第5話  ダミアの涙

「こんばんは、ダミア。入ってもいい?」

いつものように扉をノックし、声をかける。しかし、返事が返って来なかった。

「ダミア?入るよ?」

少し心配になりシェリーは扉を開けた。そこには部屋の隅で蹲るダミアがいた。心做しかダミアの目が腫れている。

「どうしたもの?何かあった?」

シェリーは近づきながらダミアに声をかけるが、ダミアは震えたまま何も言わなかった。シェリーは少し困ったが、ダミアの隣に腰を下ろした。

「ねぇ、ダミア。夜が怖い時のおまじない教えてあげるね。明けない夜はないんだよ。」

ダミアは嗚咽を飲み込みながら枯れた涙を流した。少しばかりの沈黙の後、ダミアが零す。

「辛かったんだ。ずっと。気づかなかった。ここに来るまでは。ありがとう、シェリー。」

辛そうに笑うダミアの顔にシェリーは遣る瀬無い気持ちになった。

「そうだ、お父様からこれを貰ったの。二人で食べるようにって。」

シェリーは手に持っていた小包を差し出した。中に入っていたのは黒色の塊だった。

「これ何?初めて見たけど。」

「これはね、チョコレートって言うの。とっても甘くて美味しいよ。」

シェリーチョコレートを二人で分けたあと、おやすみを言って部屋を出ていった。

それからは、ダミアが泣いているそんな夜はたまにあった。その度にシェリーは寄り添うように歌を歌い、明けない夜はない、と繰り返し言った。

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