第2話 面白くはないが良い奴、ひろし
「あぁ〜あ。どうすっかなぁ。」
会社に着くなりため息をこぼす。
悩みの種はもちろん嫁の不倫疑惑。
正直、離婚はしたくないし、今はまだ疑惑なのでこれから決定的な証拠を集めないといけない……が、社畜にはそんな時間はなくどうすればいいのか。
「なんだ優一。休日出勤した時みたいな顔しやがって。嫁と喧嘩でもしたか?」
大して上手くもない言い回しで俺に話しかけて来たのは、俺の同僚のひろし。
面白くはないが、良いやつで、ここだけの話うちの会社の社長息子だ。
しかし、ひろしは母親の旧姓を名乗っており親のコネは使っていない。
が、もし何かやらかした時に便利だからとこの会社に入ったそうなので、なんとも言えない。
「社畜の俺に喧嘩なんてしてる時間ねぇよ。」
「間違いない。……で、何があったんだ?」
ひろしは俺のデスクに缶コーヒーを置いた。
こいつは昔から人に缶コーヒーを渡すのが好きだな。
「サンキュ。」
「おじさんがサンキュはキツいぞ〜?」
「28っていうほどおじさんか?」
アラサーって世間じゃおじさんの部類に入るのだろうか。
まぁ、義務教育を三回受けれる年数って考えたらだいぶ歳を取ってるな。
「大方、嫁関連だろ?」
「まぁな。」
「何があったんだ?」
……今更だが、こう言う話ってあんまり人にしていい話じゃないよな。
まだ確定したわけでもないし。
まぁ、ひろしは悪いやつじゃないのは知ってるんだけど。
「ま、また話したくなったら話してくれ。俺にも何かできることがあるかもだからな。」
「ああ。すまんな。」
「気にすんな。」
ひろしは俺の背中を軽めに叩いて自分のデスクに戻っていった。
……少しくらい、相談してみるかな。
俺は今日の社畜タイムを乗り切って、ひろしと飲みに行くことにした。
「で、何があったんだ?」
俺たちはカウンター席に座って二人酒を飲んだ。
「嫁が最近ずーっとスマホ見てるんだよ。それで、よく家を開けてるし……。」
「あ〜……そう言うことか。」
ひろしは事情を察したのかジョッキの中身を一気に飲み干して、今度はハイボールを注文した。
俺も、酒の勢いを使おうとハイボールと唐揚げを頼んだ。
「でさ、興信所とか使いたいんだけど、」
「ああ、家計は嫁さんが握っているのか。」
「That's right .」
「金貸そうか?」
……いや、金の切れ目は縁の切れ目という。
ひろしのように仲のいい奴には特に借りたくない。
だから俺は、静かに首を横に振った。
「そうか……ならどうする?」
「次のボーナスまではどうにかしたいな。」
「あ、そうだ。シークレット口座作ったらどうだ?」
「シークレット口座?」
「ああ。嫁さんに内緒で口座作ったらいいじゃん。」
……確かに、その手があったな。
だが怪しまれたら面倒だな……。
「お前、今怪しまれたら面倒とか思ってるだろ……。」
「そりゃ、興信所とか使ってシロだったらどうするんだって話だろ?」
「まぁそうか。」
「だがまぁ、ありがとな。」
「ま、貸一ってことで許してやるよ。あ、そういえば俺たちの高校……」
それから俺たちは酒の勢いで昔話に花を咲かせ花を咲かせた。
思えば、社会人になってからこうやって昔話をすることはなかったな。
「それじゃあ、また相談してくれや。」
「おう。」
居酒屋で解散した俺たちはそのまま帰宅した。
そしていつも通り風呂に入って、飯を食って、部屋の掃除をした。
嫁もいつも通りだし、やはり嫁は、浮気などしていないのではないのか。
そんなことを思っていると、ひろしからメールが来た。
『これ見たら、多少は知識もつくんじゃないか?』
とのこと。
どうやら、「スカッとL○NE]という動画チャンネルだそうだ。
数本動画を見てみたが確かにためになるものだった。
「……これ、嫁にも当てはまるな……いや、まさかな。」
俺の見た動画だと、友人にも頼んでいたな……。
……あ、そうだ。
「共通の友人に頼んでみるか。」
俺は夜中なのを忘れて、彼女に連絡することにした。
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