インド

@yuuki9674

第1話

大学生のとき、友達にインドに誘われた。

「インドにいって、なにもせず過ごすの。憧れませんか」

旅行記も貸してくれた。カオスというか刺戟的だった。私は提案にのった。異邦の地をたずねてみたかった。

ニューデリーは埃っぽく、空気が乾いていた。お菓子屋さんのケーキは、ベタベタとして、あまりおいしそうでなく、リキーシャーというタクシーには、目だけがギラギラしたドライバーばかりだった。友人はハイテンションで、空港からホテルまでの長い距離を、ドライバーと語り合っていた。私も酒に酔ったように暗い夜道の中、眠りもせず、ひたすらに喋った。怖さ半分、楽しさ半分だった。どこにつくかわからない長い道のりを超え、ホテルに着いた。ホテルは安普請だが、気安く英語を話すツアリストが笑顔で迎えいれてくれ、シャワーは出がらしみたいな水量で、私たちの笑いを誘った。

どこに行っても、旅行者は目立つ。喫茶店に立ち寄り、高いコーヒーを頼むと、自分たちのような旅行者ばかりだった。西洋人が多かった気がする。明るいカフェの装飾は日本を連想させたが、インドではなじまない気もした。はみ出し者かもしれないと、少し安堵した。ネット使えますよ、と後輩にさそわれ、SNSにログインした。いつもどおりの友人がそこにいて、何故か涙が出た。ニューデリーの夜は異様に刺戟的だった。

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