#25 迷宮探査
足元に気をつけながら、ついでに周囲にも気をつけながら、洞窟の中を慎重に歩いていく。
洞窟の入口近くは、外の光もあったし換気もいいし人も出入りしていたようで足元も進みやすかった。
だが奥になるにつれて当然暗くなり、空気も淀んでジメジメしてきた。足元にも石や岩がゴロゴロしていて歩きにくい。
――ゲーム中の洞窟って、プレイヤーが歩きやすいように相当手入れしてあったんだなぁということがよく分かる。
とりあえず明かりだ。
俺はポケットからインクスを取り出してライト機能を作動させた。
――こういう機能があるのもスマホそっくりだ、インクス。
空気と歩きにくさについては我慢するしかない。転ばないよう気をつけて――そして、どこに
こんな歩きにくい所を、レンもスズちゃんも通ったんだ。転んでないかな、スズちゃん。
そう思っていると道の途中、少し開けた空間で、女の子が着けるような赤いリボンが落ちているのを見つけた。スズちゃんの物だろうか。回収しておく。
……この近くにスズちゃんはいないようだ。
しばらく進むと歩きやすい砂利の道へ出た。通路全体が少し開けたようにもなっている。
ゴブリンはこの辺りに住んているんだろうか。
――それにしても、ここに来るまでゴブリンとか魔物が1匹も出なかった。
先にレンが行っているせいか?
――もしかして俺、ゴブリンの術中にハマってないよな。ちょっと不安で怖くなる。
――恐怖を抑えながらしばらく歩くと、どこからかギャアギャアというわめき声が、小さくだけれど聞こえてきた。
……そんなに遠くはない。警戒を強めた。
息を潜めてしゃがみこんで、しっかりと耳を立て様子をうかがった。――すると分かる。
どうもこれは、戦っている様子のようだ。ギャアギャアわめくのは魔物――ゴブリンだろうか。すると相手は先に洞窟に入ったレンか。
時折、ゴブリンの絶叫が聞こえてくる。――レンが優勢ということでいいんだろうか。
けれど俺は警戒しながら、物音をさせないように、慎重に進む。
レンが、ゴブリンを『悪知恵の働く連中』と言っていたからだ。――伏兵がいてもおかしくはない。
あるいは逃げてくる奴がこっちに向かって来るかもしれない。――その時、腹いせに仕掛けてこられるのも嫌だ。
俺は護身用のショックガンをぎゅ、と握りしめた。
ショックガンというのは相手を痺れさせることだけを目的としている。威力は小さい。
その代わり放たれた魔力弾には若干、誘導性がある。
もしゴブリンに襲われたらコイツを当てればいい。
当てたら――その後どうするかはその時考えよう。
そうして慎重に足を進めていくと……
いた。レンとゴブリンたちが争っているのが見えた。状況的にレンが圧勝のようだ。ゴブリンの半数以上が倒されていた。
でもまだ油断はできない。実際にゴブリンの中には何かを考えているかのようにレンと間合いをとっている者もいる。
俺もいざという時に備え、そして周囲を伺いつつ、いつでもレンの援護に回れるようにショックガンを握りなおす。
――いた、背後からレンを襲おうとしている奴が。
「レン!」
俺は即座に、そいつに向かって銃を構え引き金を引いた。
レンが、他の連中を斬り伏せ終わり、奇襲をかけた奴に振り向きざまの一撃を見舞ったのと、俺の放った光弾がそいつに命中したのはほぼ同時だった。
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