6-3

「すみませんねぇ、雛都がお世話になったみたいで」

「あ、いえいえ、そんな」

「宜しければ、お茶でもどうですかな」

「ごめん、俺たち、ちょっと急いでるんだ」

「そうですか……それでは、また別の機会に」

 俺たちは、雛都を彼女の家まで送り届けた。……そして目の前で笑うのは、とても人の良さそうな夫婦。……何をどうしたら、この人たちから雛都が生まれるのか。

 いや、それはともかく。

「……雛都ちゃん」

 そう言って夜は、雛都の前にしゃがみ込んだ。まるで怒られることを悟った子供ように肩を震わす雛都に対し、夜は苦笑いを浮かべながら言った。

「……逃げたって、思わなくていいよ。大丈夫。……僕たちが必ず、美月ちゃんを連れ戻すから。……そうしたら、また一緒に遊ぼうね」

「……」

 夜の言葉に、雛都はしばらく黙ってから……小さく、頷いた。それを見て、夜は笑って頷き返す。

 雛都とその両親に手を振り、頭を下げて、俺たちはその場から去った。

「……夜」

「ん?」

「お前は……どうする?」

 俺は立ち止まり、夜を見つめる。夜は俺を見つめ返すと、小さく笑って俺の頭に手を乗せた。

「うわっ!? ……何だよ」

「心配しなくても、僕も行くよ」

「そう……か……」

「蛍太を一人で行かせるわけにはいかないし……責任は、僕にあるから」

「……夜、お前のせいじゃ……」

「うん。……分かってるよ」

 夜はそう言って笑う。俺の頭から手を離すと、先を歩き始めた。

「行こう」

「……ああ」

 夜の車に乗り込み、俺は自席に置いていたものを手に持つ。振り返ったその先にいるのは。……俺たちが捕らえた“キグルミゾク”二人組。

 俺が構えたのは、水鉄砲。それをそいつらの目の前に突きつけて。

「おい、お前らのお仲間が、どこで美月を監禁しているか、心当たりは?」

 美月の持っていた書類によると、こいつらの弱点は、水らしい。“キグルミゾク”二人組の顔を、冷や汗がつたう。


 最終決戦が、始まろうとしていた。

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