第45話 本能寺の変の裏で家康暗殺命令

家康「報告とは何じゃ」

半蔵「家康様が落ち着きなされてから、御報告致そうと」

家康「して、何かな」

半蔵「驚きなさいますな。今よりお話するのは、我らが調べた真実。心して、お聞き

   くだされ」

家康「大層よな」


 家康の怪訝な様子を無視して半蔵は話を続けた。


半蔵「なぜ、あの時、信長の包囲網を突破できたのかを」

家康「そなたと伊賀者のお陰であろう、違うのか」

半蔵「確かにそうでは御座いますが、あの時、三河までの道中、来るはずの追手の姿

   がなかったことにお気づきで御座いましょうか」 

家康「そう言われれば…。しかし、危うく命を落としかねなかったではないか」 

半蔵「あれには、私も驚きました。あれ位は臨場感があって、宜しいかと」

家康「戯けたことを」

半蔵「失礼、致しました」

家康「答えろ。なぜ、伊賀越ができたかを」

半蔵「そもそも、下準備もなく、山歩きの経験のない家康様に対して、あの伊賀越え

   を思いつくのは、困難ということです」

家康「可笑しなことを言うではないか。そなたの言い方では、事前に知っておったよ

   うに聞こえるぞ」


 酔っていたとはいえ、家康の眉間には深く皺が刻まれていた。


半蔵「御意に御座います」

家康「何と、襲われることが分かっていたと言うのか」

半蔵「御意。故に、伊賀者が援護に駆けつけておりまする」

家康「確かに。ならば、もっと容易く回避出来なかったのか」

半蔵「秘密裏に動きますと、予期せぬことが起こりまする」

家康「まぁ、良い。説明せい」

半蔵「家康様におきましては信じがたい、お話御座いまする」

家康「信じがたい話だと、えぇい、じらすでない」


 半蔵は態と勿体ぶり家康の精神を揺さぶった。人が物事を真剣に考え、誘導されやすい状態とは苛立ちの後に来ることを半蔵は忠兵衛から学んでいた。


半蔵「では、ご要望通りに。家康様、可笑しなことが起きてましょう」

家康「何がじゃ」

半蔵「そもそも、信長が家康様を三河からお呼びになったのは、茶会あってのこ

   と。それゆえ、警護も手薄で、御座いましたな」 

家康「ああ、逆らう者はいなかったゆえ、警護も手薄で良いということだった」

半蔵「それで、なぜ、茶会に出られておりませぬ」

家康「それは、信長様が折角、三河から来たのだから、堺遊覧でもして来いと」

半蔵「ならば、最初から、そう言えばいいではありませぬか。そもそも、呼びつけて

   おいて京ではなく大坂の堺とは、遠すぎませぬか」

家康「…」

半蔵「真実はこうです。あの茶会は、ある堺商人によって、設けられたもの。それを

   信長が利用して、家康様、毒殺を企てたので御座います」

家康「な、な、何を言う。信長様が、私を毒殺とな、馬鹿を言うでない、馬鹿を」

半蔵「そうで御座いましょうか。私が得た情報では、秀吉の援軍に向かう途中、堺に

   立ち寄り、家康様を討つ。それを信長様より託されたのが光秀であっと」

家康「何と、信長様が、光秀に。なぜじゃ、何ゆえにだ」

半蔵「それが、信長ということでしょう」

家康「どう言うことだ」

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