第3話 彼との出会い

その日もいつも通り検査をしてリハビリを受けて病室に戻ろうとした。すると少し遠くから歌声が聞こえてきた。私はつられるようにその歌声が聞こえる部屋へ向かった。そこには1人の少年が楽しそうに歌っていた。


「……ねぇ」

「ん?君初めて見る人だね。こんにちは」

「……どうも。ねぇなんの歌を歌ってたの?」

「んー……これは僕の母さんから聴いた曲だから僕も分からないんだよね。」

「……変なの。曲名が分からない歌を歌うなんて」

「でも……いい曲でしょ?」少年はにこりと笑みを浮かべながら告げてきた。私は「そうだね」と告げて病室へ戻ろうとした。すると少年が一言「僕は 梵 陽斗そよぎはると。君の名前は?」と問いかけてきた。私は少し悩んだあと「涼宮 煌。」と名前を告げて病室へ向かった。楽しげに歌う彼……梵 陽斗の歌声を聴きながら。


病室に戻ってベットに寝転べば小さく息を吐き「今日は退屈しなかったな……」と呟いた。いつもみたいにリハビリと検査が終わったら病室に戻ってくるつもりだったのが彼の歌を聴いてそれが無くなった。また聴けるといいなと思いながら私はそっと目を閉じた。


これが私と彼の初めての出会いだった。

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