第2話魚屋

オイッスー!声が小さい!オイッスー


「いい、魚揃えてますよ!いらっしゃい、いらっしゃい!」

そこへ女連れの醜い男が通りかかった。

「そこのべっぴんさを連れてる、おい兄さん!いい魚、揃えてますよ!」


「久美子ちゃん。お魚だって。何が食べたい?」

「じゃ~私は大トロ」

「大将、大トロ、その10万円のヤツちょうだい」

「はい、喜んで!お兄さん羽振りがいいねぇ」

「まぁね。はい、大トロ」

「ありがとう」

「ちょっと、待った!今日は大トロ買った方には、鯛を一尾プレゼントです」

「悪いねぇ」

「またの、お越しを」


「へい、らっしゃい、らっしゃい。そこのお父さん、魚はどうですか?」

「あ、あのう、お、大トロを」

「へい!喜んで」

「お、大トロは大変、高価な食べ物だと聞いて」

「お父さん、うちは全部安いの。赤字覚悟ですから」

「じゃ、安いのを……これ、いくらですか?」

「3万円です」

「さ、3万円。もっと安いのモノを」

「これ、1万円です」

「い、1万円!もう少し安いのありませんか?」

「赤字覚悟だ、5000円」

「もう一声」

「3000円」

「もう一声」

「はいっ、いらっしゃい、いらっしゃい、いい魚用意してますよ」


「あぁ、病気の嫁さんに大トロ食わす事ができずに自殺か」

「おいおい、お父さん。たかが大トロでしょうが」

「川の水は冷たいだろうな」

「お父さん、こっちも人助けだ、1000円でどうだい?」

「もう少し、安く」

「お父さん、所持金いくら?」

「300円です」

「ブッ!特別だよ。大トロの短冊を一切れでいいかい?」

「あ、ありがとうございます」

「はいっ、大トロ一切れ」

「はい、300円丁度」

「あと、大トロ買ったら鯛を一尾ですよね。もらって行きます」

「ブッ」

お父さんは300円の大トロ一切れと鯛の尾頭付きを持ち去って行った。


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