第6話 VSヒューマノイド

「こ、ここは!?」


 僕は驚いて周囲をきょろきょろした。

 僕の前に、さっきのヒューマノイドが立っていた。


「バトル空間です」


 ヒューマノイドが答えた。


「ここで私を倒すことができたら入館証をお渡ししましょう」


「入館できたとしてどうなるんだ?」


 僕が尋ねると、ヒューマノイドがほほ笑んだ気がした。


「『挑戦課』にお繋ぎします。入館後は『挑戦課』の末端社員にバトルを挑んでいただきます。それに勝つことができれば次は課長、部長と敵が強くなっていき、最後は社長に挑んでいただきます。社長に勝つことができれば、あなたの知りたい情報をなんでも開示いたします」


「とにかく、まずはあんたを倒せばいいんだな」


 僕はシャツの袖を肩までめくりあげた。

 腕っぷしには自信がないが、やるしかない。


「暴力は禁止されています」


 ヒューマノイドは冷たい目で言った。


「代わりに、こちらで用意したカードバトルに挑んでいただきます」


 僕の目の前に、5枚のカードと山盛りの石が30個現れた。

 ヒューマノイドの前にも5枚のカードと石が現れる。


「そちらのカードには、あなたが『言葉』で説明できるくらい詳しくご存じの記号が書かれています」


 僕の手元のカードの番号は「6@story」「12@ogiri」「2883@ogiri」「135@manzai」「31905@SNS」の5つだ。僕のカード番号は相手からは見えない。


 「6@story」は、この間ヤマグチさんがお客さんの前で暴露した竹取物語だ。

 「12@ogiri」、「2883@ogiri」はいずれも大喜利のネタ。どちらもちょっと下ネタっぽいネタ。

 「135@manzai」は漫才のセリフで、しんみりーずの「コンビニ強盗」のネタに出てくる。

 最後の「31905@SNS」は僕がこの間ツイートしたネタツイだ。渾身のツイートだったが全然伸びなかった。


 ヒューマノイドの頭の上に「15」と文字が表示され、彼女はいきなり喋り始めた。


「私のターン。ストーンを2つ賭けてカードを場に出します」


「ちょっと待て待て待て。カードバトルだって? どんなルールなんだ」


 ヒューマノイドは僕を無視して、手持ちのカードを1枚伏せて場に出し、上に黄色い石を2つのせた。


 カードは表面が下になっているので見えない。と思えば、じんわりと相手のカードの裏面に「?@game」の文字が浮き出した。


「ストーンを2つ賭けたので、このカードの情報を2つ開示します」


・これはシリーズ累計1億本以上売れた人気ゲームです。

・このゲームの第一作目が最初に発売されたのは1986年です。


「あなたはさらに、このカードについて『YesまたはNoで答えられる質問』をひとつすることができます。計3つの情報から、このカードの『番号と内容』を言い当ててください」


 わけがわからないが、やるしかない。


 相手は、カードの「番号と内容」を言い当てろと言った。カードの記号は「@game」。つまり、何かのゲームタイトル、もしくはゲームに出てくるキャラやセリフ、世界観などのありがちなテンプレートを指している。


 1986年といえば、歴史の教科書に載っているほどの大昔だ。その時代にゲーム機などあったのだろうか?


「1986年に売られていたゲーム機はなんだ?」


 僕はヒューマノイドに質問してみた。ヒューマノイドは首を振る。


「『YesまたはNoで答えられる質問』にしかお答えできません」


 僕は考えた。ここはヤマを張るしかない。


「そのゲームのハードはファミコンか?」


「はい」


 当たった。ファミコン時代からあり、シリーズもので、1億本以上売れたゲームとなると、かなり限られてくる。


「答えるときは『アンサー』と宣言してください」


 ヒューマノイドが僕の頭の中を見透かしたように言った。


「わかった。アンサー。そのカードは、『40@game』、赤い帽子の配管工が敵を倒していく横スクロールゲームだ!」


 ブーと音がして、僕の頭上に金属のたらいが降ってきた。

 今気づいたのだが、僕の頭の上にもヒューマノイドと同じ「15」のHPが表示されていた。


 たらいが当たって、僕のHPが「13」になった。


「いってぇ」


「残念、外れです。それでは、あなたのターンをどうぞ」


「ちょ、ちょっと待ってくれ。まだルールがよくわからないんだ。説明してくれないか」


 そう僕が懇願すると、「仕方がないですね」とヒューマノイドが言った。





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