#13 浮島・3
グイグイと寄ってくる女の子たちに耐えきれず、俺はその場を逃げ出した。
そして誰もいない薄暗い小路に
もちろん女の子に囲まれるのは嫌いじゃない。
だけど妙にアゲられるのは不安だし、何も意見させてもらえないのは不満だ。
――だから、逃げた。
(本当にそれだけ?)
――どこからか声が聞こえた気がした。
……いや、すぐに気づいた。
耳から音が入ってきたわけでも、脳に直接話しかけられたわけでもない。
……そして俺には彼女の正体が分かる。何故なら以前同じようなことがあったからだ。
「
(御名答、とか言っている状況じゃないわね。
せっかく慕ってくれている娘たちを、あなたは振った。
可愛そうじゃない)
「今のパティの中身は君じゃない、俺だ。
――俺はまだ君の記憶が大して蘇ってないし、君のように振る舞えない。
……あのまま居ても、パティの中身が君と違うと感づかれれば、彼女たちを失望させるし、良くて心配をかける。
……だから、逃げた」
(……はぁ。本音、吐いたわね)
なんか呆れるようにため息をつかれた。
(あなたバカ確定。そして臆病者)
「知ってるよ。君が生まれるずっと前から」
(せっかく私に生まれ変わっても、その知恵を使わず前世の自分の知識と判断力だけで決めちゃう癖がある。だからバカ)
「…………」
(黙っているってことは、自覚はあるのね。その分だけは救われてるわ)
……今、鼻で笑われた気がする。まあしょうがないか、彼女の言うことは今のところ当たっている。
(で、その了見の狭い判断で彼女たちから逃げた。
――彼女たち、あなたに失望する前に、悲しむかもしれないわよ。自分たちがあなたに不快な思いをさせたって。
気づいてるんでしょう?)
見透かされている。その通りで、ますます
――そんな俺にパティは優しく言った。
(……大体、あなたは優しすぎるのよ。自分に『語彙力』がないせいで彼女たちどころか、今まで優等生の人気者で通してきた
――優しい声で刺さることを言う。
『語彙力』が無くて会話が苦手というのは、前世の俺の悩みでもあった。
(そういうのは、この世界で上手くやっていた私に任せればいいのよ。自分だけで考えて解決しようとせずに、肩の力を抜いて、私に任せればいいの)
……任せる……か……それも苦手なんだよなあ。苦手だらけなんだよ、俺。
(もうちょっと他人を信頼しなさいっての、下手な気遣いとかしなくていいの。……ホントにもう、タマが小さいんだからコイツ。
……ああ、今はもうタマ無いんだっけ)
「下ネタに走るな!」
「何ですの、いきなり! 気持ち悪いですわね……!」
独りだと思っていた空間に、他に誰か居た!?
いやまあ俺は街中の小路いるわけで、閉鎖された場所じゃあないから誰かに見つかってもおかしくはないんだが。
――てか、こんな展開、最近あったぞ。
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