第23話 瀬良蛍

 俗に言われているスクールカースト――一軍、二軍、三軍なんてものが存在するならばきっと彼は決して一軍では無いのだろう。蛍自身が一軍かと聞かれればそうでも無いと思うが、彼女は幼少の頃から友達作りに長けていた。人の心を何となく察するのが上手く、それが自分の能力とも思わず純新無垢な心で相手に対応する、それに明るく見える性格が相まって友達は多かった。


 中学校の時、流石にやばいと感じて勉強に専念することを決意。最初は友達の誘いにフラフラと乗っかっていたが、段々焦りとともに自制心が湧き始めて何とか成績の向上に成功する。そして県内の中では特別賢い訳では無いが、悪くもない、もし近所のおばちゃんに出身校を聞かれると「蛍ちゃんって頭いいんだね」と言われるくらいの高校には進学することが出来た。


 高校でも彼女は遺憾無くそのコミュニケーション能力を自分の武器として振り回した。そして一学期が過ぎた頃、理人と席で隣になった。

 一見すると彼は暗そうな性格で自分とは正反対に見えた。これまであまり関わってきたことの無い人だったので取り敢えず話せるくらいには仲良くなろうと試みるが、どうも手応えがない。これがウマが合わないってやつか。そう思って一度彼と距離を置いてみた。


 すると、意外にも彼は友達がいることが分かった……なんて言ったら失礼だが確かに彼には話しかけてくる友達も、話に行く友達もそこそこ居たのだ。そして彼らと話す時の理人は楽しそうに話すし笑う。砕けた言い方をするとギャップ萌えってやつだろうか。

 蛍は彼と話すための友達ではなく、心から仲良くなりたいと思った。

 それは蛍が理人に惹かれていることを感じる少し前の話だ。


 今現在。蛍はベッドで寝転がりながら何となく彼のことを考えていた。詩乃のただ揶揄う目的で言った『理人が蛍に告白しようとした』という言葉が忘れられない。いつまでも片想い、というのは蛍にはかなり堪えがたい状況で、脱したい盤面でもある。ただ脳の奥底にある形容できない不安な思いがぐるぐると彼女の思考を苛む。

 「〜〜〜〜〜!!!!」

 言葉にできない叫びを出して少しストレスを発散した蛍は考える。やはり、告白は自分からすべき事柄だろう。理人が告白なんて、そんな状況が想像できない。そもそも自分の片想いっていう可能性の方が遥かに高いのに。


 もう、テストも終わったし学校の雰囲気もけだるげな雰囲気がずっと流れている。この雰囲気は二年生になるまで変わることはないだろう。そんな、学校の行事もあらかた終わってゆっくりと時間が流れる今この時に蛍はけりをつけたいな、と思う。

 思考にひと段落ついたところでスマホを見る。理人からLINEの通知が来ていた。

『今度の週末って空いてる?』

「あ」

 前映画の話になった時も確か先に切り出したのは自分だったはず、というのを思い出す。ということは彼からの初めてのお誘いってことだろうか。


 さっき私は何を考えていた?


『やはり、告白は自分からすべき事柄だろう』

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