君は少し勘違いをしているみたいだねぇ……」
「どういうことですか?」
「いいかい?君の力はまだ発展途上だ。これからも修行を続ければきっと強くなれることだろう。」
「本当ですか!?」
私は嬉しかった。これでやっと彼女に追いつけたのだと思ったからだ。
すると、彼女は私のことを見つめて言った。
「でも、君はもう戦う必要はないんだよ?」
私は思わず固まる。
そして、すぐに反論した。
「そんなの納得できません!」
「なんでだい?魔法少女は死と隣り合わせだ、別に死にたくないというわけではないんだろう?だったら、それでいいじゃないか。」
私は言葉に詰まりながらも必死になって彼女に食い下がる。
だが、それでも彼女は頑として首を縦には振らなかった。
「ではなぜそこまでして戦うことにこだわるんだい?君の出身は一般家庭だったと思うんだけど...
そんな家に生まれた子が戦う理由とはなんなのか教えてくれないか?」
私は答えることができなかった。
確かに彼女の言う通りだ。
私が戦う理由は特になかった。
ただ強くなりたかっただけなのだから。
だが、今更やめたところで私の居場所はない。
両親からは勘当され、アインザッツグルッペンに所属したことから友達からも距離を置かれるようになった。
だから、私にはもう何も残っていなかったのだ。
私は俯き、黙ったままだ。
すると、彼女は優しい声で私に声をかけてきた。
「大丈夫だよ。」「えっ……?」「君は一人じゃない。私がいるじゃないか。」
その言葉で涙腺が崩壊しそうになる。
だが、私はグッと堪えた。そして、精一杯強がってみせる。
「ふんっ……あなたなんか頼りにならないわ。」
そう言ってやった時の彼女の顔はとても悲しげなものだったが、それを無視して私は話を続ける。
「とにかく、あなたの言いなりにはならないわ!私は私の意思で戦い続ける。そう決めたの。」
すると、彼女は私に向かって手を差し伸べてくる。
私は彼女の手を握り、握手を交わした。
「わかった。ならば、私は全力でサポートしよう。それが私にできる唯一のことだからね。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
こうして私は彼女とタッグを組むことになった。
それから私は彼女と共に様々な敵と戦い続けた。
時には二人で協力することもあったが、基本的には別行動で戦っていた。
そんなある日のことである。
私はいつものように敵を倒そうとしていたのだが、途中で敵の増援が来てしまい、苦戦を強いられていた。
私はなんとか敵を倒そうとするが、なかなか上手くいかない。
そして、とうとう追い詰められてしまう。
絶体絶命の状況の中、私は覚悟を決めた。
「ごめんなさい……」 「何を謝っているの?」 「私のせいでこんな状況になってしまったの。本当にごめんね……」 「いいのよ。だって私は君と出会えてとても楽しかったもの。」 「一つアドバイスをあげる。君の魔法は時を操る能力なんだから、もっと熱くならないとダメだよ?」「うん……ありがとう。」
「さようなら……」
彼女は笑顔を浮かべながらそう言うと、ゆっくりと目を閉じた。
私は涙を流しながら彼女の名を叫ぶ。
「嫌ぁあああああっ!!!!!」
「.......橘 が死んだ...部下が死んだ!師匠が死んだ!」
「私は!.....私は郡菜乃!群馬県出身!誕生日は9月27日!好きな食べ物は焼き饅頭!覚えていてくれ....知っていてくれ!私たちは...この国で戦った、魔法少女だぁ!」
そこで目が覚める。
夢の中のはずなのに、まだ彼女の温もりが残っている気がする。
私は彼女に言われた通りに、もう一度強くなろうと心に誓った。
それからというもの、私はより一層魔法の特訓に励むようになった。
どんなピンチに陥っても冷静に対応できるように精神面を鍛えたり、敵の攻撃を予測できるように経験を積んだりした。そして階級が上等魔法少女に上がったりした。
そして、ついに運命の日が訪れる。
ある日、私はとある任務を言い渡される。
それは、仮面の男を拘束することであった。
どうやら、仮面の男は私たちが倒したはずの仮面の男たちの仲間らしい。
そして、仮面の男が現れた場所というのがなんと私の故郷だったのだ。
「許さない……」
私は怒りに震える。「絶対に許せない……」
私は拳を強く握った。
「殺してやる……」
私は復讐に燃えた。
「待っていてください……」
私は呟く。
「私が必ず殺します……」
私は決意を固めると、すぐに現地に向かった。
そこにはすでに多くの警察官が集まっていた
私は彼らと一緒に仮面の男を探す。
すると、突然大きな爆発音が聞こえた。
「何事だ!?」
私は音のした方へと走る。
するとそこには、一人の男が立っていた。
「こちら、郡上等魔法少女、対象を発見、繰り返す、対象を発見」
「よく来たなぁ!俺の名前は……」
「死ねぇえええ!」
私は男の言葉を無視して攻撃を放つ。
だが、その攻撃を簡単に避けられてしまった。
「おいおい、ちょっと落ち着けよ。せっかく自己紹介しようと思ったのによぉ〜」
「黙って死ね」
私は連続で攻撃を仕掛けるが、その全てをかわされてしまう。
だが、その時だった。
男の背後から誰かが飛び蹴りをしたのだ。
「おっと、危ないじゃねえか」
男は振り向きざまに裏拳を放った。
しかし、その一撃は受け止められてしまう。
そこに居たのは、グルッペン総隊長のオーレンドルフ•フィーレアだった。
「お前は……」
「久しぶりだな、仮面の野郎。」
「なんでテメェがここにいるんだ?」
「決まってんだろ?お前を殺しに来たんだよ。」
そう言ってフィーレアは拳を構える
「ハッ、おもしれぇ!やってやんよ!」
「望むところだぜ!」
二人は同時に動き出した。
そして、激しい殴り合いが始まる。
しばらくすると、お互いに息が上がり始めた。
「ハァ……ハァ……オラア!!」
「クッ……そっちこそ……潰れちまえ!!」
そして、二人の渾身の一撃がぶつかり合う。「グゥウウッ……!クソッタレ……!」
「うおおお!!負けるかああ!!」
「ぐぅ……!がぁっ……!」
「これで終わりにしてやる……!」
そう言うと、フィーレアは両手に魔力を集める。
「これが俺の必殺技だ!食らいやがれええええええ!!!」
すると、手から巨大なビームが放たれた。
「チィイイッ!!」
「これで終いだあああ!」
「させるわけにはいかねえなあ」
どこからか声が聞こえる。
そして次の瞬間、突如現れた黒い影によって、仮面の男は救われた。
「大丈夫かい?」
そう言って手を差し伸べてきたのは、全身真っ黒の服を着た男だった。
「誰だ、貴様?」
「名乗るほどの者じゃないさ。ただの通りすがりの魔法使いだよ」
彼は不敵に笑う。
そして、仮面の男に向かってこう言った。
「やっぱやめるわ、すまん帰る」
「ゑ」
「......隊長...どうしますか?」
「んーとりあいず、捕獲だな。」
「了解」
私はその後、フィーレア総隊長と共闘して、なんとか仮面の男を倒した。
私は改めて決心する。
もう二度と大切なものを失わないために強くなると。
だから私は今よりももっと強くなってみせる。
これからもずっと……
私はそう心に誓った。
私は現在、任務で東京に来ている。任務の内容は、魔法による犯罪組織の調査及び壊滅である
ちなみに今回の相棒は高嶋蜜柑という魔法少女だ。
彼女はとても優しくて真面目な性格の持ち主であり、実力もかなりのものである。
また、彼女と一緒に戦うことで彼女の戦い方の癖なども理解することができた。
そんなこんなで色々ありながらも私たちはついに組織の本部を見つけることができた。
そして、とうとう作戦を開始する。
まず最初に、私一人で本拠地に乗り込む。
私は敵の本拠地を歩いていると、突然後ろから気配を感じたため振り返る。するとそこには、先程まで誰もいなかったはずなのに、いつの間にか一人の少女がいた。
彼女の名前は紅月ひかり。この組織は彼女のことを知っている、私にとっては初対面なので特に何も思うことはなかった。
そして私は彼女に話しかける。
しかし、なぜか返事がない。
どうしたのかと思っていると、急に彼女が襲いかかってきたのだ。
私は咄嵯に回避する。
その後も何度も攻撃をしてくるが全て避けることに成功した。
そして私は反撃に移る。
だが、攻撃は全て防がれてしまう。
すると、今度は相手の方が攻撃を仕掛けてくる。
私はそれを避けて、カウンターを仕掛けようとしたのだが、途中で攻撃をやめてしまった。なぜなら、彼女の顔を見た時、私は驚いてしまったからだ。
なぜならば、その少女の顔はとても悲しそうな顔をしていたのだ。
なぜそのような表情をしているのかはわからない。だけど、一つだけわかることがある。それは、このままだと彼女は確実に死んでしまうということだ。
私は迷わず攻撃に移った。
全力で放った私の拳は、見事に命中したように思えた。だが、実際はギリギリのところで避けられてしまった。
私はもう一度攻撃しようとしたのだが、突然何者かが私たちの戦いに介入してきた。
それは、なんと私の上司のフィーレア総隊長だった。
彼は私たちに話しかけると、突然謝ってきた。なんでも、私が所属している部隊の隊長は、実は偽物だったらしい。ウッソだろお前!そして、本当の隊長が今戦っているのだそうだ。そういえば、
だが、フィーレア総隊長が来たとしても、戦況はあまり変わらなかった。むしろ悪化したと言ってもいいだろう。
何故なら、フィーレア総隊長はあの謎の男に苦戦していたのだ。
正直言って、フィーレア総隊長はかなり強い方だと思う。だからこそ、あの男の強さに驚くばかりだった。
フィーレア総隊長は必死に抵抗するが、やはり男の攻撃を防ぐだけで精一杯のようだった。
そして、ついに男はフィーレア総隊長を吹き飛ばす。
フィーレア総隊長は壁を突き破ってどこかへと吹き飛んで行ってしまった。
「フィーレア総隊長!!!」
私は思わず叫んでしまう。
すると男はこちらに向かってきた。
そして、そのまま私を殴りつける。
私はなす術もなく倒れてしまう。
そして男はさらに追撃を加えようとしてきた。
「ちぃ!総隊長が来たせいで戦闘計画が台無しじゃないか!」
そう言いながらも、すぐに体制を立て直す。
そして、私は男の隙を狙って攻撃を開始した。
私は拳に魔力を込めて殴ろうとしたが、簡単に受け止められてしまう。
私は続けて蹴りを放ったが、それも受け止められてしまった。
そこで私は、とっさに足払いをして、相手を転ばせることになんとか成功した。
しかし、それでも相手の動きを止めることはできず、逆に殴られてしまいそうになるが、なんとかガードに成功する。
その後、何とか体勢を整えた私は、再び相手に攻撃を仕掛けようとするが、またしても防御されてしまう。
どうしたものかと考えていると、突然横から何かが飛んできた。
それは、なんとフィーレア総隊長だった。
どうやら飛ばされた先で復活したようだ。
復活早いですね
「すまん!昨日まで拘束されてたから、まだ本調子じゃないんだ!」
いや、あなた何やってんですか!? 私は心の中でツッコミを入れる。
まあとりあえずこれで形勢逆転だ。
後は一気に攻めれば勝てるはずだ。
私はそう思っていた。
だが、現実は非情であった。
男はフィーレア総隊長に向かって攻撃をしようとするが、それを私が防ぐ。
だが、次の瞬間、私は男に捕まり投げられてしまう。
なんとか受け身を取ったものの、かなりのダメージを負ってしまった。
私はなんとか立ち上がると、今度は二人同時に攻撃する。
しかし、二人はそれぞれ別方向にふっとばされてしまった。
その後、私は何度も立ち向かっていったのだが、どれも上手くいかない。
結局、一度も有効打を当てることができなかった。
こうなった以上、もう諦めるしかないと思ったその時、突如として男が苦しみ始めた。
一体どういうことなのかと思っていると、なんとひかりちゃんが姿を現して、そのまま男の首を締め上げていた。
どうやら彼女も変身していたようだ。
ひかりちゃんはそのまま男の体を持ち上げると、地面を思いっきり叩きつけた。
そして、ひかりちゃんは男の体から離れると、すぐに魔法陣のようなものを展開し始める。
ひかりちゃんがなにをしようとしているのかはすぐにわかった。
おそらくあれは自爆系の攻撃だろう。
私は急いで止めに入ろうとする。だが、間に合いそうにない。
せっかく上等まで上り詰めたのに、私は自分の無力さを嘆くことしかできなかった。
私は、自分が何もできないまま、目の前で大切な人が死ぬところを見ていることしかできなかった。
だが、そんな私とは違い、ひかりちゃんのことを助けてくれた人がいた。それはなんとフィーレア総隊長だった。
彼はひかりちゃんを抱き抱えるとそのまま走り去って行ったのだ。どうやら逃げるつもりらしい。
私は慌てて後を追いかけようとしたが、突然謎の男が現れて道を塞いでくる。
「おいおい逃さないぜ」
そして男は私たちの方へと向かって来た。
私は全力で逃げようとするのだが、相手の方が早かった。
「さーて、まずはお前からだ!」
私は咄嵯に構えるが、やはり相手の方が早く攻撃を当ててくる。
私はまた地面に倒れ込むことになる。
だが、今回はそれだけでは終わらなかった。
なんと男は私の腹を蹴ってきたのだ。
私はあまりの痛みに悲鳴を上げる。
「うぎゃああぁあ!おえぇ!」
私は吐きそうになりながらもなんとか耐えることができた。
だが、それでもかなり痛い。
そして、今度は頭を踏みつけられる。
だが、私には抵抗することができない。
私は男に踏みつけられながら必死になって考えていた。
どうにかしてこの状況を脱する方法はないのだろうかと……。
すると、突然謎の男の動きが止まる。
そして、その視線はなぜかフィーレア総隊長に向けられているようだった。
一体どうしたのだろうと不思議に思っていると、男は信じられないことを言い出した。
「お前……フィーレアか?」
フィーレア?誰それ? 私は疑問符を浮かべたが、それよりも気になることがあった。
「どうして俺の名前を……」
フィーレア総隊長は戸惑ったような表情をしている。
私も同じ気持ちだ。
すると男は笑みを浮かべた。
「まさかこんなところで会えるとはな!俺は嬉しいぞ!」
男はそう言うと、フィーレア総隊長の顔面を殴る。
「ぐあっ!」
フィーレア総隊長が倒れると、男はさらに蹴り続ける。
「総隊長!大丈夫ですか!?」
「ん?あぁ、君が郡菜乃上等魔法少女か!いやぁ〜会えて嬉しいぞ!」
「.....あなたは誰ですか....」
「おっと自己紹介がまだだったな。俺の名前は……いや、今はいいか。とりあえずそいつを捕まえておいてくれないかな。」
そう言って男はさっきまで戦っていた仮面の男のことを指差す。
「わかりました。でも、なぜこっちを攻撃してきたんですか?」
「そりゃお前らの邪魔をしたからだよ。俺はそいつと戦いたいんだ。だからどいてろ。」
どうしようかと考えていると、フィーレア総隊長が立ち上がり、男の方を向いた。
「おいおい、いきなりひどいじゃ無いか、親友なのによぉ」
「誰が親友だ!貴様はライバルでしかないだろ!」
「はっ!よく言うぜ。昔はよく一緒に遊んだ仲じゃないか!」
そう言うとフィーレア総隊長は親友と言われていた男の頭を鷲掴みにする。
「離せ!」
男が暴れようとするが、フィーレア総隊長の力が強く、全く動かせていないようだ。
「とりあえず、少し話そうぜ。」
フィーレア総隊長がそう言うと、男は舌打ちをして大人しくなった。
そして、二人は向かい合うようにして座る。
「それで?なんでお前はここにいるんだよ。」
「お前こそなんでここに来た。」
「俺はこの世界の平和を守るためさ」
「ふざけんじゃねぇ!!お前のせいで俺たちの世界はめちゃくちゃになったんだ!!」
「まあまあ落ち着けって。そんなに興奮するなって。血圧上がるぞ?」
「うるさい!」
どうやら男の方は相当頭に血が登っているようだ。
そんな男の様子を見て、フィーレア総隊長はため息をつく。
「はぁ……やっぱりこうなるのか……。まあいいか。とりあえず久しぶりだし、ちょっとだけ話をするか。そうだな、まずは……あれは確か俺が中学生の頃のことだったな……」
それからしばらくの間、フィーレア総隊長による男への愚痴が始まった。
なんでも男はフィーレア総隊長よりも先に魔法師になっていたらしい。
【魔法師とは、男で魔法を使う者の総称で、少女で魔法を使う者は魔法少女、成人してからは魔女と呼ばれる】
しかもフィーレア総隊長とは違って、ちゃんとした理由があってなったわけではなく、ある日突然使えるようになったらしい。
そのため、周囲からは妬まれたりもしたらしい。
そんな男に対してフィーレア総隊長はいつも勝負を挑んでいたらしい。だが、結局一度も勝つことはできなかったようだ。
そんなことをしているうちに、男には敵わないと思った人々は離れて行き、最終的に男は孤立していった。
そして、そのまま高校を卒業し、ドイツの大学へ行ってからもずっと一人で過ごしていたらしい。
だが、そんなある日、フィーレア総隊長が日本で魔法師をしていることを知った男は、すぐに会いに行った。だが、すでにフィーレア総隊長は魔法師を辞め、アインザッツグルッペンに移動した後だったため、会うことができなかった。
そこで、男は魔法師について調べ始めた。そして、とある研究所の存在を知る。
どうやらその研究所では魔法の実験を行なっているらしく、そこでは人工的に魔法少女を作り出すことに成功していたらしい。
そして、その研究施設に忍び込んだ男は、研究員を殺してその力を奪い取った。
そこから男は魔術師【魔法師の中でも悪虐非道な魔法師のこと】となり、その力を思う存分に使った。
そして、その力でフィーレア総隊長を探し出し、復讐をしようとしたのだが、逆に返り討ちにあってしまった。
だが、男は諦めなかった。なんとかしてもう一度フィーレア総隊長に会いたいと思っていた男は、ある計画を立てた。それが、フィーレア総隊長と同じ世界線に行くという計画だった。(どういうことだってばよ)
男は異世界転移の魔法【※禁術です】を使い、フィーレア総隊長が魔法師をやめない世界に行こうとしたが失敗してしまった。
どうやら同じ時間軸に複数の同じ人間が居ることはできないようだ。
そのため、しょうがなく男はフィーレア総隊長が魔法師をやめた世界を生き抜くことにした。そして、今に至るようだ。
フィーレア総隊長の話を聞き終えた男は涙を流しながら言った。
どうやら感動的な話になっているみたいだ。
私にはわからないけどね! すると、フィーレア総隊長が口を開いた。
なんだか嫌な予感がする。
私の予想通り、フィーレア総隊長はとんでもないことを言い出した。
それは……
「魔法少女を男で再現できないか」
という事だった。
え? いや、待って欲しい。魔法少女は少女しかなれないんだよ!? いくらなんでも無理があるんじゃ……
私が戸惑っていると、フィーレア総隊長は続けてこう言った。
ちなみに男のほうの名前は 黒須 闇斗 という名前らしい。
まぁ、そんなことは置いといて、男はなんとしてでも魔法少女を再現してみたかったらしい。
そのためにわざわざ異世界まで行ったんだからな、と言って笑っていた。……正直怖いんですけどこの人……。
そして、私は魔法少女を男で再現することに協力させられることになった。
なぜこんなことに……
私が項垂れていると、男が声をかけてきた。
そうだ、まずはこの人をどうにかしないと……
私は男に向き直った。……あれ? なんか変な感じがするような気がしないでもないような……気のせいかな? まぁいいや。とりあえずこの人はフィーレア総隊長のライバルらしいし、一応名前を聞いておこう。
そして、自己紹介をする。もちろん魔法少女としての名前だけど。
「知っていると思いますけど、私は郡菜乃上等魔法少女です」
そう言うと、男は少し驚いた顔をしていた。……どうしたんだろう。まあいっか。
そして、次は男の魔法師としての階級を聞こうとするが、男は自分の階級を言わずにどこかへ行ってしまった。
まあ、いっか。また会えるだろうし。
それより今はフィーレア総隊長だよ。フィーレア総隊長はなんとしても魔法少女を作ろうとしている。
どうしよう……このままじゃ大変なことになりそうだ。このままでは...宇宙の法則が...乱れる!
とりあえず、フィーレア総隊長を止めるために動き出す。
まずはフィーレア総隊長の部屋に向かう。
中に入ると、そこにはフィーレア総隊長がいた。
よかった、まだ計画は始動していなかったようだ。安心した。
さすがに魔法少女を作るのは早すぎると思うし、止めることができたらフィーレア総隊長は魔法少女を作らないかもしれない。
フィーレア総隊長はこちらを見ると笑顔になった。
どうやら私のことを待っていたようだ。
フィーレア総隊長の机の上には様々な資料が置いてあった。
どうやらフィーレア総隊長はすでに計画を練っているようだった。
前言撤回、これはもう止められない、そう思いもうどうにでもなれと覚悟を決める。
フィーレア総隊長は私に話しかけてくる。
どうやら計画について相談したいらしい。
フィーレア総隊長は私を手招きして自分の隣に来るように促してくる。
仕方ないので近くに行ってみる。
フィーレア総隊長は私の顔を見てニヤリとした。……どうやらフィーレア総隊長の計画を聞くしかないようだ。
「まず魔法少女の最低条件ってなんだと思う?」
「えっと、魔法少女になるにはNEAコアがあることが必須なので、必然的に20歳以下の女性である必要があります」NEAコアとは、20歳以下の女性にしかない、魔力機関のことである。
NEAコアは20歳を超えると別物の魔力機関に変化する。なので魔法少女はNEAコアを持っていることが最低条件と言われているのである。そしてNEAコアと他の魔力機関では最大魔力の桁が違う。一応、NEAコアは人工的に作れる。
そして、話を続ける。
「その通りだ。だから魔法少女を男で作るためには、まずNEAコアを移植すればいいんだ」
フィーレア総隊長が真剣な顔で言う。
確かにそれなら問題なさそうだ。なぜなら私は人工NEAコアを移植された人工魔法少女であるからだ。
だが、そこで疑問が生まれる。
それは、どうやってNEAコアを提供してくれる人物を見つけるのかだ。
すると、フィーレア総隊長はその答えを教えてくれた。
「私の娘が魔法少女に憧れていてな。もし魔法少女になりたいと言ったら、きっと喜んでくれるはずだ」
フィーレア総隊長には娘がいるようだ。
私もいつか子供ができたらいいなぁと思いながら話を聞き続ける。
「それで、どうやってNEAコアを手に入れるつもりなんですか?まさか、移植ですか?あれは半分の確率で死にますよ」
そう、人工的に作られたNEAコアは適合率が限りなく低い、よくて半分、悪くて10%の確率で適合という、普通ならまず受けないくらいの手術である。これを受けるのは私のような物好きか、ただの自殺志願者かである
「いや、それは大丈夫だ。実はな、私の知り合いがNEAコアの研究をしているんだ。そいつが言うには、普通のNEAコアより適合率が多いNAEコアを人工的に作り出すことに成功しているらしいんだ。もちろん、適合率が100%な訳ではない。ただ、成功例は多いらしくてな。一応、適合率を100%上げる方法は研究しているらしいんだが」
「そうなんですね。でも、なぜそんなことを知っているんですか?そもそも、そんなことができるなんて聞いたことがないですよ?それに、なんのために魔法少女を作ろうとしているんですか?魔法少女は少女しかなれないんですよ?あなたは男の子がゴスロリ服をが好きな変態さんなのでしょうか?まあ、私は差別しないので別にいいと思いますけど」
「おい、ちょっと待ってくれ。私は男色家ではないぞ。私は純粋に魔法少女を愛でたいだけだ」
「……そうですか」
私は若干引き気味に答える。
まあ、とりあえず魔法少女を男で再現するのは無理だということがわかってもらえたと思う。
あれ?これって男の子を魔法少女にするための話だよねなんか違うような気がするけど……まあ、いっか。
フィーレア総隊長は少し考え込んでいたが、すぐに顔を上げてこちらを見た。
どうやら何か思いついたようだ。
フィーレア総隊長はまたもやニヤリとして言った。
どうせろくなことじゃないだろう。
フィーレア総隊長は嬉しそうに言う。
嫌な予感がした。
フィーレア総隊長は続けてこう言ってきた。
「お前に娘の魔法少女としてのいろはを教えて欲しいと思ってな。」
フィーレア総隊長はこちらを見て、笑みを浮かべている。
どうやら拒否権はないようだ。
仕方ないので引き受けることにした。
フィーレア総隊長はこちらに近づき、私の手を握ってきた。
「ありがとう。これからよろしく頼む」
フィーレア総隊長は笑顔で言ってくる。
その笑顔はとても輝いていた。
だが、私には悪魔の微笑みにしか見えなかった。
それから、フィーレア総隊長と別れる。
部屋を出てから大きなため息をつく。
ああ……憂鬱だ……
そう思いながらも、自分の仕事をこなすために歩き出した。
魔法少女……か……
そういえば、フィーレア総隊長は私のことを人工魔法少女と言っていた。
まぁ、私以外にもいるわな……
まあいっか。
さて、今日も頑張りますかね! そう自分に言い聞かせて、私は歩くスピードを上げた。
魔法少女育成計画(仮)始動です
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