第10話 病院に戻る日
次の日、カーテンの隙間から少しだけ漏れる太陽の光で目を覚ました。私はゆっくりと起き上がり小さく息を吐いた。この心臓があとどれだけ動くのか。あとどれだけ呼吸が出来るのか。そんな事を考えていればトントンと控えめなノックが部屋に響いた。私はベッドから降りて「……なんの用」と言いながらドアを開ければそこに立っていたのは彩波だった。
「彩波……何?」
「そ……その体調大丈夫かなって」
「っ……ほっといて。いつもの事だから」
「で……でも……」
「ほっといて!私今日病院に帰るから準備しないとなの。もういいでしょ?」
「お姉ちゃ……!」私は彩波が【お姉ちゃん】と言い終わる前にドアを勢いよく閉めた。彩波になんか私の気持ちなんて分かるわけないのに……あぁもう嫌だこんな私なんて早く消えちゃえば…… そんな事を考えながら準備をしていると軽いノック音がまた響いた。私はガチャリとドアを開けるとそこには母さんが立っていた。
「……お母さんどうしたの?」
「おはよう煌。病院の準備は出来てる?」
「うん……大丈夫。」
「じゃあ先に下に行ってなさい。お父さんが待ってるわ。荷物はお母さんが持っていくからね」
「ありがとうお母さん。」
私はそう告げてリビングを通り抜け外へ出た。ふと空を見れば私の心とは反対に真っ青に晴れていて。小さく息を吐いたあと携帯を取りだし私はパシャリと空の写真を撮った。あの真っ白な空間に戻る時のほんの小さなお守りとして。
ぎゅっと携帯を握りしめていた時「おまたせ煌。」とお父さんが声をかけてきた。私は軽く首を横に振り車に乗り込み「また帰って来れるといいな……」と小さく呟いて目をそっと閉じた。 その声はお父さんに届いたのかどうかは私には分からなかった。
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