RPGってロマンがあるよね(人生で一回も、したことないけど)
まず大将は私達の目的よりも動機が気に入ったらしく、ついてくることに。
大将が店を空けるのだからもちろん、お店は臨時休業となりました。
きちんと閉店の札もかけていました。
大将はこの近くのお店を全部知っていると言うのです。だからだいたいの検討がつくと。
私達は全くこの街に詳しくなかったので、とても助かりました。
ということで大将も合流となったこの旅。早速売ってると思われる場所に向かっていました。
すると八百屋のおばさんが声をかけてきました。お店から少し離れた場所での出来事でした。
と言っても声をかけてきた場所は、そのおばさんが働いている八百屋の前なんですけどね。
声をかけた時点で分かるのかって思いますけど、いかにも八百屋さんの格好をしていたから
すぐに分かりました。
話を聞いていると、どうやら二人は知り合いのようでした。
知り合いどころか幼馴染らしいです。中学校までは一緒だったと言っていました。
彼は自分で新たに店を持ちましたけど、彼女は両親がやってたお店を継いだらしいです。
両親は別に継がなくてもいいと言っていましたけど、彼女はこのお店がとても大好きでした。
ということでそのまま継いで働いているのでした。
両親も昔ほどじゃないですけど、サポートをしてくれているとのこと。
私達が何をしているのかと聞かれましたので答えますと、まさかのおばさんもついて来ることに。
理由は新発売のミルクティーが気になるから、それだけの理由。
どうやらそもそも紅茶自身興味がないらしいです。だけどネットで発売される情報を知りました。
その時に彼女に稲妻が走りました。これは絶対に美味しいやつだと。
と言ってもその日はお店もあるし、何も売り切れることはないだろうと思い今に至るのでした。
私達の話を聞いてすぐに両親に事情を話し、許可をもらいました。
ということで、この謎の旅に新たなメンバーが一人増えたのでした。
早速このメンバーで近くのお店を行ったのですけど、全部外れ。
売り切れていたり、そもそも扱っていなかったりと散々な結果でした。
もうこの街には店がないということで駅まで戻り、また一つ隣の駅へ行くことに。
となるはずでしたけど、予定が少し変わりました。
一つ隣の駅へ向かうのは全く変わらないのですけど、乗っているのは電車じゃありません。
じゃあタクシーに乗っているのじゃないかって、そう思う人が多いと思います。
違います、タクシーでもありません。私もこの目でみるのは初めてでし。
そうリムジンです。まさか人生でこの車に乗るなんて、思ってもみなかったですし。
それは駅前に着いてからのことでした。何故かそこにリムジンが停まっていました。
何故こんな所にあるのかとみんな言っていました。そう、ほのかさん以外は。
やはり彼女は予想外の行動しかとりません。
誰が乗っているんだろ~と言ってて走って、乗っているのが誰かを確認しに行きました。
誰かが止める間もなく一瞬の出来事でした。彼女には迷いという概念がないのでしょうか。
いや、あったとしてもそこまで深く考えずに行動するタイプなのでしょう。
私達が着いた頃には、乗っていた人物と楽しそうに談笑をしていました。
流石としか言いようがありません。打ち解けるのがとても速いです。声からして男性だと思われます。
「へぇ~。君も伊集院って言うんだね。僕と一緒だね」
「まぁ今日は伊集院って使ってるだけだよ~。まさか同じ名字の人と会えるなんて! 運命ってやつだね」
男性は金髪で透き通るような水色の瞳で、タキシードを着ていました。何処かの国のハーフでしょうか。
「あっ、やっほ~。絶対にあのミルクティーが置いてあるデパートがあるらしいんだけど。この人がそこまで乗せて行ってくれるって」
「……は?」
あまりというか今までつい口にすることはなかったのですが、人生で初めて口にしてしまいました。
言い訳をするとしたら、反射的についそう言ってしまいました。
本当に急展開すぎませんか。私達が来るまでに一体何があったと言うのですか。
そして今に至ります。特に詳しい説明は移動中に話そうと彼女が言い、乗車することになりました。
執事だと思わしき人が運転をしてくれています。私達は向き合って座っています。
「僕の名前を言っていなかったね。初めまして、僕は伊集院真」
二人の話を聞いていたからなんとなく分かっていましたけど、なんという偶然でしょう。
たまたま思いついた偽名と同じ人と今日、巡り逢うなんて。
偶然という言葉で片づけてしまうのは、勿体ないような気がします。
「私も本名じゃないけど、伊集院って名前なの~。まぁとりあえず今日だけね。明日もその名前かもしれないし、そうじゃないかもしれない」
「しかも目的も一緒だなんてね。流石にそれは驚いたよ。そういえば下の名前を聞いてなかったね。良かったら教えてくれないかい」
自分の時も大将たちの時も名乗る時には、きちんとフルネームを名乗っていましたのに。
名字だけとは。何か理由でもあるのでしょうか。
「あっ。そういえば名乗ってなかったね~。いや~、めんご、めんごっ」
……どうやら、何かしら深い意味があるのかと考えた自分が間違っていたようです。
「私の名前は伊集院ほのか。一応、フリーランスってやつだよ~。今は19歳だけどね。今年で20歳になるよんっ」
「ということは僕より年上ということだね。16歳なんだ」
まさかの同級生という可能性が浮上してきました。
「もしかして……、輝愛高校の生徒ですか」
「おっと。君とは同級生なのかな。その通り、僕は輝愛高校の生徒だよ。ただ、伊集院という名前では通っていないけどね。」
しかも偽名を使って通っているとのこと。
クラスでは見たことがないですから、他の組にいるのでしょう。
「もう一つの僕の名前は、花森守」
「花森守って……あの、花森さん?!」
花森守。学校に通っている限り、知らない人はいないほどの有名人です。
詳しい見た目の噂は全く聞いたことがないです。
学校の中でも三本の指に入るほど、美貌だと言われていました。
しかし、それには理由がありました。彼自身があまり噂にされるのが好きではないらしいです。
そして噂をするような女の子は好きじゃないとも。
それだけなら少し噂をしてしまう人もいると思います。
一人の女子生徒が彼自身からそう聞いた上で、友達と楽しく噂話をしていました。
友達もそのことを知っていましたけど、特に気に留めることなく話していました。
ある日、廊下で彼とばったりと出会いました。その子はラッキーだと思い、彼に挨拶をしました。
でも何の反応もなくスルーされまし。
最初は声が小さかったのかなとか、急いでいたのかなと思っていました。
しかし次もその次も同じようにスルーされました。
ある日、またスルーされて彼女の友達がついにしびれを切らして、彼に聞きました。
それに対しての返事は実にシンプルなものでした。
僕のして欲しくないことを平気にしているから、この一言だけ。
「はぁ?! 何それ、どういう意味よ。もっと分かりやすく説明しなさいよ」
「彼女は僕の噂を普通にしているからだよ。僕はきちんとみんなに言った。それなのに、彼女はそれを無視している。そんな子と僕は関わるつもりはないよ。何より不愉快だ。今すぐやめてもらいたい」
何故こんなにも会話が鮮明に知っているのか、気になるでしょう。
この出来事はみんなの前で起きていたからです。
彼女の友達がしびれを切らした時点でたくさんの人が集まっていました。
私は特に興味がありませんでした。
けどあまりにも大きな声でした。それに二人が喋る時には、みんな静かにしていたから教室にいても聞こえました。
この件があってから、一部のファンは彼に冷めて離れていきました。けど新たなファンが増えました。
更に今まであまり男子とは仲良くしている様子を見なかったのです。
けど色んな男子と絡んでいたり、絡まれているのを目撃するようになりました。
実際に見たわけじゃないのですけど、友達がそう教えてくれました。
ということもあって、彼は学校の中で有名でした。
「盛り上がってるかはちょっと分からないけど、そろそろ着くんじゃない?」
と今まで静かにしていたおばさんが口を開きました。
「皆様、そろそろ目的地に着きますよ。降りる準備をしていて下さいね」
ここで初めて運転手が声を出しました。優しい、まるで実家のような安心感がする声色。
「っしゃあ! 野郎ども、ぜっっっったいに新発売の優雅なひと時様のミルクティーを手に入れるぞぉ!」
……この人には余韻に浸るという発想がないのでしょうか。
それとも一瞬で浸って、この行動に出たのか。
私と考え方が違います。他人だからそれでおかしくないのですけど、こんなにも違うなんて。
でも、たまにはこういうのも悪くはないですね。
「もちろん。準備はばっちりさ。確実に手に入れてみせるさ」
「若者には負けないわよ。絶対にゲットするんだから」
「俺もこの手に収めてやるぜ」
「……私も皆さんと同じ意見です」
漫才にはボケとツッコミという役割があります。
しかし日常にも、そんな役割の人は少なからずいると思います。
ツッコミになるつもりは全くなくても、必然的にそうなってしまいます。
そんな経験は今までなかったです。私の周りは大人しく、そんな子はいませんでした。
それなのに、今『ボケ』といわれるような存在が目の前にいます。一人だけのはずなのに。
まるで、たくさんいるように感じてしまいます。
その理由は至って簡単。彼女が周りを巻き込むタイプで、自然と周りもそうなってしまうのです。
今のこの状況がそれを物語っています。
(このまま、何も起きることなく目的の品が買えて、無事にお泊りできますように)
そう心の中で神様に祈るのでした。
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