第5話困難な依頼


「さっさと捨てちゃいましょうよ、こんな鎧」

「そうですね、リモネの言う通りです」


 リモネとミナはそう言ってフリルが装備している鎧。すなわち俺の処分を訴える。

 フリルは困惑顔で返した。


「で、でも、この鎧。わたしの力を全力以上に引き出してくれるんだよ?」

「それは凄い鎧ですね~」


 フリルの抗弁にアラリスは揶揄するように言う。信じられていないのか。


「だから、わたしはもうちょっと、この鎧を装備していたい、かな」


 そう言ってフリルの手が胸を覆っている胸甲に触れた。その胸甲を介してフリルの童顔の割には大きな胸の感触が伝わってくる。

 ああ、こんなエロいこと考えてるから捨てられるって話になっているんだな……。


「ですが、フリル。その鎧は何かよからぬ感じです」


 ミナはなおもそう言い、俺を捨てるように言うが、俺としてもこんな異世界にきていきなり捨てられるなんて勘弁極まる。


「とにかく脱いで……」

「い、いやっ!」


 リモネが俺に手を触れようとした途端、フリルの声。直後、俺=鎧が白銀の色から紅の色に変色した。


「よ、鎧の色が……!?」

「変わった!?」


 これに一同は驚きに包まれる。鎧の色が変わるなど普通はありえないだろう。

 鎧である俺自身もよく分からない。


「やっぱりこの鎧はただの鎧じゃないんだよ、わたしの力を引き出してくれる!」


 フリルはそう強く言う。それを聞いてミナは考え込む。


「それじゃあ、フリル。これから一つの依頼を受けて貰うわ。それをクリアできたらその鎧でもなんでも着なさい」

「うん! それならいいよ。どんな依頼なのかな?」


 ミナの言葉にフリルは笑顔で頷く。


「峠に大型魔物のベヒーモス・スタインが居座っているの。これを退治すれば認めるわ」

「えっ……」


 ところがフリルは内容を聞いた途端、絶句してしまう。なんだ。ベヒーモス・スタインって。


「おい、ミナ。フリルを殺す気か?」

「それはちょっと無謀なんじゃない?」


 リモネとアラリスも抗議するが、ミナの意見は変わらないようだった。

 フリルも気を取り直して頷く。


「分かった。ベヒーモス・スタイン狩り。やり遂げてみせるよ」


 よく分からないが、なにやら困難なことのようだ。それなら俺も鎧として最大限の協力をしなければ、と思うのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る