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悴む指先と湿気た短い鉛筆で、ゆっくりと文字を紡いでゆく。
利用申請の簡単な用紙を凍りかけた箱に入れ、息をついてからあたりを見渡した。
周りに人はおらず、生き物すら自分だけのように思える。
一部顔をのぞかせる岩のほかはほぼ雪で覆われ、寒風に耐える木々には葉がほとんどない。
隠れかけた夕日を背に、設営を行う。
足元が雪のせいか、まだ明るく感じる。
骨を組み、インナーを立ち上げる。すっかり慣れたものだ。
人手があればもう少し早く建てられるのかもしれないが、これでいい。基、これしかない。
夕飯は、すでに済ませてある。
幸い地元の飲食店があいていたので、そこで済ませた。
済ませたというのは、少し違うかもしれない。あたたかい店だった。
そこから店の外に出たときに、自分というものをある程度はっきり感じることができてしまった。
テントの中に滑り込む。
寒さは、夜になってからだろう。
今しばらくは、あたたかいままだろう。
あたたかいうちに、幸せなうちに、浅く長い眠りに落ちた。
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