2.暗闇での遭遇
突然、だった。
残暑はまだ厳しいけど、日がそろそろ短くなり始め、夜には涼しさが感じられるようになった頃だった。
あたりはすでに薄暗くなっていて、私は放課後、『いつものように』図書室から出て家に急いでた。
私の家は、最寄り駅からだいぶ離れてて、だから学校にはいつも自転車で通っていた。
「―げ!もうこんな時間!アニメ始まっちゃうし!」
ちょうどいいところだから見逃せないのよ!
そう思って、普段は明るい時間しか通らない、人通りの少ない裏道を通っていこうとした。
この通りは街灯がほとんど無いから、日が高い時間帯でも薄暗い。
まして今はこんな時間帯だから、あたりはもうほとんど真っ暗で、自転車のライトで照らされた部分くらいしか分からないくらいだった。
「うー、暗いから嫌なんだけどー……って、ん?」
そんな暗闇の中だったけど、何か「真っ黒なモノ」が視線の先にある気がした。
目を凝らしてみると、真っ暗な中だったけど、周囲の色とはまったく別の、さらに濃い黒に包まれた何かが、通りの真ん中に置かれてる――
――ううん、違う。
通りの真ん中に『いる』気がした。
「――っ!!」
急ブレーキをかけて自転車を止める。
恐る恐る顔を上げ、目を凝らして、もう一度よく見ると――ソレがいたはずの場所からは、いつの間にか黒の塊は消えていた。
バクバクと鼓動する胸に手をやり、本当に安堵してため息を吐いた。
「はぁー、何だぁ……気のせいかぁ、よかった」
そう呟いて、嫌な汗をかいた髪をかきあげようとしたら、何かの生き物の体毛のような、ふわふわした感触が私の手に触れた。
「ん?なんだこ……れ?」
背筋がぞわっとして、総毛立つ気がした。
ふと横を向くと
その真っ黒な闇が、真っ赤な口を開けて牙を覗かせていた。
「~~~~~~っ!!!」
――あ、声にならない声ってこのことか――
なんてのんきな事を頭のどこかで考えながら、そこで私の意識は遠のいた。
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