第28話 女子会

 土曜日雨の日、いつもの店で。蛍と詩乃と渚は三人で話すときに使うチェーン店にて甘いものを飲みながら談笑している。本当は今日の蛍は理人と過ごす時間にするつもりだったが、彼は繁と遊びに行くということで彼女は二人と急遽約束を取り付けたのだ。渚は机に肘を置きながらじとりと蛍を見据えて薄く笑みを浮かべる。

「有賀も蛍とイチャイチャしたらよかったのに。アイツも空気読んだらいいのにさ」

 アイツというのは繁の事だろう。不満を噴出する渚を詩乃がなだめる。

「白井くんも有賀くんと遊びたいでしょ。そりゃ蛍からするとイチャイチャしたかったと思うけど」

 二人の考えはまあまあ似ているらしい。その様子に蛍は苦笑いする。


「今日くらいは仕方ないかなあって。遊んでる場所は分かってるし、いざという時はそこに突入していけるし」

「強気だねえ」

 蛍としても理人と居たかったが、それでも男友達とワイワイする時間は必要だろうと変に達観した考えを蛍は持っていた。夜には電話で話せるだろうし。

「それで、最近は何か有賀とあった?」

「えー? 大体毎日通話はしてるけどそれくらいだな」

 どうせ四月位からは電話でしか会えない相手になるのだ。今から予行練習をしてもいいだろう、と考えた蛍によって始まった習慣だ。理人は時にゲームをしながら、時にベッドへ寝転がりながら蛍と楽しく話す。

「いいな」

 詩乃がこくりと頷く。

「詩乃は彼氏とかどうなの?」


 渚はそこに踏み込むように質問した。詩乃はごまかすように手をパタパタと横に振る。

「欲しくないわけじゃないけど、私はそういうのは全然だよ」

 確かに彼女はあまり恋愛的に人気がある女子ではない。しかしそれは、単純にクラスであまり目立たないからであり十分モテる要素はあると蛍は思っていた。そう考える蛍も渚もそれを必死に否定する。

「詩乃は絶対モテると思う!」

「そうだと思う」

「ホントに?」

 詩乃はまんざらでもない感じだ。彼女に男の影がないことはやはり大人しい性格によるものだろう。こういう大人しい性格が好みの男もいるだろうが、それでもまずは男子の目に留まる必要がある。詩乃自身が積極的にアプローチをかけるような人物には見えないし……。


「渚は?」

 対称に渚は男の影がありまくるように見える。男友達は居るみたいだし、男女関係なくフランクに接する。直接彼氏がいる……みたいな話を聞いたことは無いが、居ても不思議ではない。

 「私は居ないよ、今はいいかなあ」

 「"今"は?」

 言葉にひっかかりを覚えて聞き返す。


 「中学の時は彼氏もいたけど……取り敢えずいいかなって思う」

 そんなことを聞くと何か嫌な思い出でもあったのだろうか、と勘ぐってしまう。でも渚に彼氏が居たことはやはり不思議なことでは無いな。

 「ちなみに何人くらいと付き合ったことあるの?」

 詩乃が何かを察したように渚に問うと彼女は小さく「3回」と言った。

 「3人!?」

 という事は、中学校3年間のうち一年に一回は彼氏がいたことになる計算だ。蛍は自分の恋愛遍歴を思い出す。短期間で別れた相手ではあったが、あれが3回も続くのはなかなか考えづらい。皆それぞれ色んな考え方で恋愛してるんだな、と何となしに感心してしまう。

 ふと外に目がいった。強い雨は窓からしっかり降っていると認識出来るほどだ。今帰ったら間違いなくずぶ濡れだろう。それは嫌だな、と思い蛍はストローに口をつける。

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