新世界は蝕まれる生命と共に
オニアギトモドキネズミ
学名、Os Sakanii。ネズミ科オオクチネズミ属に属する、大型肉食甲虫であるオニアギトによく似た外観を持つ小型のネズミの一種。世界中の森林に生息しているが、近年では、エキュメノポリス計画に基づく全地球的開発によって、種族保存用のバイオスフィア以外での野生個体数を激減させている。
オオクチネズミ属は生態系においてスカベンジャーとしての役割を果たす種が多いが、本種については雑食性が強く、時として他の哺乳類や鳥類等を狩って捕食することもある。
同属特有の、体長の1/2を占める巨大な口による噛みつきは、たとえ本種より大きな生物であっても致命傷を負いかねないほどの威力を持っており、十分な腐肉を捕食できない環境下における本種は、その環境における高位捕食者のニッチを奪取する危険性を孕んでいる。
なお、一般的な体毛に覆われたネズミでは、甲虫類特有のクチクラ質外骨格とは似ても似つかないように思われるが、そもそもクチクラは哺乳類の体毛表面にも存在するものである。
無論、昆虫の外骨格におけるそれと哺乳類の体毛におけるそれは通常別の成分組成を持つわけだが、本種においては、体毛のクチクラに独特の構造および組成が見受けられ、成熟して体毛がしっかり生え揃った個体では、一見して甲虫類にも似た光沢を放つ甲殻を身に纏っているように見えるのである。
本種がこのような特性を獲得するに至った経緯についての有力な学説は未だにないが、ウイルスベクターによる形質転写といった人為的な干渉の可能性を除外する場合、上位捕食者による淘汰圧への反応として個体の防御力を高める方向に進化した結果ではないか、とする、仮説とも言えない曖昧な可能性の提起が為されている。
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またしても悲劇! 正体不明の「食人鬼」現る!
――――某月某日、大手新聞社の大見出しより
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