第13話 目指せプレステ
三学期ほどイベントが少ない学期はないだろう。例えるなら次の学年への待機時間と言ったところだろうか。一学期だったら体育祭、二学期だったら文化祭があるが三学期あることと言えば……
「さああと二週間でテストだな!理人!」
席が前後になってより一層しゃべるようになった繁が嬉々として話してくる。そう、三学期のイベントごとと言えば定期テストくらいしかない。本当に嫌な学期だ。二月になっても平均気温は一桁。この寒さの中テストななんて正気じゃない。
「お前勉強嫌いなのにいつもテストだけはやる気出すよな、えっと、何だっけ?」
「プレステ!」
繁はある契約を親と結んでいるらしい。テストで高校一年生の間常にいい成績を維持することが出来ればプレイステーションをゲットすることが出来る。そのために常に一年間悪くても平均以上をたたき出してきた根性はすごいと思う。本当に、部活も忙しいらしいのによくやる。
そんなプレステに王手をかけたここ一番の大勝負だ。繁も気合が入っている。
「今回も勉強教えてくれ!頼む!」
「分かった分かった」
最初に繁と仲良くなったきっかけは確か『勉強』だった。中二の時にたまたま繁に勉強を教える機会があったのだ。確か図書室での出来事だったと思うが詳しいところはあまり覚えていない。そして気づくと繁は俺に勉強を教えてもらい、俺はあまり勉強していない分を繁に教えることで理解を深める……そんな方策でこれまで俺たちはテストや受験を突破してきたのだ。
「何、有賀が勉強教えてくれるの?確かに有賀って頭良さそうだしね、じゃあ私も頼もうかなあ」
渚は俺たちの会話に気づいて入り込んでくる。
「何でお前に理人が勉強教えないといけないんだよ」
「あっそ……じゃあ蛍に勉強教えるのは?」
「ん!?」
渚がちょうど後ろで別の友達と話していた蛍を指さして話す。蛍は突然自分が指名されたのでとてもびっくりした。渚はそんな蛍の突っ込みも気にせずに台本があるかのように流暢に話し始める。
「蛍って頭良いのに何でか点数取れてないもんね、確か期末の順位は……」
「ストップ! 渚、ストップ!」
よほどヤバい成績なのかは知らないが渚がポロっとこぼそうとした情報に蛍が自分の会話を中断してまで止めにかかる。理人は蛍の成績は普通くらいだろうなと思っていたのでそれが一番意外だった。渚が「もー」と言いながら蛍にまた絡もうとしていた時に丁度休み時間の終わりを知らせるチャイムが鳴る。
「あー、鳴っちゃった。まあそういうことで蛍の今回のテストの成績楽しみだなあ」
渚の中では完全に理人が蛍に勉強を教えるということになっているらしい。
「えっと、その……」
理人が何か言おうとする前に蛍は自分の席へ戻っていった。
その日の夜。キーボードの部屋と理人の声のみが響いている部屋でひときわ高い音がスマホから鳴った。繁から『この問題教えてくれ』と来ているのかと思って見ると蛍からだ。
『昼の話だけどさ……』
『たぶん私も分からないところがあるし、今度一緒に勉強会でもしない?』
テスト勉強……蛍と一緒の空間なんてはかどらない気もしたが、まあ大丈夫だろうと安請け合いをしようと文字を入力した時、次に来る蛍のメッセージとそれがすれ違ってしまった。
『私の部屋か理人の部屋がいいな』
『いいよ!やろうやろう』
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