第46話 本能寺の変の真相

半蔵「あの襲撃隊は光秀の差金ではなく、信長様の意を受けた者たちです」

家康「半蔵、先程、私の暗殺は、光秀が命じたと言ったではないか」

半蔵「家康様を討つには、失敗は許されない。正義感の強い光秀に邪魔されては厄

   介。ならば、秀吉の援軍に行けと追い出した」

家康「そのようなこと…」

半蔵「茶会に招かれた者をご覧ください。秀吉様は遠征で除外するにせよ、光秀は当

   初から入っていない。側近を飛び越えて、家康様が呼ばれた」

家康「ゆえに、私は認められたと、喜んでおったのに」

半蔵「それが、信長様の思う壷、だったとしたら」

家康「何と、そのような…」

半蔵「側近だからこそ、信長の気質がよく分かる。それを踏まえて光秀が何故、謀反

   に至ったか」

家康「私もそこが気になる、半蔵は知っているのか」

半蔵「いいえ、今となっては本人以外に知る由もなく、でしょうな。しかし、考えら

   れる光秀の思いは、分かる気が致します。それで良ければ」

家康「おぉ、聞かせてく、その思いとやらを」

半蔵「光秀の家臣・斎藤利三には、旧知の長宗我部元親がおります。元親は、信長様

   から四国征伐を任されていた。その元親でさへいつしか自分の敵になる。確実

   な支配下に置けるや否か、不安を払拭できなければ、倒してしまえってのが、

   信長様。元親は戦う気はなく、譲歩案も受け入れると、利三、光秀を通じて訴

   えていたが、その願いは通じなかった。まさにあの日、元親の四国討伐が間近

   に迫っていたのです。更に付け加えなければならないのは、イエズス会の動き

   です」

家康「イエズス会とは異国の布教活動か」

半蔵「はい。イエズス会は、信長様に入信を迫っていたが、宗教の名を借りた侵略で

   あるとを知っていた信長様は、それを拒否した。イエズス会はあの日、本能寺

   の近くにある南蛮寺の展望台に新式火薬を持ち込み、信長爆死を企んでいたの

   です。隠れキリシタンだった光秀は、信長の付き人である黒人の彌助からそれ

   を聞かされていた」

家康「彌助とは」

半蔵「イエズス会のイタリア人宣教師の護衛として同行した者であり、下僕です」

家康「そうか」

半蔵「爆死となれば、世の中が再び戦火の渦に巻き込まれます。異国との揉め事にも

   発展しかねません。それは、避けたい。国内を完全に掌握できていない以上、

   そこに海外も相手にしなければならないとなると裏切り者も出てくることも。

   光秀は天下の在り方に不安を感じ、刻限に迫られ、あの謀反を引き起こしたと

   存じます」


 思いもよらない報告を半蔵から聞かされた家康は、感慨深く目を閉じたのち、口を開いた。

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