恋する少年のつぶやき

霞上千蔭

第1話

「大丈夫。私は君を信じてるよ。」


自信のなかった僕にそう声をかけてくれた部活の先輩。

先輩は誰もをまっすぐに見てくれる明るくて優しいひと。

僕たち後輩はみんな先輩のことが大好きだった。


でも、そんな先輩が僕は心配だった。

いつも笑顔を絶やさなかった先輩が、最近よく泣いている。

誰かにつられて泣くこともあれば、なんの前触れもなく目に涙が溜まっていくのを慌てて隠し、洟をすすっていたところも見た。


先輩は、もう限界なのではないだろうか。

もう心が壊れそうになっているのではないだろうか。


その考えが頭を過ったとき、僕は震えた。

先輩の心からの笑顔を失わせたくはなかった。


けど僕にはなにもできない。

ただの後輩である僕には。

僕は自分の無力さを恨んだ。


僕が彼女の同級生だったら。


僕が彼女の先輩だったら。


なにか変わっていただろうか。

いや。

僕は首を振る。

そんなことを考えたって仕方ない。



僕は先輩のその小さな背中を探した。

見つけたその背中は、いつもと違い少し丸まっていた。


「先輩」


僕は声をかけた。

僕があげられる一番の言葉を、あなたに伝えるために。

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恋する少年のつぶやき 霞上千蔭 @chikage_

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