類は友を呼ぶって、その通りだよね
そのデパートの佇まいはまるで、一国の象徴ともいえる城のような存在に見えました。
「まさに戦場という名にふさわしい見た目をしているね~」
「あれがそのデパートなんだねぇ。初めて見るよ」
みんな窓から顔を出して見ています。伊集院さんと爺やさん以外。
見ていてひやひやするような光景だけど、特に荒ぶることなく冷静に見守っていました。
何故なら、道路に車が一台もいませんでしたから。この時間帯にたまたまいなかっただけ。
と、言いたいけど実は違います。いなかったどころかガンガンに車は通っていました。
なのに何故、今はいないのでしょうか。
その理由は伊集院さんがお金を払って、道を開けてもらったからです。
道路の様子を見て迷いなく、そう行動していました。
そんなにも手に入れたいのかとついつい思ってしまいました。
すぐにその場でお金を渡すのかな、と思っていましたけどそうではなかったです。
どこにあったのか分からない拡声器を花森さんは手にしていました。
一体、何をするのだろうかと思ったら窓を開けました。
「皆さん、今から15分後にここの近くの公園にて100万円ほどヘリコプターでばら撒きます。欲しい方は今すぐ行くことをおすすめします」
と言ったけど、みんな特に反応することもなく声だけ響きました。
「あぁ、言い忘れました。僕は伊集院真と言います」
そう言った途端にざわざわと通行人がし始めしました。
そしてたくさんの車たちが一気に反対方向へと飛ばしていきました。
……この人は一体、何者なのでしょうか。
「爺や。藤井にヘリコプターを手配して100万円をこの近くの公園にばら撒くようにと言ってくれ」
「えっ」
私と大将とおばさんの声が重なりました。
適当なことを言って道を開けるだけかと思っていましたのに、まさか本当に実行するなんて。
「これで改めて世間にバレるだろうからね。まぁもう知っている人は知っていたから、このまま隠しているのも時間の問題と思っていたからちょうど良かったよ」
「ちょうど良かったって……あんた、一体何者なの?」
疑問に思っていたことをおばさんが聞いてくれました。
「僕は伊集院財閥の息子さ。ゆくゆくは後継者になるけどね」
「ざっ……財閥……」
普通の人ではないだろうなとは思っていましたけど、まさか財閥の息子だったとは。
だからあまり有名になりたくなかったのでしょう。
正体が分かったら手の平を返すように関わってくる人が増えるから。
「へぇ~。財閥の息子だったんだ。てっきり芸能人とかモデルとか何かしらの有名人かと思っていたよ~」
「これで僕も明日から有名人になるだろうね。自ら正体をバラす気はないけど、きっと広まってゆくだろうね。その時はその時で降参するさ。これがこの家に生まれた運命さだめなんだろうね」
「やだ~かっこつけちゃって。でもそんな悪いことばっかりじゃないでしょ」
ほのかさんが腕を組みながらそう言うと、彼は微かに笑いました。
「ははっ。流石だね、君には何でもお見通しかもしれないね。その通りさ。物事は悪いことばかりじゃない。何事も自分の捉え方次第さ。お金というものやどんな人と関わったらいいかを父さんから教えてもらったよ。だから僕はこの家に生まれて、良かったと今は心の底から言えるよ」
「あっ! あれがあのデパートね~。すご~い」
「……」
良い雰囲気だったのに、全く聞いている様子には見えません。
みんな窓から顔を出してデパートを見ています。
そして冒頭に戻ります。
「あんなデパートがあるなんて初めて知ったなぁ。結構大きいね~」
「みんな知らないとは驚いたよ。SNSで結構有名なんだけどね」
何事もなかったかのように喋り出す伊集院さん。
「SNSかぁ~。LINEしかやってないから分からないなぁ」
「私もよ」
「Twitterもやってるけど、こいつは初めて見るなぁ」
類は友を呼ぶと言うけど、こういうことを言うのでしょうか。
同じような考え方をしている人が集まります。
ということは私も彼女らと似たような部分があるのでしょうか。
全く想像がつかないけど、きっとそうなのでしょう。今は分からなくても、きっと分かる日が来ます。
ほのかさんの正体と同じように。
そもそも今日知り合った人たちを友と言っていいのかという疑問がありますけど。
とりあえずそれはこの際、置いておくとしましょう。
このデパートは五階建て。五階は屋上の駐車場だけで特に店はありません。四階から色んな店が並んでいます。
今、伊集院さんに公式のホームページを教えてもらい、スマホで調べているところです。
私達の目的の品は恐らく一階の食品売り場に売られているだろう、と伊集院さんが言っていました。
「ふ~ん。他にも本屋さんやレンタル屋さんやDVD屋さんとかその他、色々あるのね~。なかなかな品揃えじゃん。買い物し放題~」
寄り道する気満々です。
「すぐに目的の品が手に入るといいわね~。早めに手に入ったらみんなでショッピングでもしない?」
「あっ! それ、いいね~。みんなはどぉ」
「俺はそれでいいぜ」
「じゃあ僕も君達と一緒に、ショッピングを楽しませてもらうことにするとしようかな」
まだ答えられていないのは自分だけ。もちろん聞かれた時から答えは決まっています。
「私も皆さんと……買い物を楽しみたいです」
そう言うとほのかさんがガッツポーズをしました。
「うっしゃ! じゃあ満場一致ってことで、早く目的の品をゲットしてみんなでショッピングを楽しみましょ~」
「おー!」
いつの間にか、車はもう駐車場に着いていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます