第4話廃棄されるピンチ!?

 フリルたち一行は町に戻るようだった。

 自然豊かな木々が立ち並ぶ整備されていない道を歩いていく様子をフリルの鎧となっている俺は見渡す。

 どう見ても現代日本ではない。そりゃあ、今の日本だって山奥に行けばこういう場所はあるのかもしれないが、そういうものとは根本的に空気が異なるという確信があった。

 ん? 空気? 俺、今、鎧なのに嗅覚もあるのか?

 まぁ、細かいことは気にしないでいいか。

 そう思ってフリルたちは町に到着する。周囲を防壁で囲まれた町だ。こんな町は現代日本にはあるはずがない。

 門番のいる門を通り中に入るとフリルたちはある建物に入った。


「えへへ~、ただいま~」


 フリルののん気な声が響く。リモネとアラリスも続いて建物の中に入るとカウンターのようになっている所に行き、受付嬢らしき女性と話を始めた。


「ご依頼の案件、片付きました。これが証拠です」


 リモネが冷静に言い、魔物の魂魄玉を差し出す。

 受け取った受付嬢はそれを確認し「偽りはないようですね」と言って頷いた。


「当然です。我々はこのギルド、『清廉なる鏡』の誇り高きメンバーですから」

「まだD級だけどね!」


 リモネがキリっとして言い放った言葉にアラリスとやらが茶々を入れる。

 リモネはムッとした顔になったが、事実だからなのだろうか。反論はしなかった。


「まぁまぁ、リモネ。これから成果を上げてランクを上げていけばいいんだし」


 そこにフリルが声をかける。言っていることはその通りだ。俺もサラリーマン時代は成果を上げることでしか出世の道はなかった。

 そんなやり取りをしていると、


「あら。フリルたち、今帰りですか」


 新しい声。フリル、リモネ、アラリスが一斉に振り向く。そこにはさらに一人の少女。

 長い黒髪をポニーテールにしている。髪の色だけなら日本人と言い張れそうだが、その顔たちは綺麗に整っており、美少女だ。


「?」


 だが、その黒髪少女はフリルを見ると怪訝な顔をする。


「フリル。その鎧はどこで?」

「ダンジョンで拾った鎧だよ。ミナちゃん」

「…………」


 黒髪少女、ミナとやらは鎧。つまり、俺をジッと見つめる。

 鎧の身になっていてなんだが、こんな美少女に見つめられるというのは恥ずかしいものがあるな。


「フリル。その鎧。すぐ脱ぐべきです」

「え!?」


 いきなりの提案にフリルが驚きの声を上げる。


「その鎧は呪われています。それに何かイヤらしい感じも受けます。装備していてあまり得はないと思います」

「そ、そんなこと言われても……」


 俺=鎧はギクリ、とした。

 鎧には実は意思が宿っていて、今もフリルの胸やら股間の感触を感じ続けているのは言い訳のできない事実だ。


「わたしもこの鎧はどうかと思うんだけど……」


 ミナの言葉に続いてリモネもそう言って俺を見る。アラリスも怪訝そうだ。


「そうだよねー、なんか怪しいよね」

「捨てちゃった方がいいんじゃない?」

「わたしもそう思います」


 リモネとミナがとんでもないことを言う。

 冗談じゃない!

 捨てられたら、俺はどうすればいいというのだ。

 鎧になってこんなよく分からないところに飛ばされて、早速、訪れたピンチであるが、鎧である俺には何も抵抗することはできないのであった。

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