第2話 お隣の拓斗

ピンポーン!


「こんにちは」


玄関から声が聞こえ、階段を駆け下りる智美(さとみ)。


「拓斗くん」


「いいところに来てくれたわ。拓斗くんにお願いがあって……」


「えっ何?」


拓斗は少し嫌な顔をしていた。

智美は気にせず話をした。


「親戚の子を預かることになって、海外にいたからわからないことばかりでいろいろ教えてあげてほしいんだけど」


そんなことでいいのかと、ちょっとほっとする拓斗。


「えっいいけど……」


フランも階段をおりてきた。

「ちょうどよかった、フラン紹介するわ。お隣の拓斗くんよ」


 ――ドックン!!素敵!


「わっ……わたくしフランと申します。よろしくお願いいたします。た、拓斗!」


「いきなり呼び捨て?」


拓斗はフランを、生意気だなと思った。

智美はちょっと心配になったが拓斗にお願いした。


「じゃあさっそく、町を案内してあげてくれる?」


ちょっと不機嫌そうだったが拓斗はうなづいた。


「わかった」


フランはそうとはつゆ知らず人間界を見に行くことや、素敵な男の人とお出かけをすることに

ワクワク、ドキドキしていた。


「では、行ってまいります」


――――


「わ~これは何なの?」


フランは人間界に驚いている。


「わ~建物が並んでいるわ」


「これは、えっ? あの凶暴な猫? いつもわたくしたちを追いかけてくるあの猫?」


フランは座って猫とにらめっこをした。猫は怖がって逃げていった。


 ――本当は、たいしたことないのね。


拓斗は、その様子をみて少し変わった子だと思いながらもどこに連れていくか悩んでいた。


 ――どうしようかな~とりあえず公園でも行くか。


公園に到着。

カラスが『カア~カア~カア~』フランに向かってなきだした。


「なんだ? どうしたんだ?」


【小人族の天敵、カラス族】


 ――わたくしが小人族とわかるのですね。さすがカラス族。


次の瞬間カラスがフランに向かって飛んできてフランのまわりをバタバタ翼ではたいてきた。


「きゃあ、やめて!」


フランは声をあげた。

拓斗はフランを守ろうと、フランに覆いかぶさりカラスを手で追い払った。


「フラン、大丈夫か?」


「うん、ありがとう……拓斗」


ドックン!!


フランの胸の奥で、心臓の音が大きく鳴った。


―― 何かしら、今の。人間界にきた疲れで体がおかしくなってるのかしら。

   でも、まだ会ったばかりのわたくしのために必死に守ってくれてやさしいのね。



拓斗はカラスにびっくりしながらも、別の場所を案内した。

ショッピングモールです。


「わ~すごいですわ。王族が着る服がたくさん」


拓斗は首をかしげながら言った。


「王族って?」


「ここは普通の洋服屋だよ」


フランは驚いた。


「こちらでお洋服が買えるのですか? どなたでも?」


拓斗はまたもや不思議なことをいう子だなと思いながら答えた。


「買えるよ。誰でも」



 ――やはり人間界恐るべしですわ。


「クレープ食べる?」


拓斗はクレープをさしだした。

フランは見たことのない食べ物に興味深々。


「クレープってなんですの?」


クレープも知らないフランに疑問がわく拓斗。


 ――海外で暮らしていたとおばさんはいっていたけど、どこで暮らしていたんだ?


「これだよ、はい」


拓斗はフランに渡した。

フランは持たされたのはいいものの、食べることに躊躇していた。


「そのまま食べていいのですか?」


拓斗は、フランが持っているクレープを横から近づき(パクリッ!)と食べた。


ドックン!!


フランはとても驚いた。


「何をするのですか?」


「こうやって食べるんだよ」


拓斗は言った。

フランは男の人が食べたものを結婚もしていないのに食べてもいいのかと思ったら

恥ずかしくなって顔が赤くなってしまいました。


「フラン、どうした? なんか顔が赤いぞ、熱でもあるのか?」


「いいえ、大丈夫です。いただきます。」


モグモグ…………モグモグ夢中に食べた。


 ――また、心臓の音がおかしかったわ。驚いて心臓がびっくりしているのね。


「それにしても、おいしいわ」


そこに、一羽のつばめが飛んできてフランの肩にのった。


 ――パトラわたくしがわかるのですね。


パトラはフランが小人王国で移動手段にしている専属のつばめです。

人間界でもフランを見つけたのでしょう。


「えっ! つばめって肩に乗るの?」


驚きながら拓斗は言った。

フランはクレープをちぎってそのつばめにあげた。

つばめはうれしそうに食べて飛び立っていった。


「今のはなんだったんだ?」


カラスもつばめも近づいてくるとは、なんて不思議な日なんだと拓斗は思った。


「そろそろ帰ろうか、フラン」


「はい、拓斗」


二人は15分でかえってこれる道のりを、フランが寄り道をするので1時間以上もかけて

かえってくることになりました。


「ただいま戻りました」


フランの声に気づいた智美が玄関にきました。


「おかえりなさいフラン。そとの町はどうでしたか?」


「見たことのないものや食べ物がいっぱいで感激しました」


フランは拓斗にお礼をいった。


「拓斗、今日はありがとうございました。とても勉強になりました。またお願いしたいですわ」


「べ、べつにいいけど」


拓斗は少し照れくさそうにいった。

智美も拓斗にお礼をいい、拓斗は帰っていった。


――――


フランは、何か匂いを感じた。


「これは何の匂いかしら?」


智美はフランを呼んだ。


「フラン、こっちに来てください!」


フランは、呼ばれた方に行き部屋に入ると驚きました。


「これは……。なんて素敵なの。綺麗で可愛くて見たことないわ」


それは、和菓子でした。

桃園家は200年も続く老舗和菓子屋でした。

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