(三)-6

 そして木坂は陳列されている中から、一つの指輪を手に取って「これにする」と言った。

 そのデザインは、リングの上のところにハトのマークがあしらわれていた。デザインとしては、リングにあしらうにはものすごくダサイ気がした。

「そんなのでいいの? もっとカワイイ方がいいんじゃない」

 俺はそう言ったが、木坂は「いいの」とだけ返事し、なり損ねたミュージシャンみたいな人に向かって「これ下さい」と言った。

 彼女は本当にあんなダサイので良かったのだろうか。俺はなんとなく納得できなかった。


(続く)

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