第17話 テストだ
高校生になって以来テストの教科数には些か疑問を持っている。中学での九科目テストですら多いと思っていたのに、それより科目数が増えると本当にキャパが足りない。休み時間は繁に勉強を教えたり、放課後は蛍に勉強を教えたりして過ごした理人の一年生最後のテスト期間はあっという間に過ぎていった。
「理人ってホント凄いよな」
繁はため息をつきながら自分の点数を想像する。理人も、教えてない教科まで面倒見る義理はないしそこは自己責任だ。
「何が?」
「どうせ今回も瀬良と俺の勉強見ながら普通にいい点数取るんだろ?」
「いや、テスト自体はそんなに難しくはないし行ける」
理人は本心からそう言う。勉強を教えるということは自分が教える範囲のことを理解していなければいけない。模範解答を読み上げるだけなら誰でもできるし、それは教えているとは言わないからだ。やはりそれを如何にかみ砕いて相手に伝えることが出来るか。一番大事なのはそこで、理人が繁と蛍相手に教えられているなら理人はテスト勉強の一助になっている。だから誰かに教えているとか教えていないというのはそこまで関係がない。理人はそう思っている。
「流石だねえ。あ、昨日この問題意味わからんかったから教えてくれ」
「はいはい。LINEしてくれたら解き方送るのに……あーこれは――」
理人の学校の学年末テストは全部で四日間の日程で成り立つ。つまり一週間の殆どがテストによって潰されるということになる。当然その間は授業はなくなるのでそれを幸運と捉えるべきか、ただの地獄と捉えるべきか。
理人は次々とやってくるテストの波に飲み込まれないようになんとか耐えながら、シャーペンを走らせていた。理人はあまり内申点を気にしたりはしないが副教科であっても平均点以上を取るのは絶対のマストとして自分の中で線引きをしている。それは自身のメンタルを保つためでもあるし、体面を保つためでもあるし、先生や友達からの信用を取るためでもあった。勉強を通じて繁という親友を手に入れた理人にとってはやはり守りたいことだ。
「やべえ、昨日徹夜したから今日の睡眠二時間とかなんだよな。テストの時マジで寝そうになった」
繁が冗談にもならない乾いた笑いを出す。
「俺ずっと言ったぞ?『今回こそは寝とけ』って言ったよな?」
「大丈夫!今回は大丈夫!!」
繁はこの前のテストで途中迫りくる眠気に抗うことが出来ずに意識を手放してしまい、目も当てられない点数を取った過去がある。それをふと思い出して理人は顔を引きつらせる。
「本当か?」
と言いながら理人は直前の見直しをしていた教科書を閉じ、リュックの中に戻す。
蛍のことを横目で見ると松井と日田の仲良し三人組で話していたので別に会話に入ることもなしに席に静かにつく。
理人は先日のバレンタインデーのことを思い出していた。繁は「バレンタインデーだー!」と騒いだ末に義理も含めて数個のチョコをもらったらしい。まあそれはいつもの事なので理人は黙ってため息をついたが、問題は自分のことだ。内心。内心、蛍が理人にくれたりしないかなと考えていたが何もなく終わってしまった。
バレンタインからもう数日たっているのにも関わらずそれに対して理人は静かに落胆する。やっぱり、脈無いのかなあ。
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