一通目

僕が彼女と出会ったのは高校の入学式だった。

彼女は僕と同じクラスで出席番号が隣だった。

だから当然席は隣で流れとノリで仲良くなった。そしてある日突然、余命のことを聞いた。

「私さー、あと手紙10通やり取りしたら死ぬらしいんだよねー」と軽く話す彼女は悩みなんかないように見えて、余命を宣告された人間とは思えなかった。

「なんで、そんなに軽く話せるの?」

思わず聞いてしまった。

彼女はきょとんとした顔をしてそれから笑って言った。

「だって今どき手紙とか使わなくない?てことはそんなすぐには死なないじゃん?てゆーか今どき手紙書くときってどーいうときなのかな」

僕も思いつかなかった。

確かに手紙10通はそんなにすぐ死ぬような

余命ではないのかもしれない。

彼女を見ると、彼女はまだ考えているような難しい顔をしていた。

「あ!!ねぇねぇ朔くん!好きな子に愛の告白をするときって、手紙とかあり得るよね??」

「あー…そうだね。まぁ現実ではあんまり聞かないけどね。」

「とゆーことは!私がモテモテにモテてしまったら…手紙10通なんてすぐかもしれない…どーしよ!!」

「え、それ…は、冗談?それとも…もしかして本気と書いてマジ?」

「え、?今、私のこと馬鹿にしたの?ま、そんなこと言ってる君も私に惚れちゃったりして〜」

「そんなわけないだろ…俺はもっとおしとやかな子が好きだね。」

「えー、10通のうち1つ目は君からのラブレターかなーと思ってたのにー」

「それはあきらめて…。そんなに早く1通目を使わなくてもいいじゃないか」

「まぁそれもそうだね〜。」

「手紙を送りたい人はいないの?」

「私??まぁ、、いないっていったら嘘になっちゃうかなぁ」

「じゃあ出せばいいじゃないか。」

「えー?そんなにはやく私に死んでほしいってこと!?ひどい!」

笑いながら怒ってくる彼女の声を聴き流しながら僕は先ほどの彼女の言葉を考えていた。彼女が手紙を送りたい人。誰なのか気になってしまう。ただ彼女がそれより多くのことを話すのを躊躇っているように見えたので深くは聞かないことにした。

いつか教えてもらうことにしよう

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

拝啓、余命手紙10通の君へ 琥珀糖の欠片 @miffy1225

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ