(三)-14

 俺は気づくと右手を彼女の胸をわしづかみにしていた。

 俺たちは顔を離した。二人の口と口の間に絡み合った粘液が糸を引き、重力に引かれて下向きのアーチを架けていた。

 同時に彼女の頬には、目から一筋の水滴が数滴づつキラキラと伝っていた。

「ここじゃダメだよ」

 彼女はそうそう言うと、立ち上がった。俺は彼女の動きを目で追った。

 木坂は拝殿の引き戸を引いた。鍵はかかっていなかった。

 「来て」とそう言うと、木坂は中に入った。

 俺はそれに続いた。そして引き戸を閉めた。


(続く)

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