人間の証明

 もう時効だろう。フェイクを入れつつ書く。


 まず、私は女性であることを、念の為おことわりしておく。


 車を運転して、書店の駐車場に入った。

 かつての恩師(男性)が、駐車場から歩いて店舗に入って行くのを見かけた。おそらくとっくに定年を迎えておられるだろう。私は、これはごあいさつせねばと、車を停めて店内に急いだ。

 きょろきょろしていると恩師は、……ええと、その、つまり…………のコーナーで立ち止まり……立ち読みを始めた。

 ……苦悩した末、声をかけられないまま店を立ち去ってしまった私は、恩知らずだろうか。

 ン年前の出来事だが、いまだに悩んでいる。


 どなたか私に「それでよかったんだよ」と言ってくださらないだろうか。後悔はしていないつもりだが、まだ葛藤している。

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