恋する少年のつぶやき
霞上千蔭
第1話
「大丈夫。私は君を信じてるよ。」
自信のなかった僕にそう声をかけてくれた部活の先輩。
先輩は誰もをまっすぐに見てくれる明るくて優しいひと。
僕たち後輩はみんな先輩のことが大好きだった。
でも、そんな先輩が僕は心配だった。
いつも笑顔を絶やさなかった先輩が、最近よく泣いている。
誰かにつられて泣くこともあれば、なんの前触れもなく目に涙が溜まっていくのを慌てて隠し、洟をすすっていたところも見た。
先輩は、もう限界なのではないだろうか。
もう心が壊れそうになっているのではないだろうか。
その考えが頭を過ったとき、僕は震えた。
先輩の心からの笑顔を失わせたくはなかった。
けど僕にはなにもできない。
ただの後輩である僕には。
僕は自分の無力さを恨んだ。
僕が彼女の同級生だったら。
僕が彼女の先輩だったら。
なにか変わっていただろうか。
いや。
僕は首を振る。
そんなことを考えたって仕方ない。
僕は先輩のその小さな背中を探した。
見つけたその背中は、いつもと違い少し丸まっていた。
「先輩」
僕は声をかけた。
僕があげられる一番の言葉を、あなたに伝えるために。
恋する少年のつぶやき 霞上千蔭 @chikage_
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます