⑭ いろなみだ






 俺は病気で歩く事ができません。

 喋ることができません。

 笑うことができません。

 色んなことができません。


 そんな俺に友達ができました。

 喋る猫でした。


 彼女は俺に色んな事を教えてくれました。

 ある時猫が言いました。


「喋ることができないのなら、字を書けばいいわ」


 俺は猫に字を教わりました。

 またある時に猫が言いました。


「黒だけじゃなくて、色んな色を使えばいいわ」


 俺は猫に色を教わりました。

 そしてまた猫が言いました。


「泣きたい時は泣けばいいわ」


 俺は何も教わりませんでした。

 猫も何も教えてくれませんでした。


 それからいくつか日が過ぎ、太陽を何回も見ました。

 月を、星を眺めました。


 猫は来ませんでした。


 ある時鳥が来ました。青い綺麗な鳥でした。



「もう猫は来ないよ。死んじゃったからね」



 鳥はそれだけ言うと、飛び去っていきました。


 俺はクレヨンを手に取りました。

 壁に絵を描きました。猫に届くように描きました。

 壁が絵でいっぱいになりました。

 今度は窓に絵を描きました。


 星の絵、雪だるまの絵、プレゼントの絵


 猫に届くように描きました。

 頬に何かが流れました。

 温かかったです。でも猫に教わってないのでわかりません。

 もう一度会えるなら、この水の正体を教えて欲しいです。



END

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