⑯ こねこの家族





 赤い橋の上。茶色の子猫が歩きます。

 手足は短くて、少しポッチャリしています。

 メスなのかオスなのか、それは誰にもわかりません。

 何だか不細工なのに、ちょっぴりキュート。そんな子猫のお話です。


 子猫は赤い橋の下で産まれました。

 兄弟はみんな白くて綺麗でした。

 茶色い子猫は兄弟の白い毛並みが羨ましくて、毎日体を洗いました。

 でも茶色の毛は白くなりませんでした。

 子猫はお母さんに聞きました。


『どうしてこの毛は白くならないの?』


 そんな子猫に、母猫は不思議そうに笑いました。


『みんなと一緒が良かったのかい?』


 子猫は少し考えて


『毛の色が違うと家族じゃないみたいだから』


 と不器用に答えました。

 母猫はクスリと笑いました。


『でもお兄ちゃんと仕草が似ているよ。

声もまるきり一緒じゃないか』


 子猫はまた少し考えて


『でも母さんも白いのに、自分だけこんなに茶色いのは嫌だ』


 と体を洗いました。

 母猫は少し真剣になって言いました。


『お前は気付かないかい?

お姉ちゃんのお腹には、茶色の斑点があるんだよ』


 子猫は体を洗うのをやめて、母猫の前で座りました。


『みんな模様は違うんだよ。でもみんな繋がってる。家族なんだ。だから大丈夫だよ。誰に何を言われたって、お前はあたしの大事な子供さ』


 母猫は最後に、にんまりと笑いました。







 子猫は、茶色い毛並みの少し不細工な猫です。

 子猫の兄は、白い綺麗な毛並みの小さな猫です。

 子猫の姉は、お腹に茶色の斑点がある目付きの悪い猫です。

 子猫の弟は、白い毛並みの運動音痴な猫です。


 子猫の兄弟はみんな白いです。

 だけど子猫はそんな事気にしなくなりました。

 体を洗うこともなくなりました。


 子猫は一度伸びをして、赤い橋の上を歩きます。

 その向こうでは、兄弟の毛の色に似た白い雲が、魚の形を作って空を泳いでいました。


 これは家族と見た目が違っても、それが嬉しく思う子猫のお話です。



END

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