飛影はそんなこと言わない
川谷パルテノン
残像
「今日、新人が入ってまして」
「そうなの どんな子?」
「きっと気にいると思いますよ」
「へえ、じゃあ呼んでもらおうかな」
「はじめまして」
可愛かった。店長わかってると思った。
「邪王炎殺黒龍波と申します」
(ヒグラシの鳴き声のSE)
「どういうセンス」
「サイトウさんって社長さんなんですよね。マネージャーから聞きました」
「ちがうちがう聞いてるの どうなんその源氏名」
「あ これ? 本名です」
「とても嘘やん とっても嘘 え? 幽白好きなの?」
「ユーハク?」
「いや、幽白しらんで邪王炎殺黒龍波なの? 天才やん」
「だって本名だから」
「そういうツカミ? え、そんな芸能人みたいなツラして え、もしかして残像?」
「何飲みます?」
「入ってこんて 入ってこんよ 邪王炎殺黒龍波って 何?」
「本名です」
「頑固なん? 老舗のラーメン屋? じゃあさ本名なんなの? 本当の本名 まさか飛影だったりして え 裏浦島とかいうなよ」
「邪王炎殺黒龍波」
「今出たね こう黒っぽい紫の 出たね 頑な ハシビロコウ? まあいいやじゃあ邪王ちゃんさあ」
「炎殺って呼んでほしいな」
「そこなん? そこ? せめて黒龍波じゃないの? それもわかんないけど ほな炎殺ちゃんって趣味とかあんの?」
「うーんスキューバーとかやるかな」
「スキューバー? 邪王炎殺黒龍波なのに? いや別に関係ないか へえ海とか好きなんだ」
「山のが好きかな」
「なんやってんマヂで スキューバー 邪王炎殺黒龍波 なんやねん 残像?」
「サイトウさんは? なんか趣味あるんです?」
「俺はまあ仕事が趣味みたいなもんかな」
「へえ 素敵 仕事ができる人炎殺好き」
「へんな日本語! 仕方ないけど 仕方なくはないか わからんて 炎殺って響きでぜんぶ飛ぶ」
「炎殺、お願いがあるんだけど」
「なんやねん また高い酒あけろとかそんなんやろ しょうもない おもろいの名前だけかい」
「ちがうって 聞いて聞いて 炎殺ね おでこに目があるの」
「飛影やん 邪眼やん おでこに目があるわけないやろ なんのお願いやねん お願いってなんやねん」
「でね」
「聞けや」
「でね」
「おぉん 言えもう最後まで」
「邪眼がね」
「ん 邪眼言うたやん 幽白しってるやん ずっと嘘つくな自分」
「邪眼は胸キュンした時に開くの」
「胸キュンなんか古いなあ 古典? 魏志倭人伝?」
「サイトウさんにときめかせてほしいな」
「なんそれ ちょっとおもろなってきたやん せやな 自分幽白好きやんな」
「ユーハク?」
「もうええて じゃあ浦飯の真似するわな 実は原作では使われてないらしいねんけど いくで 伊達にあの世はみてねえぜ!
開かへんのかい! 開かへんのかい!」
「炎殺わかんないもんユーハク」
「わかっている人の結びつけかたなのよ浦飯としか言ってないのに浦飯に幽白を見るのは」
「サイトウさん 炎殺初出勤なのに優しくしてくれてありがとね」
「やかましわ 邪眼開かんくせに 邪眼開かんてなんやねん」
「また指名してくれる?」
「するに決まってるやろ」
飛影はそんなこと言わない 川谷パルテノン @pefnk
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