033

 歓迎会当日。

 順に1年生が案内されていき、Aクラスにもお声がかかった。

 クラスメイトたちは順に教室を出ていく。

 それを見届け、俺たち7人は最後まで残った。


 昨年の例だと偏縛マインドベンドの魔法を早々にかけられてしまうという。

 であれば、案内時点で防御のための祝福ブレスをしておく必要があった。



「武。万一、これが失敗してお前だけになったらどうする」


「なったらなったで見届けてくれ。お前らが無事なら何とかなんだろ」


「武くん、無理しないでね!? 僕、怪我したときの準備しておくから!」


「はは、頼んだぜ。渦中にいない味方がいるってのも心強いからな」


「うん! 任せて!」



 いちばん心配そうなのはリアム君。

 早々に負けてしまったことなど気にもせず俺を気遣ってくれる。

 ほんと女子顔負けの性格してるなぁ。

 なんでこいつだけゲームのときとこんなに性格が違うんだ。



「・・・」



 そしてもうひとりの負け、ジャンヌ。

 彼女はずっと黙りこくったままだ。

 時折、リアム君のように心配そうな表情を俺に向ける。

 何か言いたげな雰囲気も出すのだけれど何も言わない。

 ずっと口を閉ざして下を向いている始末だ。

 気の強い彼女だ、負けたのが相当に堪えているのかもしれない。



「さて行くぞ。あまりクラスメイトより遅れると怪しまれる」



 俺は皆に声をかけた。

 魔力を練って全員を意識する。

 円卓に座る6人、そして俺。


 ここまで頑張ってきたのだ、きっと良い結果を残せる。

 俺もお前たちも一蓮托生、皆が一緒にいるだけで力が湧く!

 


祝福ブレス!」



 俺から発せられた白いオーラが皆に降り注ぐ。

 薄い膜が身体を包み、そして消えていった。



「力が湧いてくるな」


「ええ。負ける気がしませんわ」


「いつも以上に何でもできそうな気がします」


「暖かい・・・武さんのお気持ちが嬉しいです!」



 それぞれに感想を口にしている。

 そっか。防御のためにかけたけれど、本来は戦意高揚の魔法だ。

 やる気になる意味でも効果あるんだよな。

 俺も前向きな気分になってきた。

 そう、やるんだ。やってやる。



「強めにかけたから効果は2時間くらい。宣誓の儀までは維持できんだろ」


「承知しました。直前に倉庫に隠した武器を取りにまいりますわ」



 互いに頷き合って。

 俺たちはクラスメイトを追って体育館へと向かった。



 ◇



 高天原学園の体育館は某イベントサイトを想起させる。

 そのくらい広い建造物なのだ。

 だから飲食のためのテーブルや飾り付けがあっても十分に余裕がある。

 その体育館の中央に舞闘会のための舞台が設けられていた。

 体育館正面の壇上で何かをやるのだと思っていたからびっくり。

 こんな本格的な舞台を設営するとは・・・さすが高天原。

 いや、生徒会の権力の象徴か。

 ごった返す人の波。

 1,000人を超えて収容すればこれだけ大きな会場でも賑やかになっていた。


 入り口で身分確認だけ受け、あとは会場内では自由とのこと。

 入ったところで何人かの先輩が左右に立ち声がけをしていた。

 祝辞を口にしていたけれど、たぶんこの人たちが例の魔法をかける人。

 特に怪しまれず通り過ぎる。

 俺たちの表面だけ茶色い光がぱらぱらと散らばっていた。

 ああ、祝福で弾いた魔法の残滓なんだろう。

 これが偏縛魔法か、土属性なんだな。

 ・・・この残滓、AR値が高いヤツにしか見えないから助かる。

 もし相手側にこういうのが見えるやつがいたら気付かれてしまうから。


 あまり集団でいると怪しまれると思ったので俺たちは解散して、レオンとふたりでぶらつくことにした。

 「我々は新入生を歓迎する! 先ずは腹を満たし先輩たちと語り合ってくれ」

 そう開始の宣言があり銘々に乾杯する。

 料理や飲み物があちこちのテーブルに置いてある立食パーティー形式。

 高校生の出し物にしちゃ豪華すぎる。



「しばらく時間がありそうだな。少し腹に入れておこうぜ」


「お前は余裕そうだな」


「んなもんあるわけねぇだろ。普段通り振舞ったほうが緊張も少しは解れるってもんだ」



 こいつは精神的にはかなり強い。それなのに緊張しているのだ。

 祝福がかかっていてもこうなる。

 俺だって緊張しないわけがない。

 それに昨日の惨敗で今日だ、何も感じないほうがおかしいとは思う。

 だけどそれで竦んでいては余計に危うい。



「ほれ、ちょっとは食え」


「む、わかった」



 後で動いても影響のない程度の量を盛ってレオンに渡してやる。

 少し動揺しながらもレオンはそれを受け取った。

 普段の行動が意識を逸らし楽にしてくれる。

 これは俺の経験則。人生経験がものを言う。

 正常性バイアスってやつだな。



「いつもどおり振る舞ったほうが楽になるぞ」


「わかった、ありがとう」



 ふっと笑みを浮かべ、彼は料理に手をつけた。

 うん、レオンはもう大丈夫だろう。

 他の5人は大丈夫かな。


 改めて会場を見渡す。

 上級生も1年生も入り混じって歓談していた。

 これから物騒なことが起こる雰囲気には思えない。

 でも主催者、生徒会のブースを見るとそうでもない。

 人の出入りが激しく物々しい空気が漂っていた。

 何かありそうだよな。


 ふと気づけばさくらが近くに来ていた。



「レオンさん、あれは何でしょう?」


「ああ、フィッシュアンドチップスだな。まさか母国の料理まであるとは」


「美味しそうですね」


「俺は和食のほうが気になる。あのカップに入ったものは何というんだ」


「あれは茶碗蒸しです。こんなものまで用意してあるなんて」


「・・・」



 傍にいたレオンに話しかけていた。

 彼らの他愛のない会話なのだけれども・・・これはさくらのイベントだ。

 一言一句、同じなのだから間違いない。耳が覚えているフレーズ。

 レオンと親しくなるためにここで文化的交流をするシーンだ。


 すっかり忘れていたよ。試金石。

 ここで誰のイベントが発生するか見るつもりだったんだ。

 てことは、この世界プレイは「九条 さくら」のストーリーが軸、ということか?


 すると俺が巻き込まれたスピーチイベントはサイドストーリーなのかな。

 本編で語られなかったけれど見えないところで起こったことになっていたってやつ。

 各主人公別にあれこれ作り込まれているのだからその可能性は十分にある。



「新入生諸君! これより舞闘会を開催する! 君たちが高天原学園に入った目的でもある具現化リアライズをその目で見て理解してもらうために先達が技を披露しよう!」



 あれこれ思考を巡らせていたらアナウンスが入った。

 もうすぐ1時間。いよいよ主題となる舞闘会が始まった。

 代表が呼ばれるのはこの演舞の後だよな。

 皆、そろそろ準備しているだろうか。



「わあ、見てみて! 花火みたい!」


「ええ、綺麗ね。火薬よりも良い輝きだわ」


「!?」



 気付けば壇上で魔法の相殺合戦が行われていた。

 ちょうど火の魔法と水の魔法が相殺されたので赤と青の魔力が飛び散って輝いている。

 具現化をして実体を持った魔力は消え去るときにも見える。

 祝福で無効化した魔力は実体を持っていないので見えない。

 魔力の不思議のひとつだ。


 って、そういう解説を思い浮かべるくらいに混乱してんだけど!

 さっきの花火発言はリアム君とジャンヌの会話。

 この会話、ジャンヌ編でリアム君に接した時に出てくるんだよ。

 これ「ジャンヌ=ガルニエ」の世界プレイでもあるのか!?



「あら、結弦様。パーティーなのにこんな端でいらしては寂しくなくて?」


「オレは静かにしている方が好きなんですよ」


「ふふ、面白い考え方ですわね」


「!?!?」



 おい! こっちはソフィア嬢と結弦だよ!

 これも「ソフィア=クロフォード」の世界プレイで結弦を攻略するときに発生する会話だ。


 ええええ、待て待て待て。

 ちょっと待って。

 落ち着け俺!

 混乱した頭を鎮めるため、俺は会場の端へひとり移動した。



 ◇



 どういうことだ!?

 同時進行で各主人公のシナリオが発生してるだと!?

 こんなんシナリオを予測するなんて無理じゃねぇかよ!

 30通り、全シナリオの可能性を考慮しながら進めるしかねぇってか!?

 せめて攻略の受けと攻めの方向だけでもわかれば楽なんだけど。

 って、それでも焼け石に水だよ・・・。


 俺は混乱した。

 舞闘会のことよりもシナリオが入り乱れているこの状況に頭が追いつかない。

 これ、俺が介入しないとしたらどうやって話が進むんだ?

 見た感じ攻略対象が重複していないとはいえ、シナリオで無理が出る箇所がいくつかあんだろ。

 俺をこの世界に招いた神の意志はどこにあるんだ!?

 ああもうわからん。

 一体俺は何を見せられるんだよ!?



「武、ここにいたか」


「ん・・・先輩か」



 頭を抱えていたところに声をかけて来たのは凛花先輩。

 中央の舞台では演舞が派手に繰り広げられ、皆、目を奪われていた。

 こちらを気にする人はいない。



「間もなくだろう。今から疑似化する。強めにかけるが2時間が限度だと思え」


「わかった、ありがとう」



 ここは会場の端。

 何かやっていても目立たない。

 凛花先輩は俺が影になるように気を配りながら疑似化を施してくれた。



「・・・武。全力でやるんだ」


「ああ」



 何だかいつもと違う物言い。

 その顔を見ると・・・先輩はまたあのときの無機質な表情になっていた。

 少し胸が締め付けられた。

 


「躊躇するんじゃない。君は君の思う通りにやれ。頼んだ」



 そう言い残して凛花先輩は去っていった。

 ・・・なぁ凛花先輩よ。

 あんたの思うところは生徒会撃破だけなのか?

 ほんとうにそれでいいのか?



 ◇



 準備を整えた俺は中央ステージのあたりに戻った。

 ちょうどレオンとさくらのふたりが目に入る。

 あいつ背が高いから遠くからでもわかりやすいな。



「そろそろだ。準備をしてくれ」


「む、わかった。すぐに戻る」


「武さん、お願いします」


「ああ。お前らも気をつけろよ」



 舞闘会の演舞もそろそろ終わりだ。

 ばしんばしん、と派手な魔法や技が飛び交う。

 花火大会の最後に大きな花火が重なるときのようだ。

 その影に隠れ、俺たちの行動はひっそりと行われていた。


 俺は予定どおり、指示された時刻に舞台の脇に赴く。

 そこには生徒会副会長、アルバート先輩とその取り巻きが数人いた。



「おお、京極 武。時間通りに来るとは素晴らしい」


「褒めても何も出ねえぞ」


「ふふふ。緊張して会場の何処かに行ってしまう者も過去にいたのでね」


「ほー、そいつは賢いな。そうやって生徒会をおちょくれたわけだ」


「お前! 下級生の分際で・・・」


「ああ、良いんだよ。彼はまだ宣誓をしていないからね」



 俺の暴言に取り巻きが取り付こうとしたところをアルバート先輩が制する。

 なるほど、生徒会の横暴さは見ての通りか。

 俺たちが対峙しているところで、ひときわ大きな花火が飛び散った。

 少しの間があって、会場から大きな拍手が沸き起こった。



「ほら、ちょうど終わったようだ。宣誓する内容は考えて来たかね?」


「ああ。先生から貰った原稿があるからな。よく参考にしたよ」


「ははは! そうかそうか、準備は整ったようだね。では行こうか」



 アルバート先輩が手招きする。

 俺はその後ろを続いて舞台へ上がった。

 演舞の熱が醒めやらぬ会場の、いちばん目立つ位置だ。

 否応でも全校生徒の視線を感じる。



「1年生の生徒諸君! 先達の演舞、如何か! 彼らは部活動でも指導的立場の者たち! 大いに参考にしてくれたまえ!」



 わぁ、と会場が沸く。

 こういう扇動演説をできるってのはある種の才能だよな。



「さて、それでは本日の最後にしてメインイベント、宣誓の儀を行おう! これは君たち1年生の代表である京極 武と我々先達が、これからの学校生活をより良いものにするために誓い合う儀式だ!」



 また会場が沸く。

 ・・・言葉だけは聞こえが良いんだがな。

 ここに悪意が込められているとは誰も思うまい。


 演説するアルバート先輩の横に、生徒会の連中が大きな台座を運んでくる。

 台の上には小さな座布団が敷かれており、その上に紫色に輝く球体が載せられていた。

 あれが誓約の宝珠か。

 何やら茶色の魔力が周囲に漂っている。

 ふうん、土属性の魔道具なんだな。



「ふふふ、始めようか。京極 武」


「・・・」



 いよいよだ。

 ・・・あいつらが来ねぇな。

 何かあったか?


 俺は壇上から倉庫のある方に目をやるが彼らの姿は見えない。

 熱気に包まれた会場の圧が段々と高まっていた。



「君の友達は忙しいようだね」


「なに!?」


「ほら、観客を待たせるものじゃない。こちらへ来るといい」



 相変わらずの狐顔でにやつくアルバート先輩。

 これは・・・手を回されたな。

 だが挑発に乗るのは愚策。

 それによく考えればあいつらは来られない方がいい。

 もともと俺ひとりの計画だったじゃないか。


 俺は促されるまま、舞台上の中央に移動する。

 誓約の宝珠が砂色の妖しい光を放っていた。



くびきなる誓約の力よここに!」



 アルバート先輩が唱えるとその光は大きく広がった。

 体育館全体にばしんと膜のように張り巡らされ、この場にいる全員がその中に閉じ込められる。



「ここにあるはアルバート=エリオット! 我はここに誓う! 我が誓いは先達の教え! 我らが望みは下級生の従順なる姿! その力を以て、我ら上級生の勅を下級生の訓とせん!」



 彼は満面の笑みを浮かべその誓約の内容を述べる。

 すると宝珠がその言葉を受け入れたのか、魔力が濃くなり焦げ茶色の光を漂わせた。


 静まり返った会場。

 アルバート先輩の言葉の意味を理解した1年生の何人かが、不穏な気配を察して動こうとしている。

 だが彼らは動けない。

 脚がその場に張り付いたようになってしまっている。

 驚いて「あれ!?」「動けない!?」と動揺が広がっていた。

 あれが偏縛魔法か・・・。



「さぁ、京極 武。君の望みを言いたまえ」


「ああ・・・」



 俺は宝珠の前に立った。

 この物言わぬ玉のせいで、どれだけの屈辱が生み出されているのか・・・。


 一昨年はこのとき、凛花先輩は教師の用意した原稿を読み上げたのだろう。

 そうして知らぬ間に誓約を完成させる手助けをしてしまった。

 その無念さは筆舌に尽くしがたい。

 

 大きく息を吸った。



「ここなるは京極 武! 我はここに誓う! 我が誓いは自由なる翼! 我が望みは積み重ねたる束縛の解放! その力を以て、過去から現在に続く誓約を白紙に戻せ!」


「な・・・!?」


「重ねて望む! 我が望みはくびきの清算! 過去に縛られたる者を屈辱から守りその名誉を回復させよ!」


「貴様!?」



 俺が言い切るところでアルバート先輩が飛びかかって来た。

 それを咄嗟に受け止め、俺とアルバート先輩は舞台上を転がった。

 周囲の者たちは何が起こっているのか理解が及ばないのか、ただ呆然と俺たちを見ていた。



「取り消せ!」


「それが無理なのはあんたがわかってんだろ!」



 胸ぐらを掴んで首を締めるが間に合わない。

 宝珠がその願いを聞き届け、焦げ茶の魔力がまた体育館内に広がった。



「あいつ何を言いやがった!?」


「無しにしようって言ってるのよ! くっ・・・!?」



 上級生たちがこの儀式を止めようと動こうとしていた。

 だがその動きも脚が止められている。

 もしかして1年生だけでなく全員に偏縛魔法をかけているのか!?

 生徒会しか信用できねぇってのかよ。



――願いは聞き届けられた。先なる願いの代償を示せ――



 宝珠から無機質な声が、頭に直接響くように聞こえた。

 げ、喋ったよこの玉!



「くっ、まぁいい。お前が負ければ話は済む」



 アルバート先輩は俺から離れ、再度、宝珠に向かった。



「我が誓約は京極 武の自由意思! かの者の意思を捧げる!」



――京極 武の是非は如何に――



「断る!」



――ならば力を以て示せ――



 アルバート先輩はにやついて俺を見た。

 ほー、こういうことね。

 ゲームでレオンが全力でお断りした理由が明白だよ。

 それにしてもなんか生意気な玉だよな。



――後なる願いの代償を示せ――



 正直、この玉をぶっ壊してぜんぶ無しにしたい気分だ。

 だけど失敗したら困るし目には目を、誓約には誓約を。

 苦しんだ過去の主席たちのためにも報復はしたい。



「我が誓約はアルバート=エリオットの自由意志! かの者の意思を捧げる!」



 俺は当然に同じように願う。



――足りぬ――



 おい何だって!?

 欲張りな玉だな!?

 ・・・やっぱりこうなったか!

 他に文句言われねぇ奴なんていねえし!!

 くそっ、嫌な方に予定どおりだぜ!



「なら俺の意思も使え! 京極 武の自由意志も捧げる!」



 勝っても負けても言いなりとか我ながら馬鹿すぎる!

 だけど他の連中に犠牲を出さねぇ方法はこれしかない!



――足りぬ――



 はぁ!?

 ちょっと待て!

 この玉、いったいどうなってんだよ!?

 ひとり分の自由意志で1学年全体だろ!

 ふたり分の意思で・・・あ、過去ぜんぶって言っちゃった!?

 在学生だけにしときゃ良かった!

 どうすんだよ、これ!?



「わたし、九条 さくらの自由意志も捧げます!」


「わたくし、ソフィア=クロフォードの自由意志も捧げますわよ!」


「玄鉄 結弦の自由意志も捧げます!」


「レオン=アインホルンの自由意志もな!!」


「はぁ!?」



 振り返ると4人が武器を持って壇上に上っていた。

 ああ、全員が足止め食らったから障害が無くなってこっちに来られたのね。

 ・・・て、そうじゃなくて!!

 お前ら何てことを言ってくれてんの!!



――アルバート=エリオットの是非は如何に――



「僕は断るぞ!」



――ならば力を以て示せ――



 当然に拒否するアルバート先輩。

 つか確認になったってことは、この玉、6人の自由意志でようやく満足したのかよ!

 強欲の宝珠の間違いなんじゃねえの!?

 くそっ、もう後戻りできねぇだろ!



「お前ら!! どうして誓った!?」


「おひとりではありません! わたしも背負います!」


「これはわたくしの矜持ですの!」


「武さんの進む道がオレの修練ですよ!」


「皆でこの歪んだ慣習を終わらせる!」



 ・・・お前ら・・・格好良いセリフ言ってんじゃねえよ・・・。


 宝珠からまた焦げ茶の魔力が放たれる。

 体育館内の舞台上が濃い膜に覆われた。

 ここが宝珠の用意した戦闘領域フィールドということか。



「・・・くくく、やってくれましたね。入学したての弱者どもが!」



 アルバート先輩が鬼の形相で俺たちを睨みつける。

 ・・・場は整ってしまった。


 これはもう進むしかねぇ。

 凛花先輩のためだ、負けるわけにはいかねぇぞ!

 積み重ねた歪さの清算をしてやろうじゃないか!





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