第2話

インド②

無理して入った店で、カレーを食べるが落ち着かない。外国人は外国人同士でつるむ。日本人が立ち寄る店で、チャイを頼む。日本語堪能なオーナーが土産の品に高級シルクを勧めつつ、旅の疲れを労ってくれる。ハンサムな案内人がニコニコとチャイをすすめてくれる。居心地がよく、出歩くのが億劫になる。

友人が同じ旅行者と歓談している。

「え、〇〇会社ですか?すごい!」 

友人が驚く。

「〇〇会社って?」後輩にきくと「先輩、知りませんか?有名な会社ですよ!」

なんとなく聞いたことはあるが、あまり知らなかった。はぁ、とトンチンカンな答えを返した。

「現地の人達に、ボールペンをあげると喜ぶんです。だから、たくさん用意してきた」

彼は顔をほころばせて、たくさんのボールペンを見せてくれた。旅行者というだけで、現地の子供たちに囲まれたり、押し売りにあって辟易としていた私は、彼の幸せそうな顔が眩しかった。

「〇〇会社の社員が、自分さがしでインド放浪ですか。ボールペンで人との絆を実感て。いいですねぇ」

若干、意地悪な後輩はにやにやと笑みを浮かべる。

まぁねぇ、と相づちを打ちながら、私は取り囲まれた彼の中の心中を思う。温かさの中にいいようのない寂しさが混じってる気がした。

きらびやかなシルクはミントグリーンとゴールドで織りなされ、まばゆい光をかもす。温かなチャイを飲むと甘みがどこまでも広がっていき、うまく舌が回らなかった。

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