第11話 戻ってきた空間と【ごっこ遊び】


数時間後、手続きを終え私は見慣れた空間にそっと目を伏せた。あぁまた此処に戻ってきちゃった……つまらないこの空間に。


私は小さくため息を吐いてベッドへ寝転がり天井を見つめていた。すると規則正しいノック音が聞こえドアの方へ目を向け「はい」と返事をした。一拍置いてドアが開けばそこには梵 陽斗が立っていた。私は目を見開き瞬きをしたあと「驚いた……梵くんが来てくれるなんて。」と告げた。


「ごめんね。もしかして寝てた?」


「ううん。ちょっと横になってただけ。なんか疲れちゃって」


「そっか……家はどうだった?」


「……妹が出来てた。血は繋がってないけどね。」



「そうなんだ……あっそうそう涼宮さんが帰ってくる前に母さんから新しい曲を教えて貰ってさ。」



「新曲?聞いてみたいな梵くんの歌」私がそう告げれば彼は「勿論」と答えそっと口ずさみ始めた。その曲はとても優しくて希望に満ち溢れていて。彼の歌を聞いてる時だけが私の心を救ってくれているような気分になった。



「……どうだった?」


「とてもいい歌だったよ……ねぇ梵くん。お願いがあるの。」


「お願い?僕に出来ることなら」


「ねぇ梵くん……私と……恋愛ごっこしてみない?」

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