第15話 それぞれの思い

次の日、何もなかったかのように拓斗は迎えに来た。


2人は学校にいった。

真也は拓斗とフランの様子がいつもと違うことに気づいた。

拓斗が席を立ったすきにフランに尋ねた。


「フラン、拓斗と何かあったのか?」


「実は、拓斗に扉のことがばれて何もかも全部話して一緒に王国に行ってきたの」


「えっ!そうなのか」


真也は複雑な気持ちだった。


「拓斗はおれも小人だと知ってるのか?」


「ええ、知ってるわ」


真也は自分が小人だとばれたことよりもフランをとられてしまうことに焦りを感じていた。

何もなかったかのようにみんな接している。


「わたし飲み物買ってくるわ」


「フラン、おれもいく」


真也はフランとなるべく一緒にいたかった。

それを見ている拓斗も真也に張り合っているようだ。


「おれも行くよ」


結局三人で自販機までいってきた。

その後も何かと拓斗と真也は意識しあってギスギスしていた。

それを見ていて優希が聞いてきた。


「二人はどうしたの? 喧嘩でもしたの?」


「いや、べつに。そんなんじゃないよ」


「じゃあなんで最近そんな感じなの?」


「別に今までとおなじだよ。なあ、拓斗」


「おう、真也」


あきらかに同じではない。

拓斗も真也も何をしているんだと改め直した。


拓斗は悩んでいた。

真也と競い合ううちにフランに対する自分の気持ちに気づいてしまった。

でも、好きだからとそう簡単に付き合えるわけでもなくフランの場合は小人になって

結婚をしなくてはならない。自分の今の家族とも会えなくなるし、ようするに人間界を捨てて小人族になるという覚悟が必要となるのだ。

真也も悩んでいた。

拓斗がフランの秘密を知ってもフランに対する態度が変わらないというより前よりも優しくなっていることに焦りを感じているのだ。


それぞれが思い悩んでいる。


そんな中、真也がフランを誘った。


「フラン、今日学校の帰りに話したいことがあるんだけど家にいってもいいか?」


「えっ、あうん。いいわよ」


いつものように4人でかえった。

そして真也はフランの家によった。

拓斗はなんの話かすごく気になった。

2人が入っていくのを見ていた。


真也は部屋に入ったとたん、フランに告白した。


「フラン、おれフランが好きだ。小人族だからではなく真也としてフランが好きだ」


ドックン!!


フランは男の人に初めて好きだといわれて、ときめいていた。


――なんて素敵なことばなのかしら。


フランは照れていた。


「真也、ありがとう。すごくうれしいです……」


そんな様子を拓斗はかくれてみていた。

拓斗は茫然として家にかえった。


このままフランを失ってもいいのか?

家族を失ってもいいのか?

王国でくらせるのか?

人間界を捨ててもいいのか?

頭の中をぐるぐるかき乱してくる。


拓斗は決心した。


――フランをあきらめることなどできない!!


拓斗は走ってフランの家にいった。

真也はまだいた。


「拓斗!どうしたの?」


「フラン、おれは、おれは、お前が好きだ」


「誰にも渡したくない」


「真也にも、渡したくないんだー」


「お、お、おれと、結婚してくれ!!」


拓斗は勢いでフランにプロポーズをしていた。


「ありがと、拓斗。わたしと結婚してください」


拓斗に抱きついて喜んだ。


そんな二人を見ていた真也はうれしそうに二人を祝福してかえっていった。


「フラン、真也のことはいいのか?」


「え、なにが?」


「だって、さっき聞いちゃったんだ。告白をOKするところを」


「えっ、さっきはお断りしたんです」



回想――――「フラン、おれフランが好きだ。小人族だからではなく真也としてフラ          ンが好きだ」

「真也、ありがとう。すごくうれしいです」

「でも、わたし自分の気持ちに気づいてしまったの。わたしは拓斗が好き。いつも一緒にいてくれてわたしを守ってくれる拓斗が好きなの。ごめんなさい。真也」

「フラン、おれフランの気持ちに気づいてたんだ。だから焦った。焦って告白した。

一国の王子が情けないよ。ごめん、フラン」


「そうだったのか。おれ、てっきり……」


拓斗は早とちりをして恥ずかしそうだ。


「拓斗は意外とせっかちなところもあるんですね。フフッ」

「なんだよー」

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