第11話   悠の告白(真実)





「智也が、ボクの事をそこまで考えてくれていたなんて~ 女の子のボクより、ボクのことが大事だなんて~」


「あの…… 悠さん? 誤解していませんか? 俺が大事と言ったのは男の悠であって、女の子の君では…… 」


 浮かれる悠(♀)に、悠と悠でこんがらがって、誤解していると思った俺は慌てて訂正するが…… 


「うん。だから、ボクの事が大事なんでしょう~? これは、もうプロポーズみたいなものだよ~ 」


「えっと……」


 ダメだ…… 全然伝わっていない。どうすればいいのだろう……

 俺は悠を一先ず落ち着かせようと試みることにした。


「あの悠さん。一旦冷静になろう。まずは、深呼吸でもしようか?」

「スーハー、スーハー」


 案外素直に深呼吸した応じる悠(♀)。


「落ち着いたかい?」


 そして、俺が尋ねると彼女はコクリと首を縦に振る。

 その返事を確認した俺は、もう一度伝える。


「俺は男の悠が大事なので、女の子の君の気持ちには応えられません。あと、別に男が好きということでもありません」


(あれ? これ死体蹴りしていないか…?)


 しかし、そんな俺の心配をよそに、悠(♀)は顔を真っ赤にしてモジモジしながら、俺を見つめている。


 そして―


「ボクも誰よりも智也が大事だよ… ううん、大好きです…♡ こちらこそ不束者ですが、これからも宜しくお願いします♡♡♡」


 あっ これ伝わってないな…… だって、最後なんて求婚された時の了承の言葉だもん。


「とりあえず、落ち着いて話そうか?」


 俺は苦笑いを浮かべながら、再度説得を試みるが彼女から返ってきた言葉は俺の斜め上のモノであった。


「智也…。もうボク達に言葉は要らないと思うんだ……。あとは… その… きゃっ! 恥ずかしい…! この先は女の子のボクからは言えないよ~ 」


(キスを飛ばして、オマエは何を言っているんだ!!??)


 俺は一人燃え上がる悠の相手をしていて、何かだんだん腹が立ってきた。


「もう! こういう事は男の子の智也がリードしてくれないと!」


 そして、一人盛り上がる悠(♀)は、「察してよ!」と言わんばかりに頬を膨らませて不満を漏らす。


「いい加減にしろ! 女の子の君とは付き合えないって言っているだろ!!」


 その態度に俺はついに我慢できなくなって、大声を出してしまった。


「ふぇ……?」


 俺の声に驚いたのか、悠(♀)は目をパチクリさせて固まってしまう。


「えっと…… ごめん。ちょっと言い過ぎた……」

 俺は流石に大声で怒鳴りすぎたと思い謝ったのだが、彼女からは予想外の反応が帰ってきた。


「うん、解っているよ? 男の子のボクを大事にしたいから、女の子のボクとは付き合えないんだよね? でも、ボクがだから、問題ないよ♪」


「……はぁ!?!?」


 俺は一瞬彼女の言っていることの意味が理解できずに呆然としてしまう。


「ああっ! そうか……。智也には平行世界って設定にしていたね…。ごめんごめん、忘れていたよ」


 俺が何も言えないでいると、悠(♂♀?)は勝手に納得したようで、うんうんと一人で頷いている。


「えっと…… どういうことだ?」


 俺は混乱しつつも状況を確認するため彼? 彼女? に問いかける。


「うん、そうだね……。まず、ここは平行世界ではありません。そして、ボクは男の子の悠です。ううん、正確には【元男】だったというべきだね。あとは…… 亜美さんが帰ってきてから話すよ」


「あの残念美人も関係しているのか!?」

「残念美人って…… 智也、それは失礼だよ。まあ、否定はできないけど…」


 悠(♂?)は苦笑いしながら答えた。

 だが、不思議と平行世界に飛ばされたというよりも悠が性転換したという方が、現実味があるような気がして納得している自分がいる。


「ところで、女の子になったというのは、”性転換手術”を受けたって事なのか?」

「違うよ。本当に女の子の体になったんだよ。確かめてみる?」


 悠はそう言うと、スカートを太ももまでたくし上げる。その表情は少し悪戯っぽく笑っているが、羞恥からか少し赤みを帯びている。


 俺は咄嵯に目を逸らす。すると


「智也、顔真っ赤だよ?」

「当たり前だろうが!」


 悠が揶揄うように言ってきたので、俺は照れ隠しに思わず大きな声を上げてしまう。

 自分も真っ赤なくせに……


 二時間後、亜美さんが外出から帰ってきた。


「えっ? なに? なに?」


 出迎えた俺たち二人の雰囲気を感じ取ったのか、そう言いながらリビングへ入ってきたが、悠の一言で表情は一転する。


「ごめん、亜美さん……。あのこと… 智也に話しちゃった……」

「えええええっ!!!?」


 悠(♂)の言葉に、驚きを隠せないでいた亜美さん。


「そんな! 私との約束は!? 私の明るい未来はどうなるの!?」

「大丈夫。智也以外には、話していないから…」


 亜美さんはしばらく混乱していたが、落ち着きを取り戻すと口に手を当てて考え始める。


「…… そうね……。でも、いい機会かもしれないわね…。それに、何かあっても口封じに記憶を消せばいいだけだし……」


 彼女はブツブツと独り言を呟く。何か物騒な事を言ったような気もするが……

 そして、意を決するとソファーに座っている俺の前に座り口を開き始める。


「そうね……。何から話せばいいかしらね…?」

「とりあえず、悠が女の子になった理由と経緯を教えてください!」


 俺は話あぐねる亜美さんに、一番聞きたい質問を投げかける。


「あら? やっぱり悠ちゃんの体が気になっちゃう? そうよね~、男の子だもんね~。エッチなこと出来るのか気になるわよね~」


「違います! そんなんじゃありません!」


 ニヤリと笑う亜美さんの言葉を俺は全力で否定する。

 そして、亜美さんの隣に座る悠を見ると、真に受けたのか恥ずかしそうに両手を頬に当てて、モジモジしており、たまに俺のことをチラチラと見てくる。


「いや、期待しているところ悪いが、本当にそういう意味じゃないからな?」


 悠は一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに「またまた~、照れちゃって~」といった表情になりクスッと笑った。


 そして、亜美さんは悠が女の子になった理由と経緯を、神妙な面持ちで言葉を選びながらぽつりぽつりと語り始める。


「あれは… そう… 約2年前の10月だったわね……。あの日、私は警察大学校時代の友達から、久しぶりに飲みに誘われて― 」


「ちょっと、待ってください! 亜美さんって、警察官だったんですか!?」


 亜美さんの話を遮り、俺は思わずツッコミを入れてしまう。

 だって、亜美さんはどう見たって警察官に見えないからだ。


「あら? 以前、私は公務員って答えたわよね?」


 亜美さんは、俺の反応を見て首を傾げる。

 いや、確かに前に聞いた時に、「公務員よ」とは言っていたが…… 

 俺は市役所とか公益社団法人の職員かと思っていたからだ。


「あの時は、嘘は言ってないけど本当のことも言わなかっただけよ」

「はぁ……」

「智也君… 大人の女はね、時には真実を隠した方が上手くいくことがあるの♪」


 亜美さんが不敵な笑みを浮かべながら、人差し指を唇にあてウインクしてくる。

 俺はその仕草にドキッとすると同時に、何故か少しイラッとしてしまう。


 亜美さんは残念美人ではあるが、美人なのでその仕草も凄く魅力的なのだが、なぜか素直に受け入れられない自分がいた。


 まあ、それはともかく今は話の続きを聞くことにする。





「智也が、ボクの事をそこまで考えてくれていたなんて~ 女の子のボクより、ボクのことが大事だなんて~」


「あの…… 悠さん? 誤解していませんか? 俺が大事と言ったのは男の悠であって、女の子の君では…… 」


 浮かれる悠(♀)に、悠と悠でこんがらがって、誤解していると思った俺は慌てて訂正するが…… 


「うん。だから、ボクの事が大事なんでしょう~? これは、もうプロポーズみたいなものだよ~ 」


「えっと……」


 ダメだ…… 全然伝わっていない。どうすればいいのだろう……

 俺は悠を一先ず落ち着かせようと試みることにした。


「あの悠さん。一旦冷静になろう。まずは、深呼吸でもしようか?」

「スーハー、スーハー」


 案外素直に深呼吸した応じる悠(♀)。


「落ち着いたかい?」


 そして、俺が尋ねると彼女はコクリと首を縦に振る。

 その返事を確認した俺は、もう一度伝える。


「俺は男の悠が大事なので、女の子の君の気持ちには応えられません。あと、別に男が好きということでもありません」


(あれ? これ死体蹴りしていないか…?)


 しかし、そんな俺の心配をよそに、悠(♀)は顔を真っ赤にしてモジモジしながら、俺を見つめている。


 そして―


「ボクも誰よりも智也が大事だよ… ううん、大好きです…♡ こちらこそ不束者ですが、これからも宜しくお願いします♡♡♡」


 あっ これ伝わってないな…… だって、最後なんて求婚された時の了承の言葉だもん。


「とりあえず、落ち着いて話そうか?」


 俺は苦笑いを浮かべながら、再度説得を試みるが彼女から返ってきた言葉は俺の斜め上のモノであった。


「智也…。もうボク達に言葉は要らないと思うんだ……。あとは… その… きゃっ! 恥ずかしい…! この先は女の子のボクからは言えないよ~ 」


(キスを飛ばして、オマエは何を言っているんだ!!??)


 俺は一人燃え上がる悠の相手をしていて、何かだんだん腹が立ってきた。


「もう! こういう事は男の子の智也がリードしてくれないと!」


 そして、一人盛り上がる悠(♀)は、「察してよ!」と言わんばかりに頬を膨らませて不満を漏らす。


「いい加減にしろ! 女の子の君とは付き合えないって言っているだろ!!」


 その態度に俺はついに我慢できなくなって、大声を出してしまった。


「ふぇ……?」


 俺の声に驚いたのか、悠(♀)は目をパチクリさせて固まってしまう。


「えっと…… ごめん。ちょっと言い過ぎた……」

 俺は流石に大声で怒鳴りすぎたと思い謝ったのだが、彼女からは予想外の反応が帰ってきた。


「うん、解っているよ? 男の子のボクを大事にしたいから、女の子のボクとは付き合えないんだよね? でも、ボクがだから、問題ないよ♪」


「……はぁ!?!?」


 俺は一瞬彼女の言っていることの意味が理解できずに呆然としてしまう。


「ああっ! そうか……。智也には平行世界って設定にしていたね…。ごめんごめん、忘れていたよ」


 俺が何も言えないでいると、悠(♂♀?)は勝手に納得したようで、うんうんと一人で頷いている。


「えっと…… どういうことだ?」


 俺は混乱しつつも状況を確認するため彼? 彼女? に問いかける。


「うん、そうだね……。まず、ここは平行世界ではありません。そして、ボクは男の子の悠です。ううん、正確には【元男】だったというべきだね。あとは…… 亜美さんが帰ってきてから話すよ」


「あの残念美人も関係しているのか!?」

「残念美人って…… 智也、それは失礼だよ。まあ、否定はできないけど…」


 悠(♂?)は苦笑いしながら答えた。

 だが、不思議と平行世界に飛ばされたというよりも悠が性転換したという方が、現実味があるような気がして納得している自分がいる。


「ところで、女の子になったというのは、”性転換手術”を受けたって事なのか?」

「違うよ。本当に女の子の体になったんだよ。確かめてみる?」


 悠はそう言うと、スカートを太ももまでたくし上げる。その表情は少し悪戯っぽく笑っているが、羞恥からか少し赤みを帯びている。


 俺は咄嵯に目を逸らす。すると


「智也、顔真っ赤だよ?」

「当たり前だろうが!」


 悠が揶揄うように言ってきたので、俺は照れ隠しに思わず大きな声を上げてしまう。

 自分も真っ赤なくせに……


 二時間後、亜美さんが外出から帰ってきた。


「えっ? なに? なに?」


 出迎えた俺たち二人の雰囲気を感じ取ったのか、そう言いながらリビングへ入ってきたが、悠の一言で表情は一転する。


「ごめん、亜美さん……。あのこと… 智也に話しちゃった……」

「えええええっ!!!?」


 悠(♂)の言葉に、驚きを隠せないでいた亜美さん。


「そんな! 私との約束は!? 私の明るい未来はどうなるの!?」

「大丈夫。智也以外には、話していないから…」


 亜美さんはしばらく混乱していたが、落ち着きを取り戻すと口に手を当てて考え始める。


「…… そうね……。でも、いい機会かもしれないわね…。それに、何かあっても口封じに記憶を消せばいいだけだし……」


 彼女はブツブツと独り言を呟く。何か物騒な事を言ったような気もするが……

 そして、意を決するとソファーに座っている俺の前に座り口を開き始める。


「そうね……。何から話せばいいかしらね…?」

「とりあえず、悠が女の子になった理由と経緯を教えてください!」


 俺は話あぐねる亜美さんに、一番聞きたい質問を投げかける。


「あら? やっぱり悠ちゃんの体が気になっちゃう? そうよね~、男の子だもんね~。エッチなこと出来るのか気になるわよね~」


「違います! そんなんじゃありません!」


 ニヤリと笑う亜美さんの言葉を俺は全力で否定する。

 そして、亜美さんの隣に座る悠を見ると、真に受けたのか恥ずかしそうに両手を頬に当てて、モジモジしており、たまに俺のことをチラチラと見てくる。


「いや、期待しているところ悪いが、本当にそういう意味じゃないからな?」


 悠は一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに「またまた~、照れちゃって~」といった表情になりクスッと笑った。


 そして、亜美さんは悠が女の子になった理由と経緯を、神妙な面持ちで言葉を選びながらぽつりぽつりと語り始める。


「あれは… そう… 約2年前の10月だったわね……。あの日、私は警察大学校時代の友達から、久しぶりに飲みに誘われて― 」


「ちょっと、待ってください! 亜美さんって、警察官だったんですか!?」


 亜美さんの話を遮り、俺は思わずツッコミを入れてしまう。

 だって、亜美さんはどう見たって警察官に見えないからだ。


「あら? 以前、私は公務員って答えたわよね?」


 亜美さんは、俺の反応を見て首を傾げる。

 いや、確かに前に聞いた時に、「公務員よ」とは言っていたが…… 

 俺は市役所とか公益社団法人の職員かと思っていたからだ。


「あの時は、嘘は言ってないけど本当のことも言わなかっただけよ」

「はぁ……」

「智也君… 大人の女はね、時には真実を隠した方が上手くいくことがあるの♪」


 亜美さんが不敵な笑みを浮かべながら、人差し指を唇にあてウインクしてくる。

 俺はその仕草にドキッとすると同時に、何故か少しイラッとしてしまう。


 亜美さんは残念美人ではあるが、美人なのでその仕草も凄く魅力的なのだが、なぜか素直に受け入れられない自分がいた。


 まあ、それはともかく今は話の続きを聞くことにする。

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