第7話 食べちゃうぞ〜!

「お母さん。赤いトマトが無い!」

娘の悲しい声を聞いた母親が厳しい顔をして二つ上の兄を叱る。

「オクは知らないよ。きっとあのネコさんだよ。もしかしたら、ネズミさんかも知れないよ」

何ともはや、この嘘つきがと思う母親ではあったが、取ったらダメよと強く言って終わった。

「お兄ちゃん。トマト、守ってちょうだい!」

「うん、オクが守ってあげるよ」


それから、赤くなったミニトマトは妹の口に入る前に無くなっていくのだった。

「やっぱりネコさんかな〜ぁ?それともネズミさんかな?また、トマトが無くなった」

「オクが守ってあげるからね。お水もチャントあげないと」


 ミニトマトは水をチャントもらい、実を赤く色付かせてゆく。妹は一つも食べれないままに過ごして居た。母親は頭の黒いネズミの存在には気付いていたが、ダメと、強く言うだけだった。


「お兄ちゃん。最後の一つ。あのトマトだけは守ってね」

「うん。守ってあげるよ」


「行って来ま〜す!」

「お兄ちゃん。行ってらっしゃい」


「うえ〜ん!お兄ちゃんが〜」

バチ!バチ!バチ!

早く歩きなさいと、母親に怒られながら前を歩く兄と手を引かれ歩く妹。

兄はお尻がたいそう痛いらしくフラフラしながら歩く。うなだれて歩く姿は囚人のようだった。幼稚園に行く道すがら、後ろをこそっと見るが、母親の顔を見るとただ何も言えず歩いて居た。

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