コワイ!!

柊「樹さん……秘書課の平井さんって、どういう人ですか?」

樹「ん、秘書課の平井優花さんって言ったら、美人で有名な子じゃないか。仕事はできるし綺麗だし、なんか気の強そうなとこも人気みたいだな。いつもどこかで噂されてる、的な。

 で、平井さんがどうしたの、柊くん?」

柊「いや……

 なんだか最近、ちょいちょい彼女の視線を感じる気がして……」

樹「…………」

柊「遠くからじっと見つめられてる、というか、なんかつけられてる?と思う時もあったりして……そんなモテる人がまさか、気のせいですかね」

樹「…………んーさすがに気のせいだろそれはきっと」

柊「そうですよね! よかった、ちょっとホッとしました」

樹「それは良かったな、ははっ!……

『……いや、少しも良くないぞこれは。狙った獲物は落とすタイプだあの子は……うーーーん困ったなコレ……』」



(翌日の昼、休憩室で)

柊「あーー、肩凝った……

(背後から冷たいものを頬に押し当てられる)おわっっ!!?」

総務課の桜田「(肩越しにひょいと顔を出す)お疲れ様です、三崎さん♪ はい、これどうぞ!」

柊「えっ……しかもこれ、俺の好きな缶コーヒー……あ、ありがと」

桜田「三崎さんのこと、少しは知ってるんですよー。えへへっ♪

(柊の向かい側に座る)……仕事、忙しいみたいですね」

柊「んー。だんだん難しい仕事も任せてもらえるようになってきた、ってことかな。その分緊張するし、疲れるけど……でもやり甲斐はあるよ」

桜田「そんな話聞くと、かっこいいなあーって思います。なんか、また少し男上がっちゃった感じですね♪」

柊「(ちょっと照れる)ってか、そういうお世辞困るって」

桜田「お世辞なんか言いませんよ私。そういうタイプじゃないんで。

 でもその分、思ったことはきっちり言わせてもらいます。うふふ♪」

柊「……(一層照れる)」

桜田「あ、私あんまり時間ないんで。じゃ行きますね!」

柊「あ……コーヒー、サンキュ」

桜田「(振り返って嬉しそうに微笑む)これ、一つ貸しですよっ♪♪」

柊「……困ったな」


(コーヒーのタブを開けようとすると、目の前のテーブルにいきなりばんっと乱暴に手が突かれる)

柊「(ギョッとして顔を上げると、すごい美人が目の前に)……ひっ、平井……さん??」

平井「(にこっと微笑む)三崎くん、こんにちは」

柊「あっ、あの……なんのご用件でしょう……」

平井「(ますます美しく微笑み)突然で悪いんだけど。あの子とあなた、どういうご関係?」

柊「え? 関係も何も……時々話す同僚程度の……」

平井「嘘じゃないでしょうね?」

柊「なんで嘘つくんですか……ここで嘘言ってもなんのメリットもないじゃないですか」

平井「そう、じゃよかった。

 それなら、あの桜田遥とは金輪際二度と話をしないでくれる?」

柊「……(怯えつつキッと睨み返す)なっ、なんであなたが俺にそんなことを……」

平井「んー、それはね。すごく言いにくいんだけど……

(顔をぐっと寄せ、ギラッと微笑みつつ囁く)あの子は、私のだから」


柊「…………は……!?」


平井「あの子は、私がこれからじわじわ落とす予定なの。

 あなた、最近彼女にちょいちょい馴れ馴れしくしてるようだから。そろそろ黙って身を引いてほしいワケよ」

柊「ち、ちょっ待ってください、身を引くも何も……さっきも見てましたよね? 俺は一方的に懐かれて……っ」

平井「男が細かいこと言わないで。とにかく、今度彼女に近づいたら……後悔するわよ、あなた。

 ってことで。今の話、私達だけのヒミツよ三崎くん♪ じゃあね♪♪(美しく微笑み颯爽と立ち去る)」


柊「…………(唖然として見送る)

 ……平井さん、そっちなのか……」



(その夜)

樹「(心配そうに)柊くん……昨日、平井さんのこと僕に話してくれただろ? 今日は会社で何事もなかった?」

柊「げほぉっっっ!!(味噌汁に激しくむせる)……あっ、はっはいそれはもちろん何事も……っ……ゲホゴホっ!」


樹「……

『これ絶対何かあっただろ……僕の柊に一体何しやがった平井優花……っ!!』」


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