第3話

ガンジス河をボートでゆく。むこうに見慣れない景色がひろがる。

「あちらに行ってください」

後輩が頼む。

「あそこは駄目だ。不浄の地だ」にべもなく、ガイドは断る。遠藤周作のディープリバーが思い出される。

ホテルに帰り、ガンジス河を観光したと伝えると、ホテルの支配人がゆったりと微笑み、

「沐浴するといいですよ」

と笑う。

私達が入っていいのか、よくわからない。

次の日、意を決して、沐浴する。人が少ないところを選び、沐浴すると、何度か顔をあわせている土産売りの少女が、なにか耳打ちする。英語なので、よくわからない。繰り返し話す。

「ここは、みんながトイレに使う場所だよ」

後輩と顔をみあわせ、「oh my god !」と叫ぶ。クスクスと少女が笑う。初めて年相応の笑顔をみた。

「あの、家、わかる?」

遠くに屋敷がみえた。

「行くことある?」

聞かれたので、知らないと答える。

「あそこは日本人が集まる。葉っぱをやる。行かないほうがいい。」

驚いて、もう一度みる。そんな場所があるのか。ありがとう、とお礼をいう。

ガンジス河のほとりで、野焼きが行われている。煙がいぶすように、街を覆った。

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インド @yuuki9674

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