第7話 僕のターン

 ようやく僕はヒューマノイドからゲームのルールを聞き出すことができた。

 

 このゲームには2つの要素がある。


 まずはカード。お互い5枚のカードを持ち、敵の持っているカードの内容を推理して言い当てたら、そのターンは攻撃を食らわないで済む。


 相手にこちらのカードを言い当てられたら、そのカードは手札に戻さなければならない。


 次に、「インフォメーション・ストーン」。通称「ストーン」。黄色い石のことだ。

 自分のターンの時に最大5つまでストーンをカードに賭けることができ、例えば5個ストーンを賭けたら、そのカードの攻撃力は5になる。


 敵がカードの内容を言い当てられなかったら、相手のHPをストーンの数だけ削ることができる。代わりに、賭けたストーンの数だけ、こちらは相手にカードの情報を開示しなければならない。

 カードを強くすればするほど、カードの内容がバレるリスクも高まるということだ。


 しかし、このルールでは僕にとって不利だ。敵はあの「テンプレート社」。情報戦では確実に負ける。

 だから、挑戦者側には2つのハンデがある。


 1つ目は、敵のカードの「@」以降が初めから開示されていること。たとえば、さっきは「@game」が最初から見えていた。ゲームについてのカードであることがわかる。

 2つ目は、敵に「YesまたはNoで答えられる質問」をする権利が僕側にだけあること。


 勝利条件は、自分のHPが0になる前に相手のHPを0にすることだ。


 もし勝利すれば、内容を言い当てたカードを敵からもらうことができ、次の敵に挑むときに手札が多くなって若干有利になる。

 敗北すれば、すぐに警備員がやってきて、僕はこのビルからつまみ出される。


「僕のターン」


 僕は震える声で言って、「31905@SNS」のカードを伏せて場に出した。とりあえず、ストーンを3個賭けてみる。


 ストーンを3個賭けたので、情報を3つ開示しなければならない。


 僕は3つの情報を提示した。


・これは僕が先週つぶやいたツイートだ。

・これは食べ物に関する内容だ。

・このツイートには2いいねしかつかなかった。


 ヒューマノイドは少し考える様子を見せた。


「ツイートということは、後半は@SNSですね。2いいねしかつかなかったということは、つまらない日常ツイートのはず。わかりました」


 ヒューマノイドが僕を見つめる。


「内容は442@SNS。ラーメンを食べに行ったというツイートですね」


 ブーと音がして、大きなたらいがヒューマノイドの頭の上に降ってきた。

 ヒューマノイドのHPが15から12に減った。


「いたいです」


 ヒューマノイドはちっとも痛くなさそうに頭をさすると、「次は私のターンです」と言った。





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