(三)-15

 暗い中で彼女は浴衣の肩をはだけて、床に仰向けに寝そべった。俺も彼女の上に覆い被さるようにして、彼女の唇を吸った。

 その後は無我夢中だった。脳がしびれるような快感に、何も考えることができなかった。

 そうして静かで暗い境内で、俺は初めてを経験した。後にも先にもない特別な出来事だった。

 その後、俺たちは手をつないで歩いて帰った。お互い何も話さなかった。いや、話せなかった。そして地元の駅のそばで俺たちは別れた。

「じゃあ、また新学期に」

 俺はそう言って、別れた。

 彼女は一瞬考えて、「うん」とだけ返事をくれた。


(続く)

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