ゲームセンター狂想曲~神隠しの謎を解け~
朝は弱い方なの~。だからと言って、めっきり弱いってわけじゃないからねっ!
依頼されていたホームページが、とりあえず完成した。丁度、一週間かかった。
普通に作るなら、そこまで時間はかからない。
でも銀行振り込みやお金関係のことや他にも、自己紹介やほのかさんの納得するような雰囲気など。
本人にこれでもかってくらいに確認してもらって、何回も色々と手直しをした。
てっきり全てを任されるかと思ったけど、そうではなかった。
思ったより自分の理想やイメージがあり、それにストイックな人だった。
一切の妥協を許そうとはしなかった。
少しでも気に入れなければ、もう少し修正してもらってもいいかな。と聞き私が頷けば頼む、という感じを何回も繰り返していた。
しつこいくらいに何回も聞かれた。
全く思いやりがない人、とは思っていなかった。けど想像以上に思いやりがある人だった。
ピロンと音がしてスマホが鳴った。通知を見ると、ほのかさんから返事が来ていた。
『お~! いい感じじゃ~ん。じゃあこれで完成で! 色々と要望聞いてくれてありがと~。早速、試運転してくれない?』
とりあえず、これで完成のようだ。
早速言われた通りにする。さてさて、最初の依頼はいつ来るのか、そしてどんなものなのか。
一仕事終えたことだし、何か飲むとしよう。
まだ買うだけ買って飲んでない、大波乱を呼んだあのミルクティーでも飲もうかな。
そんなことを考えながら、席を立とうとすると画面から鈴の通知音が聞こえてきた。
つまりそれは誰かから、依頼が来たということ。
「嘘でしょ?」
急いで確認をする。内容をきちんと見たけど、やっぱり依頼だった。しかも普通の依頼ではない。
ほのかさんだからこそ頼めるような、内容だった。これは知らせなくてはいけない。
すぐLINEで知らせる。数秒経つと返事が来た。
『今日は遅いから、明日にしてもらおうと思うんだけど、ど~?』
今日は金曜日だったので、学校が終わって帰宅してから作業をしていた。時計を見ると午後6時になろうとしている。
今からとなると、少し遅い時間帯だ。
依頼者には申し訳ないけど、そうしてくれた方が非常に助かる。
『そうですね。依頼者の方には申し訳ないですが、そうしてくれた方が非常に助かります』
そう送ると、すぐに返事が来た。
『了解! じゃあ、悪いけどその依頼者さんに、明日になりますって感じで伝えてくれな~い?』
それくらいお安い御用だ。返事と同時に、依頼者の方に何時くらいに来てもらうか、ということも聞いた。
これもすぐに返事が来て、朝9時くらいとのこと。
スタンプで返事をして、すぐに依頼者の人に文章を送った。
すると、その人もすぐに返事が返って来た。それで大丈夫、と。
では、その時間でお願いします、とメールを送りパソコンを閉じたのだった。
次の日、八時半前。もう事務所前まで来ていた。場所は数日前に、彼女が教えてくれた。
休日ということでそれなりにお洒落をしている。
白トップスに水色のデニム、上着にベージュ色のカーディガン。
肩からかけるタイプの小さな白色のカバンを持って来ている。
靴はとりあえず歩きやすさ重視の赤色のスニーカー。
髪型は特に何も弄っていない。いつもの黒髪ロング。
そう言えば、お母さんが言っていたなぁ。陽太君が帰って来てないけど、知らないかって。
お母さんも彼のお母さんも、そこまで心配してなかった。
何故なら夜中になっても、帰って来ないのはいつものことだから。
彼は中学生くらいから、夜遊びをするようになった。
と言っても、たばこやお酒や薬物に手を出しているわけではないので、彼の両親は出来るだけ早く帰るように、とだけ言って見守っていた。
今回は何の連絡もなく、帰って来てないとのことだった。
でもこれは二回目。前回も同じようなことがあったのだ。
前は学校の帰りに、そのまま友達の家に泊まりに行くといったもの。
でもスマホの充電がなくて、家に行ってから充電させてもらおうと考えていたけど、友達と遊ぶのを夢中になって結局、忘れてしまったのだった。
これは本人から聞いたというわけじゃない。
お母さんに彼のお母さんが言っていたのを、たまたま聞いただけ。
彼とは高校になってから、あまり関わっていない。嫌いというわけでは、ないけど。
中学生になってから、少しづつ距離感が空いていった。それでも全く話さない、ということはなく時々話したりした。
何故ならそもそも家が近いから。お互いの家の間に、一つ家があるだけ。
じゃあ学校に行く時に会うのじゃないかって、思う人もいるかもしれない。
けど、そもそも高校は違うししかも方向が真逆なのだ。そして帰って来るのも遅いし、何より私が意図的に避けているから、会うことはかなり少ない。
去年は3回。今年はまだ2回。新年になってすぐと、正月に会ったっきり。
何故避けているのかは、今は伏せておこう。
きっとみんなにとっては、大した理由でないから。
でも私にとっては、どうにかする為には意図的に避けるしかなかったのだ。
ただそうとは言えど、やはり何の連絡もなく帰って来てないのは心配になる。
普通に連絡し忘れだったらいいのだけど。
この事務所は、今彼女しかいないらしい。
一階は空き室で、二階に事務所、三階と四階に自宅といった構造になっているとのこと。
この空き物件を買った時から、そこまで汚くなかったらしい。
きちんと手入れをされていたようだ。
階段を上って右に曲がると、ドアがある。そしてインターホンもある。それを押した。
数秒経つと、三階の方から声が聞こえた。
「えっ、待って、来るの早くない? はーい! こっち~、三階の方にいるよ~。カモーン」
どうやらまだ準備中のようだ。また階段を上がると、ドアがある。ここを開けると彼女の家だ。
「あっ待ってね~。今から開けるから~」
すぐにドアが開いた。そこにはまだ髪が少しボサボサのパジャマ姿の彼女が居た。
ほんのすこし前に起きたばかりだと思われる。相変わらずマイペースな人だ。
「少し前に起きたばかりなんだ~。さっ、ど~ぞ、ど~ぞ! 上がってちょーだいなっ」
「それでは、お言葉に甘えてお邪魔します」
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