第12話 恋愛ごっこ

「恋愛……ごっこ?」 彼は私が言った言葉に少し困惑した表情を浮かべながら問いかけた。私はにこりと笑みを浮かべ「そう。恋愛ごっこ」と頷いてみせた。


「恋愛ごっこって……何するの?」


「簡単よ。恋人同士みたいに下の名前で呼んだり……あとは出掛けたりは出来ないからちょっとしたお散歩とかしたり。」


「でもどうして僕と?他の人でもいいんじゃ……」


「他の人じゃつまらないでしょ?それに私はもうすぐ死んじゃうもん。最期くらいは恋愛をしてみたいの」


「……分かった。いいよ。やろっか恋愛ごっこ」


「ありがとう……陽斗くん」 私はにこりと笑みを浮かべながらそう告げれば彼……陽斗くんは少し間を置いてから「宜しく……煌」と告げてきた。 この心臓が持つ時間だけでいい。私が死んだら忘れていいから……だからほんの少しだけ君の時間を頂戴。



次の日目を覚ました私は立ち上がりそっと窓際に立った。空はどんよりと曇り空で病室自体も暗く感じた。するとコンコンと規則正しいノック音が響き私は「はい……どうぞ」と声をかけた。その後すぐにドアが開きそこには私の担当医の先生が立っていた。


「涼宮さん体調はどうだい?」


「……まぁまぁですね。今日は何か検査がありましたか?」


「今日は血液検査と心臓の検査だね」


「……分かりました。行きましょうか先生」 私はにこりと告げて歩き始めた。今日もいつもの検査。その後は面談。いつもその繰り返し。


「そういえば梵さんから聞いたよ。恋愛ごっこ。」


「……そうですか。ただの死ぬまでのお遊びみたいなものです。」私は先生と歩きながら適当に話をしていた。ふと窓を見ていればポツポツと窓に水滴がついていることがわかった。


あぁもうすぐ雨が降り始める。

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