コワイ!!(3)

(柊に事情を聞いた翌週月曜の朝、会社で)

樹「菱木さん、ちょっと話があるんだけど……こっちに座ってくれる?(自室のソファへ呼ぶ)」

菱木「はい……どのようなご相談でしょう?」

樹「(コソコソ)……君と同じ秘書課の平井さん、知ってるよね?

 実は、彼女の恋の手助けをしてあげて欲しいんだが……」

菱木「は?」

樹「いや……実は彼女、総務課の桜田さんに恋をしてるらしくて。まあ女の子同士ではあるんだけど……うまく纏めてやれたら、と思ってね」

菱木「あら。お相手は、三崎さんのことを何気にロックオンしてる桜田さんですか?

 彼女たちがうまくまとまれば、三崎さんを守れる……そういうことですね?(くすくす)」

樹「(ちょっと照れたようにむすっと)いつも鋭いね、君は」

さくら「承知いたしました。やれることはやってみようと思います。副社長のご依頼ですので。

 ただ、私も平井さんちょっと苦手なんですけどねえ……(微妙に苦い顔)」

樹「そうか、それは有り難いよ! ぜひ頼む!

 それから、いま話したことは全て、絶対に誰にも口外しないで欲しいんだ」

さくら「(明るく微笑む)もちろんです」



(その日の昼、休憩室で)

さくら「(平井のテーブルの向かいに座る)平井さん、ここ、いいかしら?」

平井「あ、菱木先輩。ええどうぞ。……でも、どうしたんですか? いつも近くに座ったりしないのに」

さくら「……あ、いえ大した用はないのよ。

 でも、たまには可愛い後輩と仕事以外のおしゃべりなんかも楽しいなー、なんてね」

平井「……(ニッコリ微笑む)そうですか。

 実は私も、ずっと菱木先輩とちゃんとお話ししたいなって思ってたんです」

さくら「え、そうなの?」

平井「はい。

 だって、いつも不思議に思ってたので。先輩ってすっごい美人だし、中身も完璧なのに、どうして彼氏いないのかなーって。

 こうしておしゃべりでもできれば、理由わかるんじゃないかと思うんですよねー。……そうならないための参考に」

さくら「……今、なんて?」

平井「……あれ、先輩いませんよね? 彼氏」


さくら「…………

 そういうこと言ってる間は、あなたも恋なんか無理よ」

平井「え? そうでしょうか?」

さくら「ええ。……とりあえず、今狙ってる相手は諦めたほうがいいわ(美しく微笑む)」

平井「……よくわかりませんけど。私、狙い定めたら絶対落とすんで、ご心配なく(美しく微笑み返す)」



(午後イチ)

さくら「(副社長室をノック)失礼します」

樹「どうぞ……(入ってきたさくらの形相に怯える)……っ、菱木さん……? どっどうしたの、なんかあった??」

さくら「今朝の平井さんの件、申し訳ありませんがお断りいたします。

 いくら副社長と三崎さんのためでも、あの小娘のために動くとか間違ってもないですから。……っていうか、変な女に絶対落ちない方法を、これから桜田さんにみっちりレクチャーしてきますので(猛烈な勢いで部屋を出て行く)」


樹「……なんかめちゃくちゃ怒ってる……

 ……この前柊くんが言ってた、『ヘンな守り方はしないでくれ』っていうのは、これのことか……」


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