第9話 良いものあげる!

「これ!」

誰も女の子の声に返事をしてくれない。

母親たちは自分たちの話に夢中。幼稚園から帰って来た姉や兄達は、自分達の世界に没頭している。一人、お兄ちゃんのお迎えに来て居た女の子は、のけ者だ。

「お兄ちゃん!」

いくら声を掛けても誰も相手をしてくれない。一人寂しく座り込む。頭の上からは楽しそうな話し声。下を向いて居た女の子は、おもむろに鼻の穴に指をつ混んだ。指をゆっくりと引き出す。何と見事に大きな鼻くそが指について来た。自分でもビックリしたのだろう。母親に見せようと声をかける。が、母は答えてくれず、自分の方に顔さえも向けてくれなかった。兄にも見せようと腕を掴んで訴えるも無視される。


 見ていると、どうも捨てるのも勿体無いのか、女の子は考えているようであった 。急に明るい表情になる女の子。


「あげる〜!」

大切な宝物は少し大きな女の子に贈呈される事になった。

「うえ〜ん!」

どうも感極まった喜びの声があがり、儀式は終了となった。

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