第8話 VS社長

「ぐっ……ぐぁ」


 社長秘書の避暑崎ひしょざきさんが後ろ向きに倒れた。

 

 勝った。そう考える間もなく、僕も膝をついて、息を大きくはいた。

 僕の残りHPは1。危うく負けるところだった。


 バトルフィールドが消え、視界が応接間に戻った。


 僕は避暑崎ひしょざきさんの握りしめたカードを拾い上げ、応接間を出た。


 僕の手持ちカードはすでに22枚になっていた。

 受付ヒューマノイドを倒し、平社員と課長と部長と専務を倒し、ようやく社長秘書を倒したと思ったら、「くっくっく、しかし奴は社長秘書の中でも最弱……」ともうひとり社長秘書が出てきた。


 結局社長秘書を4人す羽目になった。4人も秘書がいるなんて、欲張りな社長だ。


 そんなことを考えながら、僕は茶色いどっしりとした木製のドアの前に立っていた。


 しまった、社長室に入るときのマナーなんて知らない。先輩芸人の楽屋に入るときみたいにコンコン扉をノックすると、扉が自動でぎぎぎと開いた。


「待っていたよ」


 高級そうなスーツを着たガタイのいい男が、ひじかけ椅子に座っていた。

 これが世界富豪ランキング1位の男の風格か。僕は身構ええる。


「あなたが社長ですか」


「ああ、そうだ」


 ぐるりと世界が回転して、バトルフィールドが展開される。


「カードバトルといこうじゃないか」







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